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マッサンのブロール構築記 Season2 ⑪湖に潜む者、エムリー

1.はじめに

MTGアリーナでブロールをプレイしていると、様々なデッキに出会う。

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王道を征く統率者から、一癖も二癖もある統率者まで、その選択肢は様々であるが、色々見ていると、戦いやすい戦略をとりやすい統率者が選ばれることが多いように見える。

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中には筆者が記事を書いた統率者も含まれており、「ひょっとしたらこの人、記事を読んでくれたのかも…」と勝手にうれしく思うこともある。特に、記事を書いた週にマッチングしたりすると、その思いはなおさらだ。

さて、アリーナでブロールをプレイする利点。それは一言で言うと、以下のように集約される。

「筆者の知らない、新たなアイデアに遭遇する」

この数ヶ月、書いてきたブロール記事は60本。下手をすれば世界で一番ブロールを満喫しており、ブロールという環境、ゲーム性に最も詳しいプレイヤーと自称してもいいかもしれない。

が、そんな筆者でも限界はある。たかが一人の人間から生まれるアイデアなどたかが知れている。実際に様々なデッキ構成や、その回り方を見てみることで、新たなデッキのアイデアが生まれることがあるのである。

今回紹介するこの統率者も、実際に対戦することで、運用のアイデアが生まれたカードである。

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《湖に潜む者、エムリー》

このカード、実は結構見かけることは多いカードではないだろうか。スタンダードこそあまり見かけなかったかもしれないが、ヒストリックやパイオニア、果てはモダンやレガシーといった環境で使われることが多かったような気がする。また、統率者という環境ではどうかと言うと、なかなか悪くはない性能をしているカードである。

…しかし、これが「ブロール」という環境について考えると話は一転する。単刀直入に言うと、今のブロールという環境でこのカードを軸に据えたデッキは難しいのである。少なくとも筆者はそう考えていた。

実際にこのカードを使った、とあるデッキに遭遇するまでは。

一体、ブロールにおいてこのカードの何が問題なのだろうか?そして、筆者は、実際に使われたところを見て、何を閃いたのだろうか?今回は、そんな一癖も二癖もある統率者、エムリーを使ってデッキを作っていこうと思う。

2.こいつで何が出来るのか

さて、このカードの運用の問題性を説明する前に、とにかくこのカードの特徴を説明しておく必要があるだろう。能力を確認しよう。

《湖に潜む者、エムリー》
2U
伝説のクリーチャー ― - マーフォーク・ウィザード
1 / 2
この呪文を唱えるためのコストは、あなたがコントロールしているアーティファクト1つにつき1少なくなる。
湖に潜む者、エムリーが戦場に出たとき、あなたのライブラリーの一番上からカードを4枚あなたの墓地に置く。
T:あなたの墓地にあるアーティファクト・カード1枚を対象とする。このターン、あなたはそのカードを唱えてもよい。(そのコストは支払う必要がある。タイミングのルールも依然として適用される。)

3マナ1/2。ショック一発で昇天するとは貧弱にもほどがある。だが、今回問題になっている点はサイズではない、その能力である。

まずこのエムリー、場に展開されているアーティファクトの枚数に応じてマナコストが軽減され、最低青マナ1つで召喚が可能になる。ブロールのルール上、統率領域に戻るたび追加で2マナ多く要求されるようになるのだが、このエムリーに関しては、この特徴のおかげで再召喚が結構簡単なのだ。

で、このエムリーだが、タップすることで、墓地に置かれたアーティファクトを唱えることが可能になる。これだけ見ると、どうやって墓地にアーティファクトを叩き落すかという手段を考えることになるが、このエムリーに関しては、場に出たときにライブラリーの上を4枚削ることが出来る。この能力により、墓地にアーティファクトがなくても、墓地に直接アーティファクトを用意することが可能である。

もうわかっただろう。このエムリー、アーティファクトを墓地から再利用することに長けたクリーチャーなのだ。次の項で、この特徴がブロールにおいてどう影響してくるかを見ていこう。

3.こいつでどうやって勝つのか

さて、このエムリーだが、先に挙げたようにアーティファクトをうまく活用できる統率者ということがわかる。となると、考えていく必要があるのはこれだろう。

「うまく活用できるアーティファクトがあるか?」

…実は、これこそがブロールにおけるエムリー運用における最大の障壁なのである。結論から言おう。

「ない。」この一言に尽きる。

色々見ては見たものの、強力なアーティファクトや、アーティファクトを絡めた強力な戦術が、現環境では存在しない。アーティファクトを使うようなコンボも皆無とあれば、この時点でエムリーの運用が厳しいことに気が付くだろう。

なぜこうなったかと言うと、そもそもエムリーが「限られたカードしか使えないスタンダードでなく、様々なカードが使える環境を見越してデザインされたカード」だからである。そういう経緯がある以上、こういう評価になってしまっても仕方がないのかもしれない。

…しかし、つい先日、この状況を打破する戦術の可能性を示したエムリーデッキに遭遇したのである。どういう戦術をとっていたかと言うと…

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《見捨てられた碑》
5
伝説のアーティファクト
あなたがコントロールしている無色のクリーチャーは+2/+2の修整を受ける。
あなたが◇を引き出す目的でパーマネントを1つタップするたび、追加の◇を加える。
あなたが無色の呪文を唱えるたび、あなたは2点のライフを得る。

