マッサンのブロール構築記 Season2 ㉘死の飢えのタイタン、クロクサ
1.初めに
ところ変われば品替わるというか、状況が変われば物事が変わるというか、ありとあらゆる事象は周囲の環境におかれることが多い。
…いきなり何の話をしているのかと思うかもしれないが、このMTGというゲームこそ、最も「環境」というものに敏感なゲームであることに違いはないだろう。
カードプールが定期的にリセットされ、かつ新たなエキスパンションを得ることでゲーム性が大きく切り替わるこのMTGというゲームは、多くのデッキが現れ、そして消えていった。
カードプールが変わることで、それまで見向きもされなかったカードが注目され、一躍スターダムに躍り出ることも珍しくはない。
また一方で、発売前のスポイラーで「こいつはやりよるに違いない」と注目されながらも、結局環境に恵まれず、すごすごと引退してしまったカードも数多く存在する。ひどい例になると「私がトップレアです」と公式のハンドブックに書かれながら、ほぼトーナメントシーンで使われなかった悲劇のカードなんかも存在する。
とまあ、そんな環境によって激変するMTGだが、当然ブロール構築も環境の変化の影響を大きく受ける。「使えるエキスパンションが増えて、統率者と相性がいいカードが増えた」といった前向きなものから、「ローテーションに巻き込まれて使えるカードが減った」というちと残念なものまで、様々な影響を受けることになる。
そして、今回紹介するこの統率者も、環境の変化によってありようが大きく変わった統率者の一人である。
《死の飢えのタイタン、クロクサ》
いまさら解説する必要もないだろう。1年前に発表されたエキスパンション「テーロス還魂記」で収録された、強力なタイタンの1柱である。発売されてから相方と共に様々な場面で用いられ、トーナメントシーンでも活躍を残した、由緒正しき名カードである。
そんなクロクサ君、何ならひとつ前のスタンダード環境でも使われていたカードなのだが、実は最近になって、ちと面白い運用ができるのではないか?という疑惑が出ているのだ。
今回は、そんなみんなに愛されるタイタン、クロクサを用いて、ブロールのデッキを作ってみようと思う。果たして、彼の何が変わったのだろうか?
2.こいつで何ができるのか
さて、もう読者の皆様にとってはこいつの能力はおなじみかもしれないが、一応確認しておこう。
《死の飢えのタイタン、クロクサ》
BR
伝説のクリーチャー ― - エルダー・巨人
6 / 6
死の飢えのタイタン、クロクサが戦場に出たとき、これが脱出していないかぎり、これを生け贄に捧げる。
死の飢えのタイタン、クロクサが戦場に出るか攻撃するたび、各対戦相手はそれぞれカード1枚を捨てる。その後、これにより土地でないカードを捨てなかった各対戦相手はそれぞれ3点のライフを失う。
脱出―BBRR, あなたの墓地から他のカード5枚を追放する。(あなたはあなたの墓地から、このカードをこれの脱出コストで唱えてもよい。)
2マナ6/6。圧倒的すぎやしないだろうか。さらに、場に出た際と殴りつけた際に相手の手札を捨てさせ、それが土地以外のカードだった場合3点ライフロスを相手に強いることができる。圧倒的すぎやしないだろうか。
…当然だが、こんなのが2ターン目に出てきて走り出すとゲームが音を立てて壊れるため、このクロクサには場に出るための条件がある。「脱出」して場に出さないと、即生贄にささげられるというデメリット能力を持っているのだ。
というわけで、クロクサを場に定着させるためには、基本的に脱出を経由する必要がある。具体的には「クロクサを墓地においた状態で墓地からほかのカードを5枚追放し、さらに赤赤黒黒を払う」という過程が必要になる。
そのため、一度クロクサを場に出して墓地に送り、4マナを確保し、さらにそのうえで一定数のカードを墓地に叩き込む必要がある。見かけ以上に手間がかかるクリーチャーなのだ。
ただ、ブロールにおいては、一度場に出して墓地に行く際に統率者領域に戻して再利用する動きも可能ではある。その辺の駆け引きも一応は存在する、極めて面白い統率者ではあるのだ。
3.こいつでどうやって勝つのか
というわけで、このクロクサの特徴をまとめると以下のようになる。
・2マナ6/6というバケモノサイズ
・場に出るか殴ったら相手の手札を捨てさせられる
・場に定着するためには脱出を経由する必要あり
基本的に墓地にカードが貯まれば貯まるほど運用しやすくなるのが特徴で、現にスタンダードでは、その特徴を活かしたこういうデッキに組み込まれていたのを見たことがある方も多いのではないだろうか。
