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マッサンのブロール構築記 ㉘アッシュベイルの英雄、グウィン卿

1.はじめに

むかしむかし、あるところに、一人の騎士がおりました。

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騎士の国ではさあ大変。王様が行方不明です。

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騎士は従者(弟)を連れ、捜索に出かけます。

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色々探した結果、原因はありとあらゆるものを鹿にする邪悪と判明。

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その後色々あったけど、最終的に王様を救出。国は救われましたとさ。めでたしめでたし。

以上がマローのお届けするおとぎ話エキスパンション、「エルドレインの王権」の超絶ざっくりとした概要である。あまりにざっくりとしているため、ヴォーソス諸兄からは「何がやりたいんだコラ!適当な解説をしてコラ!」といわれるかもしれない。

しかし、ちょっと見てほしい。この話の構成、いろんなところで見かけないだろうか?王様が訪れた先の国のお姫様を怪物や邪悪な人間から助け出し、国が救われ、めでたしめでたし。「白雪姫」、「眠り姫」など、この構成を持ったヨーロッパのおとぎ話、あまりに多くないだろうか?

実は、この話の構成には元ネタがある。中世ヨーロッパで爆発的に流行した「騎士道物語」がそれだ。当時の騎士は「神への献身・邪悪との戦い・弱者の守護」をモットーに活躍していたようで、そんな騎士の活躍を描いた騎士道物語がたくさん作られた。有名なところだと「アーサー王物語」なんかが該当する。

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さて、そんな騎士道物語をベースにした「エルドレインの王権」、当然の権利のように色々な騎士がいる。それこそ我々がイメージする王道を征く騎士から、騎士のご先祖様といえるフン族と見まごうばかりの騎士まで、ありとあらゆる騎士が存在している。

で、その騎士を束ねる騎士団長として、宮廷に召し抱える「Syr(サー)」の称号を得た騎士も存在する。そんな中でも、「英雄」としてあがめられる騎士団長がいる。それがコチラ。

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《アッシュベイルの英雄、グウィン卿》

他の騎士団長が単色であるのに対し、グウィン卿は破格の3色。エンバレスの掲げる「勇気」、ロークスワインの掲げる「執念」、そしてアーデンベイルの掲げる「忠誠」。全てを併せ持つ騎士の中の騎士なのだろう。

今回は、こんな騎士の鑑であるグウィン卿と共に、ブロールを駆け抜けようと思う。

2.こいつで何が出来るのか

さて、グウィン卿は一体どのように騎士を率いているのだろうか。能力を見てみよう。

《アッシュベイルの英雄、グウィン卿》
3RWB
伝説のクリーチャー ― - 人間・騎士
5 / 5
警戒、威迫
あなたがコントロールしている装備しているクリーチャーが攻撃するたび、あなたはカードを1枚引き、あなたは1点のライフを失う。
あなたがコントロールしている装備品は騎士に装備0を持つ。

6マナ5/5となかなかのサイズ。更に警戒と威迫を持っており攻防一体の素晴らしいスペックを持っている。

で、肝心の能力だが、装備品を装備しているクリーチャーが攻撃するたび、カードが1枚引けると書いてある。

赤と白と黒の組み合わせ、いわゆるマルドゥカラーは、展開の早い遅いはあれども最終的にクリーチャーでガツガツ殴って勝つデッキになりがちである。そういうデッキに対し、条件付きとは言え手札を補給できる能力は貴重であるという話はこれまでに何回かしている。

そして、重要な能力がもう一つ。なんと、自分がコントロールしている騎士に限り、装備品の装備コストをまるっとタダにして装備させることが可能なのだ。

当然、グウィン卿自身も騎士なので自分に装備品を大量搭載し、武蔵坊弁慶みたいにしても楽しそうだが、それ以外にもこの能力は色々活用できそうだ。

3.こいつでどうやって勝つのか

さて、グウィン卿ができることをまとめると以下のようになる。

・装備品を装備したクリーチャーが殴りつけるとドローのボーナス
・騎士に限り装備品の装備コスト免除

要は、「装備品を装備して殴ればドローが出来る」ということなのだが、騎士に限りその装備コストを0にできる能力も持っている。つまり、できる限り騎士で固めておけば、どんな装備品もうまく使えるだろう。

さて、毎度毎度こういうデッキを組むと話題になるのがコチラ。

果たして、スタンダードにどれだけ使用できる騎士がいるのか?

