マッサンのブロール構築記 Season 3 ⑧復讐に燃えた犠牲者、ドロテア
1.はじめに
その昔、イニストラードで「最強」の名をほしいままにした聖騎士がいた。彼は卓越した剣技、そして破魔の魔法を駆使して悪鬼と戦い、多くの功績を上げていた。その強さたるや、天使たちも一目おくレベルであったと伝えられている。
しかし、そんな彼にも悲劇が訪れる。散々煮え湯を飲まされ続けた悪魔たちが計略を練り、彼を罠にハメてしまう。圧倒的に不利な状況に追い込まれながらも奮闘する彼だが、今回ばかりは相手が悪かった。相手はイニストラードの大悪魔「ウィゼンガー」、奮戦むなしく、彼は結局命を散らしてしまうこととなってしまう。
…だが、これで終わらないのがイニストラードの恐ろしい所である。死後、彼に選ばれた道は2つ。「成仏して楽になるか」。あるいは「死してなお人のために尽くすか」。人を守り続けることを生業とする彼がどちらを選ぶか。それはもう、聞くまでもないだろう。
そして彼は、人を護る守護霊となった。
コチラが初代イニストラードに収録されている伝説のクリーチャー、《聖トラフトの霊》のバックストーリーである。これだけ聞くと、非常に好感が持てる感動的な話に聞こえるだろう。いわゆる一つのマジックいい話ではないのだろうか。
それでは、ゲーム面ではどうだったのだろうかというと…「最強」の一言に尽きるだろう。本人のサイズは3マナ2/2と非力ながら、何故か殴ると4/4の飛翔物体が横に突如現れる。ストーリー的にはこの飛翔体、「かつてトラフトを救おうとしたが、ギリギリのところで間に合わなかったため、霊と化したトラフトに寄り添っている天使」という激エモな話があるのだが、そんなものを知らない一般プレイヤーからすると怪現象でしかないわけである。
じゃあ本人を処理してしまおうというわけだが、本人は本人で非力とは言ったものの呪禁がついており、並大抵の妨害は跳ねのけてしまう。
結果、当時のスタンダードで鬼のような活躍をすることとなり、「刷られるべきではなかった」「性能がムチャクチャ」「成仏してくれ」と人々から悪魔以上に恐れられる存在と化してしまった。何とも皮肉なものである。
で、これだけ良くも悪くも有名になってしまった彼だが、それだけ有名になってしまったので、彼のリメイクカードが多く作られるに至る。今回紹介するカードも彼のリメイクといっていいだろう。コチラだ。
《復習に燃えた犠牲者、ドロテア》
今日はこの彼女と共に、ブロールを遊んでいきたいと思う。
2.こいつで何ができるのか
それではさっそく、ドロテアの能力を確認していこう。
2マナ4/4飛行。バケモンか?
…当然、これだけの性能のクリーチャーに何もデメリットがないはずがない。このクリーチャー、ガタイは屈強なのだがあまりに虚弱体質で、殴るかブロックをするだけで昇天する。要は《ライトニング・ボール》のような歩く火力と考えたほうがいいだろう。
しかしこのドロテア、これだけで終わらないのが面白い所である。よく見ると彼女、「降霊」という能力を持っているのである。
降霊とは何ぞや。ざっくり言うと墓地から降霊コストを払って唱える能力なのだが、その際、裏返って変身した状態で場に出てくる。
というわけで、墓地から3マナ払うと裏返って出てくるのだが、肝心の裏面がこんな感じである。
なんと、任意のクリーチャーにオーラとして憑りつくことが出来るのである。憑りついた結果何が起こるかというと、憑りついたクリーチャーが殴るたびに4/4の飛翔体として顕現するようになるのである。つまり、先ほどで説明したトラフトのトークン生成をやってくれるのである。
ちなみに、トラフトが生成していたトークンについては先述したようにいい話があるのに対し、コチラはただ通行人に憑依しては暴れまわっている荒ぶる霊である。憑りつかれた人はいい迷惑だろう。
3.こいつでどうやって勝つのか
さてドロテアだが、能力をまとめると以下のようになる
先ほども少し触れた通り、降霊後のドロテアはトラフトのトークン生成とほぼ同じ能力を好きなクリーチャーに付与できる。となると、真っ先に思いつくのはこれだろう。
ズバリ、現環境におけるトラフトは誰なのか?という話である。
もう少しかみ砕いて説明すると、「ドロテアの降霊能力を最大限活かすことが出来るようなクリーチャーがいないかどうか?」という話である。確かに毎ターン殴ることで4/4飛行トークンがノーコストで生成されるのは偉い。偉いのだが、肝心の憑りついたクリーチャーが虚弱体質だったりするとお話にならないだろう。