ラクドスサクリファイス
クロクサが場に出る際に生贄にささげることを利用し、それを打点にうまく変換するギミックを搭載し、さらに生贄にささげられたほかのクリーチャーをクロクサの脱出コストに充てる。そういうデッキである。
このデッキ、一昔前のスタンダードではよく見かけたのではないだろうか。それもそのはず、ほかのパーマネントを生贄にささげた際にダメージを飛ばす《波乱の悪魔》など、クロクサと相性のいいカードが一定数存在したためである。
というわけで、その当時にこのクロクサのデッキを書いておけばよかったのだろうが…実は、筆者にとって時期がちとまずかった。
環境的には恵まれていたのだが、あまりに生贄エンジンがほかのデッキでも使いやすかったため、実は全く同じ題材でほかの統率者のデッキを組んでしまい、それを記事として掲載してしまったのである。そのため、ほかにクロクサを活かす方法が思いつかず、そのまま放置されていたのである。
さらに、2020年秋にローテーションが発生。上記の相性の良いクリーチャーはスタンダード落ちし、いよいよクロクサを活かすデッキが組みづらくなってしまう。
一応、各種除去で相手のクリーチャーをどかし、その上からクロクサでドカドカ殴っていく「ラクドスミッドレンジ」と呼ばれるデッキは存在していたのだが、それだとぶっちゃけ統率者は何でもよくなってしまう。そういうデッキは組みたくなかったこともあり、筆者の中でクロクサは半分封印された統率者になっていたのだ。
このまま、クロクサは記事にすることなく、次のローテーションでしれっとスタンダードを去るのだろう。筆者はそう思っていた。
…なのだが、つい先月発売された新セット、「カルドハイム」で、筆者のクロクサに対する態度は大きく変わることになる。
新セット「カルドハイム」、このセットの目玉としては「予顕」「誇示」「氷雪」といった要素があったのだが、それ以外にもう一つ、目玉要素があったのをご存じだろうか。
《玄武岩の荒廃者》
3R
クリーチャー ― - 巨人・ウィザード
4 / 2
玄武岩の荒廃者が戦場に出たとき、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。これはそれにX点のダメージを与える。Xはあなたがコントロールしていて共通のクリーチャー・タイプを持つクリーチャーの最大数に等しい。
それがこの「部族サポート」である。
この「カルドハイム」、特定の部族をたくさんコントロールしていると恩恵があったり、あるいは、特定の部族に恩恵を与えるカードがたくさん収録されているのである。で、具体的に恩恵が与えられる部族としては、天使やスピリット、ゾンビ等々たくさん存在するが、今回重要になる部族はこれである。
「巨人」
カルドハイムにおいては青赤の色に割り当てられた部族であり、様々な能力を持つ巨人が青赤に割り当てられている。名実ともにカルドハイムの主要部族なのだが、ここで今一度、クロクサの部族を見てみよう。
部族、「エルダー・巨人」とある。
もうお分かりだろう。この度の「カルドハイム」参入により、クロクサと相性のいいカードが多数収録されることとなったのだ。
ということで、今回の方針はこちら。
「カルドハイムで新たに参入した「巨人をサポートするカード」を一定数採用し、クロクサをさらにうまく活用できるデッキを組む」
さすがに青赤に割り当てられているため、一部の巨人は固有色の観点から使用ができない。それでも採用できそうなカードはたくさんある。早速次の項で見ていこう。
4.どうやってデッキを組むか
というわけで、実際にどういう相性のいいカードが手に入ったのか、具体的に見ていってみよう。
①巨人と相性のいいカード
まずはこれだろう。巨人であるクロクサをうまく利用できるようなカードを探してやる必要がある。一体どういうカードが採用できそうなのか、実際に見ていってみよう。
例えば、こういう巨人はどうだろうか。
《揺れ招き》
3RR
クリーチャー ― - 巨人・狂戦士
5 / 4
すべての対戦相手はライフを得られない。
あなたのアップキープの開始時に、揺れ招きは各対戦相手にそれぞれ2点のダメージを与える。この能力は、揺れ招きが戦場にあるときか、揺れ招きがあなたの墓地にあってあなたが巨人をコントロールしているときにのみ誘発する。
予顕2RR
5マナ5/4とアグレッシブな巨人であり、対戦相手のライフゲインを阻害する能力を持っている。また、各アップキープに相手に2点ダメージを与える能力を持っているのだが、この能力、別にこの《揺れ招き》が場にいなくても誘発する。なんと墓地にこいつがいても、場に巨人がいれば同等の能力が誘発するのである。