結論から言おう、問題ない。そりゃ以前の記事で書いたエルフだとか人間だとかに比べれば量は限られている。が、再度エルドレインのモチーフを見てもらいたい。そう、このセット、騎士道物語がモチーフになっており、騎士を推しているセットなのだ。

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そして当たり前のように、上のグウィン卿以外にも騎士をサポートするカードがたくさん存在している。

従って、「騎士を中心にしたビートダウン」を組むということ自体はできそうである。

問題なのはその次だ。果たして、装備品をうまく活用できるビートダウンは組めるだろうか?

…実は、これがかなり難しい。まず、性能面でまともな装備品がおよそ数種類しかない。そして肝心なことだが、装備品のボーナス欲しさに何でもかんでも片っ端から装備品を搭載しまくると、肝心のクリーチャーが少なくなり、相手を殴りに行こうにも殴れなくなる。これじゃ本末転倒だ。

というわけで、今回は「基本的には騎士を中心にしたビートダウンを組む。そして、装備品の恩恵は狙えたら狙う。」としたい。

色々書いたが、根っこは騎士を中心としたビートダウンだ。本当に最近こういう記事しか書いてないなオイ。

4.どうやってデッキを組むか

さて、相も変わらず部族中心のデッキであるので、正直今までのデッキと同じような組み方になりそうな気もするが、この項を省くとこの記事の存在意義も消滅するのでちゃんと見ていこう。

1.騎士をサポートする騎士

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このタイトルを見て「ん?」と思う読者の方もいるかもしれない。なぜなら、狼にカウンターを乗っけるアーリンだったり、人間全体を強化するクードロだったり、今まで部族デッキを組むにあたって、統率者が担っていたのがこの部分である。
改めて今回のデッキでこういうサポートを用意する必要があるとでもいうのだろうか?

改めてグウィン卿の能力を見てほしい。そう、装備品の装備コストを0にするとはいえ、騎士に対する恩恵はそれ以上ない。つまり、それ以上に騎士による恩恵を受けるためには、自前で用意するしかないのである。

幸い、先にも述べた通り、エルドレインは騎士に恵まれた次元であり、グウィン卿以外にも騎士に恩恵を与えるカードは多数収録されている。これらをきちんと使って言ってやろう。

まずは、最軽量騎士のこちら。

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《尊い騎士》
W
クリーチャー ― - 人間・騎士
2 / 1
尊い騎士が死亡したとき、あなたがコントロールしている騎士1体を対象とし、それの上に+1/+1カウンターを1個置く。

1マナ2/1と、ビートダウンに必要とされる打点は用意している。そして、仮にこいつが死んだときに、他の騎士に対して+1/+1カウンターを置くことが出来る。わざわざこれを狙って無理やり死亡させる必要は全くないが、最悪死んでも有効活用できるのは評価できる。

お次のこちらも最軽量騎士だ。これはスタンダードでも見た人が多いのではないだろうか?

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《熱烈な勇者》
R
クリーチャー ― - 人間・騎士
1 / 1
先制攻撃、速攻
熱烈な勇者が攻撃するたび、あなたがコントロールしていて攻撃している他の騎士1体を対象とする。ターン終了時まで、それは+1/+0の修整を受ける。
あなたが熱烈な勇者を対象として装備能力を起動するためのコストは3少なくなる。

スタンダードでは先制攻撃がついた1マナ1/1速攻として赤単で運用されることが多いドミンゲスおじさんだが、彼は騎士デッキでは更に輝くことが出来る。

まず、殴ったときに攻撃している他の騎士1体のパワーを1上げられる。そして、地味だが有効な能力として、装備品を装備するコストが3少なくなる。騎士と一緒に装備品を運用するデッキにおいてはかなり有能な能力である。

なお、赤単で運用する際でも、これのおかげで《エンバレスの宝剣》をタダで付け直すことが出来る。

次は、騎士デッキなら基本的に採用したいこのクリーチャーだ。

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《鼓舞する古参》
RW
クリーチャー ― - 人間・騎士
2 / 2
他の、あなたがコントロールしている騎士は+1/+1の修整を受ける。

能力は単純明快、これ以外のクリーチャーのパワータフネスを+1/+1する。要はクードロ将軍みたいなものである。今回のように特定部族で固めて殴るデッキには必須品であるので当然採用だ。2マナと軽く、本体も2/2と標準的なサイズなのもよろしい。

また、騎士であることを利用できるこういうクリーチャーもいる。

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《立派な騎士》
1W
クリーチャー ― - 人間・騎士
2 / 2
あなたが騎士・呪文を唱えるたび、白の1/1の人間・クリーチャー・トークンを1体生成する。