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《精霊龍、ウギン》
8
伝説のプレインズウォーカー ― - ウギン
初期忠誠度:7
+2:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。精霊龍、ウギンはそれに3点のダメージを与える。
-X:点数で見たマナ・コストがX以下の、1色以上の色を持つ各パーマネントをそれぞれ追放する。
-10:あなたは7点のライフを得てカードを7枚引く。その後、あなたの手札からパーマネント・カード最大7枚を戦場に出す。

マナを加速し、一気に高マナ域の呪文につなげるという戦法である。

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確かに、先ほど「うまく活用できるアーティファクトがない」とは言った。が、マナを加速するアーティファクト、いわゆる「マナアーティファクト」と呼ばれるカードは一定数以上の選択肢があるのだ。これらをうまく活用し、序盤にマナを一気に出せるようにし、高マナ域の呪文をドカドカ投げつけていくという戦法が取れそうである。

というわけで、今回とるべき戦術はこちら。

「エムリーを活用し、早期にマナアーティファクトを展開。しかる後に高マナ域の呪文を叩きつけて勝利する」

「これならやれるかもしれない」…盤面をウギンに焼き尽くされた筆者は確信した。早速、次の項でどういうカードが使えるか確認していこう。

4.どうやってデッキを組むか

それでは本題だ。いかにしてデッキを組んでいくか、この項で考えていこう。

1.採用するマナアーティファクト

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まずは本題だ。いかにしてマナアーティファクトを並べて、序盤のマナを稼ぐかである。どれだけマナを稼げるか、色々探してみよう。

現環境、上で挙げた《秘儀の印章》以外は使用できるマナアーティファクトは大体3マナが相場になっている。

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《紋章旗》
3
アーティファクト
紋章旗が戦場に出るに際し、色1色を選ぶ。
あなたがコントロールしていてその選ばれた色のクリーチャーは+1/+0の修整を受ける。
T:その選ばれた色のマナ1点を加える。

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《糸車》
3
アーティファクト
T:好きな色1色のマナ1点を加える。
5, T:クリーチャー1体を対象とし、それをタップする。

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《真夜中の時計》
2U
アーティファクト
T:Uを加える。
2U:真夜中の時計の上に時刻カウンターを1個置く。
各アップキープの開始時に、真夜中の時計の上に時刻カウンターを1個置く。
真夜中の時計の上に12個目の時刻カウンターが置かれたとき、あなたの手札と墓地をあなたのライブラリーに加えて切り直し、その後カードを7枚引く。真夜中の時計を追放する。

例えば、エムリーと同じエキスパンション「エルドレインの王権」だけでもざっとこれだけのマナアーティファクトがある。基本的にマナを出していくために用いるものだが、マナが余ったときの使い道があるのも偉い。例えば、《糸車》は相手のクリーチャーをタップできるし、《真夜中の時計》はカウンターを増やしてドローするタイミングを早めることが出来る。

「基本セット2021」にはこんなマナアーティファクトも。

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《パラジウムのマイア》
3
アーティファクト・クリーチャー ― - マイア
2 / 2
Tap:◇◇を加える。

普通、3マナのマナアーティファクトは1マナしか出ないのだが、コイツに関してはなんと無色マナが2マナ出る。一刻も早く大型呪文を唱える必要があるときに使いやすいだろう。

クリーチャーである以上対処されやすいという欠点も持ち合わせるが、エムリーで墓地から再召喚が可能ということもあり、思った以上に使いやすそうだ。

で、厳密にはマナアーティファクトではないのだが、こういう選択肢もある。

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《見捨てられた碑》
5
伝説のアーティファクト
あなたがコントロールしている無色のクリーチャーは+2/+2の修整を受ける。
あなたが◇を引き出す目的でパーマネントを1つタップするたび、追加の◇を加える。
あなたが無色の呪文を唱えるたび、あなたは2点のライフを得る。

無色クリーチャーに+2/+2修正、そして無色の呪文を唱えるたびライフゲイン。前者はともかく、一定以上のアーティファクトが必要になるこのデッキでは後者のライフゲインは貴重だろう。

だが、このカードの本質はこの点ではない。なんとこのカードがあると、無色マナを引き出す量を増やすことが出来るのである。先に挙げた《パラジウムのマイア》からは3マナ出てくることになるのだ。

…と、いかにもマナが簡単に増えるかのように書いたが、実はこのカード、少し運用上問題がある。他のマナアーティファクトの能力を見てほしい。「好きな色のマナ」を加えると書いてないだろうか?そう、無色マナに色はない。つまり、色のついているマナを出せるマナアーティファクトからは無色マナは出ない。

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簡単に言ってしまえば、この《見捨てられた碑》を置いたからと言って単純にマナアーティファクトから出てくるマナが増えるわけではないのである。これを防ぐため、一定数以上の無色マナ源は確保しておいた方がいいかもしれない。