場に出して相手をけん制してもよし、また、死んでしまってもクロクサを場に出してしまえば能力が持続する。極めて面白いクリーチャーだ。ぜひ使ってやりたい。
もうちょっとわかりやすいのだと、この辺はどうだろうか。
《災厄を携える者》
2RR
クリーチャー ― - 巨人・狂戦士
3 / 4
あなたがコントロールしていて巨人である発生源がパーマネントかプレイヤーにダメージを与えるなら、代わりにそれはその2倍の点数のダメージを与える。
能力はいたってシンプル。巨人が与えるダメージが倍。なんともまあわかりやすい。
わかりやすいがゆえに強烈であり、クロクサがぶん殴って相手にダメージを与えると、それだけで12点消し飛ぶことになる。また、上記の《揺れ招き》の能力も発生源は巨人なので4点ダメージとなる。シンプルかつ強力な巨人だ。採用しよう。
ただ、ちと残念なのがクロクサの能力との兼ね合いである。クロクサは場に出た際に相手の手札を捨てさせ、非土地カードを捨てさせると3点のライフロスを強いるのだが、これはダメージではない。何が言いたいかというと、《災厄を携える者》を使ってクロクサの能力で相手に失わせるダメージを6点にすることはできないということだ。そこは注意しよう。
ちと珍しいものだと、こういうのはどうだろうか。
《セルトランドの投げ飛ばし屋》
3RR
クリーチャー ― - 巨人・狂戦士
4 / 6
セルトランドの投げ飛ばし屋が攻撃するたび、あなたは他のクリーチャー1体を生け贄に捧げてもよい。そうしたとき、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。セルトランドの投げ飛ばし屋はそれに、その生け贄に捧げたクリーチャーのパワーに等しい点数のダメージを与える。その生け贄に捧げたクリーチャーが巨人であったなら、セルトランドの投げ飛ばし屋は代わりにその2倍の点数のダメージを与える。
見たことがない?そりゃそうだ。「セットブースター」にのみ同梱されているカードのため、あまり見る機会はないだろう。だが、その能力は強力無比である。
ゴチャゴチャ書いているが、要は攻撃するたび《投げ飛ばし》を行うことができるクリーチャーである。この能力、基本的に生贄にささげたクリーチャーのパワーに等しいダメージを与えるのだが、巨人を投げ飛ばしたときは話が別で、なんとパワーの倍のダメージをたたきつけることができる。つまり、仮にクロクサを投げ飛ばした場合、6×2=12点ダメージをたたきつけられるのだ。
先にも述べたが、クロクサは脱出を持っており、投げ飛ばそうが何をしようが墓地から元気に帰ってくる。2回投げ飛ばせば相手も爆発四散待ったなしである。使ってやろう。
ちなみに、この投げ飛ばした際に発生するダメージだが、発生源は《セルトランドの投げ飛ばし屋》、そう、巨人である。つまり、先ほどの《災厄を携える者》が横にいると、さらに倍にされるわけで…?うん…?
クロクサのパワーが6パワー!
《セルトランドの投げ飛ばし屋》で投げ飛ばして2倍の12パワー!
《災厄を携える者》を加えて2倍の24パワー!
そこにいつもの3倍の回転を加えれば
バッファ〇ーマン!お前を打ち負かす(略)
カルドハイムの巨人は正義超人だった可能性も否定できない。やってることはスーサイドまっしぐらの悪魔超人的な攻め方なのだが。
②ほかにもあるぞ 相性のいいカード
アホなこと言ってないで次にいこう。ほかにも巨人をサポートできるようなカードはないだろうか。
例えばこれはどうだろう。
《激しい恐怖》
2BB
ソーサリー
クリーチャー・タイプ1つを選ぶ。ターン終了時まで、その選ばれたタイプでないすべてのクリーチャーは-3/-3の修整を受ける。
今まで、指定したクリーチャータイプのクリーチャーを一掃するカードは数多く存在したが、これは全く別。指定したクリーチャータイプ以外のクリーチャーを-3/-3修正する全体除去である。
これが何を意味するかというと、巨人を指定すれば、コチラの主力以外を弱体化させたうえでクロクサ率いる巨人の群れでぶん殴れるのだ。生き残っているクリーチャーも貧弱極まりない状態になっているので、ブロックしてきても簡単に討ち取れるだろう。
ほかには、こういうカードもいいだろう。
《憑依の航海》
4BB
ソーサリー
クリーチャー・タイプ1つを選ぶ。あなたの墓地からそのタイプであるクリーチャー・カード最大2枚を戦場に戻す。この呪文が予顕されていたなら、代わりに、あなたの墓地からそのタイプであるすべてのクリーチャー・カードを戦場に戻す。
