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ガバ部40ドル統率者通信 ③天頂の探究者、カーリア

1.はじめに

突然だが皆様、こういう経験はないだろうか。

「このゲーム、飽きたなあ」

買った当時やプレイし始めの時は楽しくてしょうがなかったのが、何回も繰り返し繰り返しプレイしていくうちに色々慣れてしまい、最終的にマンネリ化。結果、段ボール箱や押し入れに押し込まれたゲームは数知れないのではないだろうか。

人は新たな刺激を求める。飽きたら別のものに飛びつくのは当たり前の話だ。しかしそれでもなお、「ゲームをしゃぶるように遊び続けたい」と強く思う一握りの人間が編み出した遊び方がある。

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そう、縛りプレイである。

プレイヤー側の選択肢に「アレは使わない」「コレも使っちゃダメ」と更なる制限を課し、それでもなおゲームを遊び、クリアすることを目標とする遊び方だ。
例えばRPGなんかだと「極限まで低レベルでクリア」、「戦闘回数を最小限にする」、「極限最小歩数」というプレイが考えられるだろう。この間見かけたものだと、シューティングゲームで弾を一切撃たずにクリアするプレイもあるようだ。

さて、話をMTG、それも統率者戦に戻そう。この統率者戦、MTGの遊び方の一つとして広く認知されているが、そもそもが同名カードは1枚しか使っちゃダメ、デッキは統率者含めピッタリ100枚に収めろという縛りを課せられた遊び方である。

さらに言うと、この記事は40ドル統率者デッキの紹介記事だ。上記の縛りに加え、値段を40ドルに抑えろという縛りまである。

…この記事を書き始めたとき、かなり厳しい縛りだと感じた記憶がある。だが、世界は広いものだ。

これ以上に、更なる縛りを加えて出来上がったデッキがあるのだ。

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天頂の探究者、カーリア》(画像クリックで能力の詳細が出ます)

デッキリストは下のリンクから参照願いたい(MTGGoldfishのページへ飛びます)

さて、カーリアといえば、前回本家ブロール記事で同じようなデッキを紹介した。なので筆者も解説できるかと思い、デッキリストを眺めてみたが、パッと見て確信した。設計思想が私のそれと根本から違う。これを解説することはほぼ不可能に近いので、作った本人に事情を伺った方が一番わかりやすいだろう。

そういうわけで、このデッキを組んだ「がばせら」氏にインタビューをしようと思う。氏はMTGというゲームをこよなく愛しており、ありとあらゆるフォーマットに手を出している。恐らく部員でヴィンテージにまで手を出しているのは彼だけではなかろうか。また、デッキ制作を趣味としており、ことあるたびに趣のあるデッキを生み出している。

今回のデッキも「こういう40ドル統率者ってのがあってえ…」と氏に説明したところ、ウキウキしながらものの数日で組み上げてきたデッキである。

それではインタビュー開始だ!

2.なぜこの統率者を選んだんですか?

え?《天頂の探究者、カーリア》をなぜ統率者に選んだって?あなた何を言ってるんですか?私の統率者は彼ですよ?

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この度、「イコリア:巨獣の棲み処」が発売されてから新たに統率者領域以外にも統率者領域が増えたじゃないですか!これを使いたいんですよ!

…ええ、確かに相棒システムは統率者戦で用いるのは難しいです。

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例えば《空を放浪するもの、ヨーリオン》や《呪文追い、ルーツリー》のように統率者戦で用いることが出来ない相棒も存在します。

それ以外の相棒も、相棒として用いる限りはデッキ構築に更なる制限がかかります。元々構築に制限がかかる統率者戦ではかなり運用が難しいでしょう。

だからこそ、私は相棒が使いたかった。そのうえで、獲物貫き、オボシュ》を相棒に据えてデッキを組もうと考えたのがこのデッキのスタートラインです。

なぜ《獲物貫き、オボシュ》を選んだかですが、理由は二つあり、もともと構築上の制限がかなり厳しい相棒であるということが一つ目の理由です。そしてもう一つの理由ですが、これは40ドル統率者戦という環境…というより構築ルールが関わっています。

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40ドルで100枚デッキを組むこのルール、単純計算で1枚当たりに使える費用は0.4ドル。この縛りだと統率者戦必須パーツの《太陽の指輪》すら満足に運用できない。そう、それが実際に40ドル統率者デッキを組んだ人間が語る「定説」です。

私はこの「定説」にチャレンジしたかった。すなわち、太陽の指輪》を使いたかったんです。

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更に、《稲妻》も高額(※40ドル統率者戦基準)で使いづらいという話も聞きました。となると、こちらも使ってみたくなりますよね。

で、こういったカードを集めてみると、案外奇数のマナコストのものが多かったんですよ。ならば使うべき相棒は《獲物貫き、オボシュ》しかいないだろうと思ったのです。

天頂の探究者、カーリア》?相棒条件に会う統率者を消去法で選んだら彼女しかいなかったんですわ、オマケですねコレ。

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え?他にも赤黒の伝説とかいるだろって?そっちの方が組みやすいし安定するって?

