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ガバ部40ドル統率者通信 ⑥概念の群れ

1.はじめに

様々なTCGがある中、MTGならではの要素とは一体何だろうか。

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色々あるだろうが、ここでは「色」という概念を一つ挙げたい。

ご存じの通り、MTGには色が5色割り振られており、それぞれの色に対して得意なこと、不得意なことが割り振られている。

当然、デッキの中の色が少ないほど、やれることは限定される。色々なことがしたいのならば、別の色と組み合わせるしかないのだが、カードを使うためのマナの色が安定しなくなり、事故が多発するという問題もはらむことになる。ここがMTGの面白いところだ。

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で、こういう色事故を回避するためには、「1枚で2色以上マナが出せるカード」を多数採用してやる必要がある。いわゆる「多色土地」だとかがこれに該当するだろう。

だが、こういう様々な選択肢を提供できるカードは、往々にして人気が高い。で、その人気に付随して値段も高い場合が多い。この記事はいかにデッキの値段を40ドル以内に収めるかということを考えているため、こういう高額カードは使えない。基本的に200円以上は高額カードに分類されると考えれば、この縛りがいかに厳しいかわかっていただけると思う。

そのため、こういう多色デッキはなかなか40ドル統率者デッキでは組みづらい。まして全部の色を入れた5色デッキなぞ、夢のまた夢だろう。

…いや、夢だと思っていた。少なくとも筆者はそう思っていたのだが…なんとこの度、5色の40ドル統率者デッキを組んできた猛者が現れたのだ。

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概念の群れ》(画像クリックで能力の詳細が出ます)

デッキリストは下のリンクから参照願いたい(MTGGoldfishのページへ飛びます)

さて、このデッキだが、筆者はそもそも「存在しえない概念」として認識していたため、解説するための前提知識が全くない。オマケに本連載のブロール記事の方も見てもらえればわかるように、筆者が5色統率者を解説しようとすると決まって最後は「君たちの手でデッキを組んでくれ!」とぶん投げるケースが多い。こりゃいかんだろう。ここはやはり、作った本人に事情を伺った方が一番わかりやすいだろう。

というわけで、このデッキを作った「ぶんまる」氏にインタビューをしようと思う。氏は「ゆるく、たのしくMTG」というのをモットーにMTGを楽しむプレイヤーであり、様々なデッキを組むことを趣味としている。中でもこのように多色のデッキを組むことが大好きであり、これまでにも様々な5色デッキを組み上げてきた。

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また、相方の「れぴまる」氏と共にMTGのファンアートも多数作っており、氏のTwitterには様々なかわいいイラストが投稿されている。

それではインタビュー開始だ!

2.なぜこの統率者を選んだんですか?

私は自然を体現した存在で、フリーダムに生きているエレメンタルという部族が大好きなんです。今回デッキを組むきっかけになったのがこれで、色を5色使うことよりも先に、エレメンタルを使いたいというのが発端だったんです。

で、エレメンタルを色々見ていたんですが、せっかくエレメンタルを使うなら分け隔てなくみんな使いたいなと思いました。そこで、全ての色が使用可能な《概念の群れ》を統率者に据えてみようと思い、この統率者を選びました。

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先日、私がマッサンさんと話したデッキ構築の考え方が記事になっていましたが、今回の私の統率者選抜は、その中で紹介されていた「ボトムアップ」型の構築になっています。そのため、統率者とデッキのシナジーは特に考えてはいません。

あと、他の選抜理由としては、「イラストがかわいい」ということも挙げられますね。また、フレーバーテキストも魅力的です。

”ローウィンに最初に謎が生まれた時、最も老いた樹人すらまだドングリだった。”

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どんぐりのツリーフォーク、かわいいと思いませんか?

3.構築で注意した点はありますか?