2.マナを増やしたその先に

さて、これまでの手順でマナを増やし、うまく大型呪文につなげて勝つというのが今回の目標である。一体どういうカードが使えるのか見ていこう。

まずはなんと言ってもこれだろう。

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《精霊龍、ウギン》
8
伝説のプレインズウォーカー ― - ウギン
初期忠誠度:7
+2:クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。精霊龍、ウギンはそれに3点のダメージを与える。
-X:点数で見たマナ・コストがX以下の、1色以上の色を持つ各パーマネントをそれぞれ追放する。
-10:あなたは7点のライフを得てカードを7枚引く。その後、あなたの手札からパーマネント・カード最大7枚を戦場に出す。

ご存じ盤面クラッシャーことウギンおじさん。大体が出てきたターンに-X能力を使い、盤面を消し飛ばす光景をよく見かけるのだが、普通のデッキだと自分の盤面も一緒に吹っ飛ばすことが多々見受けられる。

が、今回に限ってはその心配は無用だ。ウギンが消し飛ばせられるのは「色がついたパーマネント」に限定されるため、下準備で展開していた無色のアーティファクトは吹き飛ばされないのである。

なお当然だが、今回の統率者に指定しているエムリーは、色がついているため一緒に消し飛ばされる。そこはあきらめよう。

こういうカードなんかもいいだろう。

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《石とぐろの海蛇》
X
アーティファクト・クリーチャー ― - 蛇
0 / 0
到達、トランプル、プロテクション(多色)
石とぐろの海蛇は、+1/+1カウンターがX個置かれた状態で戦場に出る。

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《老いたる者、ガドウィック》
XUUU
伝説のクリーチャー ― - 人間・ウィザード
3 / 3
老いたる者、ガドウィックが戦場に出たとき、カードをX枚引く。
あなたが青の呪文を唱えるたび、対戦相手がコントロールしていて土地でないパーマネント1つを対象とし、それをタップする。

要は、マナを注ぎ込んだだけ恩恵があるクリーチャーである。前者の《石とぐろの海蛇》はマナを注ぎ込んだだけサイズがでかくなり、《老いたる者、ガドウィック》は注ぎ込んだマナ分カードが引ける。

特に《石とぐろの海蛇》は早期に展開し、討ち取られてもエムリーで再利用可能と使い勝手がいい。ぜひ採用してやりたいカードである。

「ゼンディカーの夜明け」からはこういう高マナ呪文もある。

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《海門修復》
4UUU
ソーサリー
あなたの手札にあるカードの枚数に1を足した枚数のカードを引く。このゲームの残りの間、あなたの手札の上限はなくなる。

手札の枚数に等しい数のカードがドローできる、更に、手札の上限が無くなるという特徴を持つカードである。7マナと重いのが玉に瑕だが、うまくいけば圧倒的ドローが出来る。

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また、裏面は土地として運用できるため、序盤に引いてしまっても問題ない。強力な呪文なので土地として使うかどうかの判断がかなりシビアだが、基本的にマナがないと動けないデッキなので、土地がつまりそうなら真っ先に土地として運用してやっていいだろう。

5.サンプルデッキ

こちらが、筆者が遭遇したデッキから着想を得た、エムリーを軸としたターボ青単デッキである。今回もアリーナで使えるデッキリストを下に貼り付けたので、興味があったら是非使ってほしい。

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(画像クリックでMTGGoldfishに飛びます)

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やることはマナを出してデカブツをドカドカ投下していくという分かりやすい戦術だが、これが見かけ以上に難しいことは自明の理だろう。特に、青という色は、盤面に出てきたカードに対する対応が非常に苦手な色である。ちゃんと相手の動きを阻害できる、バウンスや打ち消しはある程度入れておいた方がいいだろう。

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また、上の戦術だけなら正直他の統率者でも同じようなことが出来る。エムリーをうまく活用するためにも、「能動的に墓地に送れる」アーティファクトを一定枚数採用した。特に、上で挙げた《予備物資》など、場に出た際にカードが引けるアーティファクトとの相性は抜群である。どうしても必須カードにアクセスしてやる必要があるので、ドローソースは貴重なのである。

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で、これだけドロー手段が多いので、それをうまく勝ち手段に転用できる《テフェリーの後見》も採用。バリバリ引いて相手のライブラリーをゴリゴリ削っていこう。

6.終わりに

今回は、一見ブロールに向いてなさそうな統率者を用いて、ブロールでもやっていけそうなデッキを作ってみた。

この形にたどり着くまで紆余曲折を経たが、自分の中で納得のいく形になったとは思う。もちろん、まだ色んなカードが使えると思うので、上のデッキを参考に自分に合うデッキを作っていただけられれば幸いだ。


さて、少し宣伝をさせていただきたい。

筆者はTwitchで、週1~2回定期的にブロールの配信を行っている。

要は、この記事に載せるデッキを見繕う配信をやっている。1回の配信でデッキを2つほど遊んでいっている感じだ。

恐らく、一番ブロールを遊んでいる配信じゃなかろうか。興味があったら、こちらのチャンネルもフォローいただけると、筆者のモチベーションにつながる。是非お願いしたい。

よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。