トラフトがなぜ当時のスタンダードで暴れ回ることが出来たのか、それはひとえに、トラフト自体も強力な性能を有していたからに他ならない。具体的には呪禁により、相手の妨害手段をかいくぐりながらドカドカ殴って行くことが出来るというのがトラフトの強みなのである。
ということで、今回の方針はこうなるだろう。
「ドロテアを貼り付けて暴れまわることが出来るクリーチャーを大量に搭載。そいつらにドロテアを貼り付けて遊ぶ」
方針自体は単純である。それでは具体的な方針を次の項で立てていくとしよう。
4.どうやってデッキを組むか
①第一回 次世代トラフトは誰だ選手権
早速、どういうクリーチャーが採用できるか見ていこう。先述した通り、トラフトと言えば3マナ呪禁。つまり、呪禁生物を探せばいいわけである。というわけで、MTGアリーナの検索機能を使って探してみたのだが…結論から言おう、ほとんど存在しない。いや、一応あるにはあるのだが…
1マナの装備品、そして追加で4マナ払うと青の4/4巨人が装備した状態で場に出てくれるので、実質5マナ4/5のクリーチャーである。で、コイツだが、アンタップ状態に限り呪禁を持ってくれるのだ。そのため、ドロテアをエンチャントして即時対応はされないという強みはある。
…のだが、いかんせんアンタップ状態に限った呪禁であること、そして、本体が5マナとちと思いということもあるので、なかなか率先して使いづらい所はあるだろう。
条件付きで呪禁をつけられるクリーチャーなら、こういうのも採用できそうだ。
2マナ3/2。そしてパワーの異なるクリーチャーを3体コントロールしていると、集会能力により2マナ払って呪禁を得ることが出来るクリーチャーである。この手のクリーチャーはパワーが異なるクリーチャーを用意するのが難しいのだが、ドロテアがいると話は別。攻撃時に4/4が出てきてくれるので、集会達成が幾分かラクになってくれる。
以上。マトモに採用できそうなのがこれくらいしかないので、オリジナルトラフトにならって呪禁を持ったクリーチャーのみでデッキを構築する路線は無理そうだ。さりとて、やはり相手に処理されにくいクリーチャーの方がありがたい。というわけで、似た能力であるこれを使うことにしよう。
「護法」
追加でコストを払わない限り、相手から向けられた能力や呪文を打ち消す常在型能力であるが、相手の対抗手段を縛るという意味合いで呪禁と同じような取り回しが可能となる。
例えばこの《砂漠滅ぼし、イムリス》。5マナ5/5飛行という優秀なガタイを持ちながら、護法4マナを持っている。つまり、相手の妨害に対して追加で4マナを強要できるわけで、鉄壁の防御力も持っているわけである。アンタップ状態に限り?そ、そりゃそうなんだけどさあ…
また、こいつはダメージを与えるたびにカードを手札に供給することが出来る。ドロテアと共に殴りながらゴリゴリダメージを与えていけばいいだろう。
②ドロテアをサポートしてくれる手段
さて、お次はこちら。ドロテアに貼り付けるクリーチャーのほかに、ドロテアを貼り付けたクリーチャーをサポートしてくれる手段を探しておこう。例えば、こういうクリーチャーはどうだろうか。
至って単純。オーラがついたクリーチャーに二段攻撃を付与できる。単純だが極めて強力で、適当なクリーチャーにドロテアを貼り付けるだけで、ものすごい打点をはじき出すことが出来る。
更に、オーラを他のクリーチャーに貼り付け直すことも可能であり、序盤に貼り付けたドロテアをこいつに貼り付け直すことで、4/4二段攻撃with4/4飛行クロックとかいう神を作り出すことも可能である。夢が広がる。
また、このハルヴァール、裏面で装備品として唱えることも出来るのだが、そちらもなかなか面白い能力を持っている。
装備することで+2/0修正。更に警戒をつけることも出来る。そして更に、装備したクリーチャーが死亡した際に、そのクリーチャーを手札に戻すことが出来るのである。
この能力を駆使し、「カルドハイム」期のリミテッドではこいつを装備した適当なクリーチャーがボガボガ相手を叩き、あっという間に血祭りに上げるというケースがよく見られたのだが、今回はうってつけの相手がいる。どういうことかって?