2色だと使えるカードが制限されるから面白くないので…

3.構築で注意した点はありますか?

注意した点というか、なんというか…上で挙げたやりたい事のしわ寄せが一気に来た感じですね。

獲物貫き、オボシュ》の相棒条件の達成、高額カードを大量搭載したせいで他のカードにかかる更なる出費制限、超えるべきハードルはいくつもありました。

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前者の相棒条件についてはどうしようもないのでそのまま奇数のカードを探しました。そのために採用できなかった《慈悲深きセラ》などのカードも存在しますが、致し方ありません。

問題は後者、値段についての制約です。ただでさえ前述したような要素もあるうえ、今回は相棒を採用した都合上、デッキが101枚になっていることも含め、1枚あたりにかけられる予算はいつも以上にシビアです。

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これについては、少しマナコストが高いものを中心に採用することで解決しています。これには理由があり、マナコストが高いカードは値段が安いという傾向があったためです。

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また、このデッキは一応《獲物貫き、オボシュ》がメインのデッキですが、統率者に居座っている《天頂の探究者、カーリア》もうまく使ってやらないといけません。

今回は彼女の能力を有効活用するべく、ドラゴン、デーモン、天使は均等に枚数を割り振っています。少しでも《天頂の探究者、カーリア》からヒットするクリーチャーの数を上げるための工夫ですね。

4.このデッキの魅力を教えてください。

確かにこのデッキ、上の説明を含めるとあまりに制限が多く、ぱっと見玄人向けに見えるかもしれません。

ですが、このデッキは思った以上に簡単に回ります。

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特に、《獲物貫き、オボシュ》が出てきた後の破壊力は圧巻の一言です。ありとあらゆる発生源からのダメージが倍になるので、あっという間にあたり一面焦土と化します。

更に、こちらのクリーチャーの大半はドラゴンとデーモンと天使。そう、飛行を持っているものがほとんどなのです。天頂の探究者、カーリア》でさえ飛行を持っているため、安定して相手に驚異的なダメージを浴びせることが可能となります。

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獲物貫き、オボシュ》を出した後に出すカードとしてオススメなのは《嵐の憤怒、コラガン》。一緒に走らせて相手に致死量のダメージを浴びせてやりましょう。

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他にオススメなのはこちらの《責め苦の伝令》。一見普通の3マナ3/3ですが、5マナ払うとオーラとして使用できます。天頂の探究者、カーリア》に貼り付けてやると6/6飛行警戒となるため、攻防一体のクリーチャーとして運用が可能となります。獲物貫き、オボシュ》がいれば12/6として運用が可能となりますね。

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ダメージが向上するのは何もクリーチャーだけではありません。ソーサリーやインスタントのダメージも倍になります。例えば上の《炎の斬りつけ》は与えるダメージが倍の8点になるため、ほぼ確定除去としてふるまうことが可能になります。

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また、これだけ頑張って縛ってデッキを組んでいるので、この縛りプレイの楽しみを相手にも味わっていただきたく、プレイヤー全員の行動を縛り付けるカードも搭載しています。皆でこの楽しみを共有できればいいなと思っています。

5.おわりに

楽しそうに自分の組んだデッキについて話すがばせら氏。ただでさえ制限を課している40ドル統率者デッキに、更に厳しい制限を加えて作り上げ、それがきれいに運用できていることを考えると、彼にとっての完成されたデッキであることは言うまでもないだろう。

だが、氏の挑戦は終わらない。彼はこう続ける。

「いやあ、今回は試しで3色の統率者デッキを作ってみたんですがね。楽しかったんですが、満足はしていないんですよ。

そして、彼はにわかに信じがたい言葉を切り出した。

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やはり、5色じゃないとダメ。

多色の統率者デッキを組まれたことのある方ならご存じだろう。5色になると土地基盤を安定させるため、どうしても多くの多色土地が必要になる。そして、その有用な多色土地は統率者戦に限らず需要が高いため、べらぼうに値段が高くなるのである。従って、40ドル統率者デッキでの実装はかなり厳しいと予想される。

しかし、考えてみればこれもまた「定説」に過ぎない。現に彼は、「40ドル統率者戦には《太陽の指輪》は使えない」という一つの「定説」を覆している。きっと次回には5色の40ドル統率者デッキを組んできていることに違いない。

40ドル統率者という未開の大地は、がばせら氏にとって天国なのかもしれない。これからも氏のチャレンジは続く。

よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。