騎士を唱えるたび、人間1/1トークンを1体生成できる騎士だ。こいつを出して後から騎士を追加するだけで、わっしわっし人間トークンを作り出してくれる。

なお、こいつから出てくるトークンは「人間」であることに注意しよう。断じて「騎士」ではない。

更に、クリーチャー以外にもこういうサポートエンチャントカードがある。

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《騎士の突撃》
1WB
エンチャント
あなたがコントロールしている騎士が1体攻撃するたび、各対戦相手はそれぞれ1点のライフを失い、あなたは1点のライフを得る。
6WB, 騎士の突撃を生け贄に捧げる:あなたの墓地からすべての騎士クリーチャー・カードを戦場に戻す。

殴った騎士1体につき、1点ライフをドレイン。実質打点を1上げているようなものである。更に、8マナ払ってこのエンチャントを生贄にささげることで、墓地から全騎士クリーチャーを戻すことが可能だ。

この手のデッキは全体除去を撃ち込まれたりすると途端に再起不能になりがちなのだが、このカードで立て直すことだって可能である。

最後にせっかくなので、アーデンベイルに伝わる、こんな最終兵器も使ってやろう。

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《忠誠の円環》
4WW
伝説のアーティファクト
この呪文を唱えるためのコストは、あなたがコントロールしている騎士1体につき1少なくなる。
あなたがコントロールしているクリーチャーは+1/+1の修整を受ける。
あなたが伝説の呪文を唱えるたび、警戒を持つ白の2/2の騎士・クリーチャー・トークンを1体生成する。
3W, Tap:警戒を持つ白の2/2の騎士・クリーチャー・トークンを1体生成する。

6マナとビートダウンで運用するには少し重すぎるかもしれないが、自分がコントロールしている騎士1体につき、唱えるためのコストが1少なくなる。そして肝心の能力だが、まず、全体に+1/+1の修正を与える。そして、伝説の呪文を唱えるか、4マナ払ってタップすることで2/2警戒持ちの騎士も生み出すことが出来る。上記の修正も加えると実質3/3警戒を無限に生み出すことが可能である。つよい。

2.搭載する装備品

さて、ここまではうまくグウィン卿以外でも騎士を運用できそうなカードである。ここからは、グウィン卿をうまく運用するために搭載する装備品を考えていきたい。

だが、冒頭で説明した通り、あまり大量に装備品を詰め込み過ぎると、今度はクリーチャーを入る枠が限られる。そこで、今回デッキを組むにあたっては、装備品を厳選し運用することにしよう。

まずは、地味ながら堅実な性能を持ち、騎士デッキにピッタリのこの装備品を紹介しよう。

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《鋼爪の槍》
BR
アーティファクト ― - 装備品
装備しているクリーチャーは+2/+2の修整を受ける。
騎士に装備 1
装備 3

装備したクリーチャーが+2/+2修正を受ける。ぱっと見地味な能力かもしれないが、装備コストに注目しよう。なんと騎士に限り装備コストが破格の1マナである。騎士を中心に用いるこのデッキについては完璧な装備品だろう。

次はエンバレスに伝わる、あの約束された聖剣である。スタンダードでも見かける機会が多いのではないだろうか?

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《エンバレスの宝剣》
4RR
伝説のアーティファクト ― - 装備品
瞬速
この呪文を唱えるためのコストは、あなたがコントロールしている攻撃クリーチャー1体につき1少なくなる。
エンバレスの宝剣が戦場に出たとき、あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とし、これをそれにつける。
装備しているクリーチャーは+1/+1の修整を受け二段攻撃とトランプルを持つ。
装備 3

もう散々スタンダードで見かけて腹いっぱいの方も多いだろうから、ここで立ち入って説明することはしない。ざっくり説明すると、みんなで殴ってしれっと出して大型クリーチャーにつけると人が死ぬ凶器である。騎士デッキも他のビートダウンの例にもれず、並べて殴るデッキなので非常に相性がよろしい。当たり前のように採用だ。

さて、上記二つは別にグウィン卿がいなくても運用できる装備品だ。せっかくなので、グウィン卿で装備コストを0にすることを活用できそうな装備品を使いたい。

というわけで、「装備コストがものすごく重い代わりに恩恵がかなりデカい」装備品を色々見繕っていたが、上記の《エンバレスの宝剣》以上の凶器を発見した。それがコチラ。

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《巨像の鎚》
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アーティファクト ― - 装備品
装備しているクリーチャーは+10/+10の修整を受け飛行を失う。
装備 8

1マナ装備品にしてその修正値、規格外の+10/+10。攻城兵器か何かか?