予顕5BB
クリーチャータイプを指定し、墓地から選ばれたタイプのクリーチャーを戦場に2体戻すことができるソーサリーである。先ほど挙げたように、《セルトランドの投げ飛ばし屋》や《災厄を携える者》といったクロクサと相性のいいカードはすべてクリーチャーであり、除去されるという憂き目にあうことも十二分に考えられる。それらをこれ一枚で戻せられるのはえらい。
さらに予顕して撃つことで、2枚とは言わずすべての巨人を戻すことも可能である。予顕にかかるマナは7マナとちと思いが、これ一枚で盤面を崩壊に持ち込むことも十分可能だろう。
5.サンプルデッキ
というわけでこちら、クロクサ率いる大正義巨人軍である。下にスタメン表を掲載しておいたので、ご自由に使ってほしい。
(画像クリックでMTGGoldfishに飛びます)
色々カードを採用してみたが、根っこのコンセプトは単純明快。クロクサを投げ飛ばし、デッドボールで相手を殺す暗黒野球である。そのため、単純に打点を3倍にする《焦熱の解放》に加え、《セルトランドの投げ飛ばし屋》のダメージを倍にする《獲物貫き、オボシュ》を採用した。クロクサ自体のダメージが倍にならないのがもどかしいが、まあいいだろう。
一応、クロクサ以外にも投げ飛ばす球として、いろいろな巨人は用意した。南斗人間砲弾よろしく相手にぶん投げて遊ぼう。パワーはクロクサより低いものの、単純に《災厄を携える者》と共にぶん殴ってもダメージが期待できる。
また、クロクサと相性の良い新カードとして《死の神、イーガン》を採用。3マナ6/6接死と破格の性能ながら、維持費として毎ターン墓地のカードを2枚追放しなくてはならない。
当然これだとクロクサと競合を起こすので、基本的にはアップキープに墓地を肥やす能力を持つ、裏面の《死の玉座》を使うことになりそうだ。クロクサを盤面に定着させるためには墓地が一定数必要になるので、序盤にこれを設置できれば心強いだろう。
なお、表面もパワー6といいガタイをしているので、決められそうなら出してすぐに《セルトランドの投げ飛ばし屋》でぶん投げてもいいだろう。
赤黒の新たな新戦力として《イマースタームの捕食者》も採用。4マナ3/3飛行と小粒ながらも、タップして墓地のカードを追放しながらゴリゴリ打点がでかくなっていく。なお、墓地が無くても打点は上がる。
また、横にいるクリーチャーを生贄にささげることで、コイツに破壊不能を持たせることができる。その際にタップするのでまた打点が上がる。自己完結したクリーチャーだ。
なお、上のデッキだと生贄にささげられるクリーチャーが限られているため、破壊不能を持たせづらいかもしれない。が、そこはそれ。相手から生贄の種を拝借してこよう。
6.終わりに
いかがだっただろうか。単なるラクドスサクリファイスとは異なる、巨人のシナジーを活かしたデッキを組むことができたのではないかと思う。まさか筆者も一年越しでこのデッキの紹介ができることになるとは思わなかった。
今回は使いやすさを考えてデッキを組んでみたが、ここから色々改造することも考えられる。例えば、《仮面林の結節点》ですべてを巨人に変換し、《セルトランドの投げ飛ばし屋》でひたすら投げ飛ばすデッキなんかはどうだろうか。
また、そういうデッキだと《英雄たちの送り火》の採用も見えてくる。生贄にささげた部族と同じ部族のカードしか持ってこられないこのカード、上の《仮面林の結節点》があれば、クリーチャーを生贄にささげてなんでも持ってこられる。《災厄を携える者》などをこれで持ってこられるのはえらい。
100人いれば100通りのデッキがある。それがブロールの世界である。ぜひ、皆様も思い思いのデッキを組んで、この世界に飛び込んでほしい。
そういえば、来月4月には新セット「ストリクスヘイブン」も控えており、既存の統率者も新たなデッキが組める可能性もあるかもしれない。
筆者からすると、記事にしやすい統率者がぜひとも欲しい。具体的にはネタにしやすく、かつ特徴的な能力を持った伝説のクリーチャーが欲しいところである。
筆者も何が来ても対応できるように、今のうちから準備しておくつもりである。とりあえず学園の青春が舞台らしいので、イギリス生まれの魔法使いの学園モノなんかは読み直しておいた方がいいのかもしれない。和製の学園モノだと超能力者のほのぼのとした日常を描いたこの作品なんかが思いつく。
よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。