いるじゃないか、ホラ。簡単に死んじゃう4/4飛行が
また、こういうクリーチャーも相性がいい。
要はいったん盤面からクリーチャーを消し、相手の除去から自軍を守ってくれるクリーチャーだが、こいつらは共通して「フェイズ・アウト」をさせる。このフェイズ・アウト、細かく説明するとアホみたいに面倒くさいので、ざっくりと要点だけ抜き出すと、「装備品やオーラをつけたまま、クリーチャーを疑似追放できる」という能力である。
このフェイズ・アウト、実は今回使うドロテアと相性がかなりいい。確かに今までも、「一時的に追放して相手の除去をかわす」、通称「ブリンク」と呼ばれる呪文は多数存在した。これらの手段はCIP能力の使いまわしなどができるという利点があるのだが、ドロテアを貼り付けたクリーチャーをブリンクしたが最後、貼り付けたドロテアが外れてしまうという欠点があるのである。
反面、フェイズ・アウトはCIP能力は使いまわせないものの、オーラや装備品はくっつけたまま疑似的に追放してくれるので、フェイズ・アウトから帰ってきても、ドロテアはばっちり貼り付けられたままである。
フェイズ・アウトとブリンク。それぞれ一長一短あるものの、今回のデッキでは明らかにフェイズ・アウトの方に分がある。採用してやろう。というか現状、安易にブリンクできる手段があまりないというのもあるのだが。
5.サンプルデッキ
というわけでコチラ。次期トラフトの座を争うように集まった猛者たちである。MTGアリーナで使えるリストを下に貼っておくので、皆様もぜひダウンロードして遊んでいただきたい。
採用したクリーチャーは、基本的に飛行を持っていたり、殴るとお得な能力が誘発したり、そもそも強かったりなど、とにかく片っ端から採用した。近年MTGにおいてクリーチャーの質は上がっており、特にストレスなく採用することはできた。強力なクリーチャーを展開しつつ、隙あらばドロテアをオーバーソウル。一気にケリをつけてしまおう。
この手のデッキの常として、相手に巨大なクリーチャーを展開されると途端に動きが止まる。できるだけ止まらないようなクリーチャーで構成しているものの、やはり干渉手段は必要だ。例えばこの《勇敢な姿勢》。相手のデカブツを破壊しながら、万一の場合はこちらのクリーチャーに対して破壊不能を与えることも出来る。オススメの1枚である。
新製品《洗い落とし》。一見するとなんのこっちゃない、普通の3マナ打ち消しなのだが、1マナで撃つと手札から唱えていない呪文を打ち消すことが出来る。これだけ聞くとなんのこっちゃという話なのだが、ブロールは手札を使わずクリーチャーを唱える領域、「統率者領域」がある。相手の切り札を1マナで対処できる規格外カード、ぜひお試しいただきたい。
6.終わりに
いかがだっただろうか。今回は往年の名カードである《聖トラフトの霊》のリメイクカードであるドロテアを使い、攻撃的なデッキを構築した。前回のオドリックに続きまたもこういった押せ押せのデッキだが、これがなかなか爽快感があって面白い。ある程度の下準備はいるものの、カッチリハマると圧倒的な突破力があるデッキ、それが今回のデッキである。
もちろん、青白という色の組み合わせはこういった押せ押せのデッキだけではなく、盤面を徹底的に絞るコントロールデッキも組めるだろう。その場合は、フィニッシャーとして採用する強力なクリーチャーにドロテアを付与することになるのだろうか。一方で、採用する全体除去と相性が極めて悪いという問題も発生してくるはずだ。面白い構築にはなりそうである。
是非皆様も、思い思いの構築にトライしてみてはいかがだろうか。
よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。