だが、装備コストも規格外の8マナ。普通に運用してもまず装備が出来ないのだが、グウィン卿がいれば0マナで装備して殴ることが可能である。ここまで相性がいい装備品もなかなかないだろう。

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ただ、この装備は修正値こそ大きいものの、トランプルなどの攻撃を効率よく相手に伝える方法がない。威迫を持っているブロックされにくいクリーチャーに装備したり、《エンバレスの宝剣》や《影槍》と組み合わせてトランプルを付与したりするなどの工夫をしてやろう。

5.サンプルデッキ

というわけで、こちらが筆者が作った物語、「騎士グウィン、ブロールの荒波にもまれる」である。せっかくなので以下のダウンロードリンクからデッキリストをダウンロードして楽しんでいただきたい。この物語の主人公はほかならぬあなたである。

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(↑画像をクリックするとMTGGoldfishに飛びます。)

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何もエルドレインだけに騎士がいるとは限らない。他の次元、他のセットにも強力な騎士はいる。これらの騎士を統べ、目の前の相手を打ち倒し、ハッピーエンドをつかみ取ってこい!

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エルドレインにはグウィン卿以外にも「Syr(サー)」の称号を得ている騎士が各色1人ずつ存在する。今回はせっかくなので投入できる赤、黒、白のサーをすべて投入してみた。伝説のクリーチャーなので《忠誠の円環》との相性も抜群である。

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で、これらを運用するとなるとかなり重めの構成になってしまったので、当然の権利のように相手を妨害するための除去も大量に搭載してある。

中でもおすすめがこの《スナップダックスの神話》。ほぼ全除去のようにふるまうのだが、お互いに最低クリーチャーが1つは残る。従って、こちらの最強の騎士を残しつつ、相手のクソザコナメクジ以外をすべて除去することが可能なのである。条件付きだが、エンチャントやアーティファクト、さらにはプレインズウォーカーまで叩けるのは偉い。

なおこのカード、どういう状況かというと「バケモノさんサイドが人間を急襲、守備隊もろとも焼き尽くした」という、騎士道物語の対極にいる状況である。あんたそれでええんかといわれるかもしれないが、即落ちもまた騎士道の華であるということでここはひとつ勘弁してほしい。

6.おわりに

さて、これで終わりにしたいのだが、一つ皆様に言い忘れたことがある。
特に、この記事を読んで「何だこのデッキ楽しそうじゃん!エルドレインの王権買いに行こ!」と思っているそこのあなた、ちょっと待ってほしい。

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この《アッシュベイルの英雄、グウィン卿》、「エルドレインの王権」ブースターパックからは絶対に出ないのである。

どういうことかというと、実はこのカード、WotCがブロールの布教用に作った、「Brawl Decks」に収録されたカードなのだ。

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お手軽にできるカジュアルなフォーマットとしてWotCも布教していきたいのだろうか。この中に収録されている統率者はどれもこれも性能が高い。中には《フェイに呪われた王、コルヴォルド》のように、構築でも見かけるクリーチャーまで統率者として収録されている。

「ブロール始めたいけどどういうデッキ組んだらいいんだろう…」
「お手軽に紙で始める方法はないかなあ…」

そういう方々にピッタリのオススメセットである。

ぜひ、これを足掛かりにブロールを始めてみてはいかがだろうか?


さて、冒頭に触れた騎士道物語だが、なぜ当時ここまで爆発的に流行し、更に現在にまでその骨子が残るほどの人気を得たのだろうか?

これは諸説あるのだが、言葉の壁を壊したからという説がある。

当時、物語といえば知識人向けの言葉「ラテン語」で書かれるのが通例で、一般人にとってはなじみの薄いものだった。それに対し、騎士道物語は当時の話し言葉である「ロマンス諸語」で叙述されており、瞬く間に一般人の間で流行。その後流行り廃りはあったものの、今日まで続くジャンルとなっている。という説である。

やはり、色んな人に理解されるように書くことが大切なのだ。一物書きの端くれとして、この例は心に刻んでおきたい。

…なお、上で触れた「Brawl Decks」だが、言語は現在の知識人たるインターナショナルパーソンの公用語「英語」だけである。え?日本語版?そんなもんはないです。

WotCさん、広く広めていきたいので日本語版、作っていただけませんかね…?ダメ…?

よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。