以前は、エレメンタルをサポートするカードは《概念の群れ》が収録された「ローウィン」に多少ある程度で、エレメンタルは部族としての側面はあまり強くなかった印象でした。

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しかし、「基本セット2020」がリリースされてから事情が変わりました。このセットで多数のエレメンタルをサポート可能なカードが収録されたのです。皆様も、今のスタンダードで「ティムールエレメンタル」などのデッキを見かけることが多いと思います。このエレメンタルをサポートするカードは、出来る限り使っています。

…ただ、このエレメンタルデッキ、私もスタンダードでプレイしていたことがあるのですが、少し展開がおっとりしているという印象がありました。多人数戦では、あまりゆっくり立ち上がっているとこちらの態勢が整う前に殴られる可能性も否定できません。

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そこで、殴りに特化した《戦争の精霊》や《荒野の精霊》などのカードを何枚か採用しています。

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また、《熟考漂い》に代表されるような「想起」持ちのエレメンタルなど、「場に出たときに○○する能力」、いわゆる「EtB能力」を持ったエレメンタルはかなり多いです。

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これらを活用するべく、インスタントタイミングでクリーチャーを出せる《召喚の罠》や、自身のクリーチャーのコピーを生み出せる《崇高な天啓》などを採用しています。

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墓地のカードを回収できる《ムラーサの緑守り》や《血水の化身》などと活用できるとかなり美味しいです。

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また、これらはインスタントなので、《嵐呼びのカラマックス》でコピーが出来るのも偉いですね。

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更に、この打点が高いエレメンタルやEtB能力持ちのエレメンタルを最大限活用するべく、《溶鉄の残響》も採用しました。エレメンタルを指定してやることで、盤面と誘発する能力が楽しいことになります。

4.このデッキの魅力を教えてください

このデッキの魅力は、100枚のカードを全部使ってデッキを回すことが出来るということです。

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なんでも一人でできてしまう強力な統率者や往年の名カード、実質1枚で成立する強力なコンボが許容されているのも統率者戦の魅力ではあります。残念ながら、このデッキにはそういったものは含まれていません。しかし、一人一人が小粒なエレメンタルが集まってつながって、大きな力を生み出すことが可能です。

一つ一つの力を集めて、最終的に大きなうねりを巻き起こす。そういう魅力をこのデッキで味わってもらえれば幸いです。

また、冒頭述べたように、私はエレメンタルが大好きです。こういった「自分の好きなもの」を形にできる場所として、統率者というフォーマットは極めて最適なフォーマットだと思います。

このデッキに限った話ではないですが、是非、これを読んだ皆様も「自分の好きなもの」を形にできたらといいなと思います。

5.終わりに

いかがだっただろうか。自分の好きなものを真摯に追求し、デッキという形に仕上げ、ファンアートまで描いてしまったというぶんまる氏の力作である。

是非、次もこのような多色デッキを組み上げて持ち込んでもらいたい…と思っていたら、ぶんまる氏がこう続けた。

「いやあ、今回は試しで5色の統率者デッキを作ってみたんですがね。楽しかったんですが、満足はしていないんですよ。

おいちょっと待て、同じセリフを以前聞いたぞ。お前ら5色使ってこれ以上何をするつもりだ。

筆者の困惑をよそに、彼はにわかに信じがたい、そして聞き間違いともとれる言葉を切り出した。

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やはり、6色じゃないとダメ。

………?「6色」…?聞き間違いかな…?呆然とする筆者に氏は続ける

エルドラージの要求マナに無色マナシンボルがありますよね!アレも使ってやらなきゃって思うんですよ!アレは6個目の色なんです!無色は色なんですよ!

確かに、エルドラージにはEtB能力を持った強力なものが多く、このエレメンタルデッキと一緒に運用してやることも可能だろう。ただ、こういった強力なエルドラージは無色マナを色拘束として必要とする場合が多く、ちゃんとした運用を考えてやる必要があるのだ。

氏は恐らくそういうことを言いたかったに違いない。もはや「無色を取得」といったバグ技の活用みたいな話になりつつあるが、こう考えると至極真っ当なことを言っているのだ。

これだけ難しいハードルを乗り越えたぶんまる氏なら、きっと色の向こう側へたどり着くことも可能だろう。是非、彼の次回作に期待したい。

(お願い)
今回この記事で使用させていただきました「れぴまる」氏のイラストレーション2点は、氏のご厚意により使用許可を得たものとなっており、また、WotC社のガイドラインに則ったものです。

よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。