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マッサンのブロール構築記 Season 3 ⑨蝕むもの、トクスリル

1.はじめに

害虫(がいちゅう、英: Pest)とは、人間(ヒト)や家畜・ペット・農産物・財産などにとって有害な作用をもたらす虫。主に無脊椎動物である小動物、特に昆虫類などの節足動物類をいう。駆除には殺虫剤が使われる。英語では「害虫」「害獣」「害鳥」は、いずれも「Vermin」の語で表される。

Wikipedia「害虫」より引用

人に「害」をなす「虫」。それを総称して「害虫」と呼ぶ。虫の種類は100万種類以上、人に利益を与える虫もいれば、当然人に害を与える虫もいる。人間の歴史は、この害虫との戦いの歴史と言っても過言ではないだろう。

ただ、一口に害と言っても多数の種類があり、例えば「農作物に被害をもたらす虫」であったり、「病原菌の媒介者として直接的に人や家畜に害をなす虫」であったり、「家屋や衣服を食い散らかしてしまう虫」であったり、果ては「特に何も人間に害は与えていないが、存在が気持ち悪い虫」という、虫からすればただただ迷惑な分類もされていたりする。

農作物や衣服、人体に対する害はしょうがないにせよ、「気持ち悪い」の一言でしばかれるのはちとかわいそうにも思う。

一方のMTGはどうだろうか。一応昨今のセットでは「害虫」らしき生き物が認知されてはいるものの、我々が想像するような害虫はあまり見かけないような気がする。

というのも、もはやカード化されている害虫のサイズや狂暴性が常軌を逸しており、間接的に人間に害を与えるというよりも、直接的に人間を食べたりして害を与えるタイプの虫がほとんどなのである。そりゃ上で挙げた害虫の定義には含まれるだろうが、害の範囲が普通の昆虫というよりヒグマとかその辺になっているような気もする。MTGは我々の理解をすぐ凌駕する。それもまた面白い所だろう。

今回紹介する害虫もまた、かなりの大きさを持ったものであり、おそらく苦手な人はなかなか直視しづらいとは思うのでご注意いただきたい。コチラのカードである。

《蝕むもの、トクスリル》

害虫界でもトップクラスに知名度が高い害虫、「ナメクジ」。雨が降る梅雨時に大量に発生し、農作物や庭の草木を食い散らかしてしまうという害を与える害虫である。外見もまあ、お世辞にもかわいいとは言いづらく、ちっこいのがフニフニ動いてる分にはまだしも、こんなのが夜道に出てきたら卒倒すること間違いない。

今日はこちらのナメクジを使い、ブロール界に害をなしていこうと思う。以外にもMTG界ではマイナーな部族「ナメクジ」。その実力やいかに。

2.こいつで何ができるのか

さて、実際にナメクジの能力を確認していこう。

《蝕むもの、トクスリル》
5BB
伝説のクリーチャー ― - ナメクジ・ホラー
7 / 7
各終了ステップの開始時に、あなたがコントロールしていない各クリーチャーの上にそれぞれスライム・カウンター1個を置く。
あなたがコントロールしていない各クリーチャーは、それぞれその上にあるスライム・カウンター1個につき-1/-1の修整を受ける。
スライム・カウンターが置かれていてあなたがコントロールしていないクリーチャー1体が死亡するたび、黒の1/1のナメクジ・クリーチャー・トークン1体を生成する。
UB, ナメクジ1体を生け贄に捧げる:カード1枚を引く。

7マナ7/7。デカい。デカすぎる。MTG界の超巨大生物《甲鱗のワーム》に匹敵するそのボディ、もはや害虫というより天災のそれである。さすが伝説として語られるだけはある。

能力を確認すると、各終了ステップに、自身がコントロールしていないクリーチャーの上にスライムカウンターを1個設置する。で、各クリーチャーは、自分の上に乗っかっているスライムカウンター1個につき、-1/-1修正が加わるのだ。

ここまで見ると、かの有名スイーパー《虐殺少女》に似た能力であるような気もする。だが、コイツの本性は、スライムカウンターが置かれたクリーチャーが死亡したときに明らかになる。

カウンターを乗せられ、日に日に弱っていくクリーチャー。ついには自分の体力(タフネス)以上のカウンターが乗せられてしまい、死んでしまうだろう。すると、その死体から…

/ばぶー!\

何ということでしょう、死体から元気なナメクジの赤ちゃん(1/1)が生まれているではありませんか。

そう、このトクスリル。スライムカウンターが乗ったクリーチャーが死亡した際、1/1のナメクジトークンを生成することが可能なのである。おそらくフレーバー的には、相手のクリーチャーの上に乗せているカウンターはナメクジの卵。卵を産み付けられ衰弱していく相手のクリーチャー。死体を食い破り産声を上げる幼体。エイリアンか何か?

ちなみに、このナメクジだが、2マナで生贄に捧げてドローに変換可能だ。別にトークンと本体の間に親と子の情愛とかそういうものはないのである。

3.こいつでどうやって勝つのか

さて、このナメクジの特徴をまとめると以下のようになる。

・相手のクリーチャーにスライムカウンターをばらまき弱体化させる。
・相手のクリーチャーが死ぬとナメクジが出てくる
・ナメクジを生贄に捧げると1ドローできる

とにかく相手の盤面に圧をかけ続け、自分の盤面を一気に優勢にすることが可能なクリーチャーなのだが、いかんせん本体のマナが重い。こいつが出る際には、既に相手の盤面がしっかりしており、トクスリルが出てくるだけでは盤面を盛り返すことは難しい場合も多々あるだろう。下手をするとトクスリルが出てくる前に殺されるという場合も考えられる。

となると、事前に考えることは「トクスリルが出るまで耐え忍ぶ」ということだろう。最低でも7ターン、トクスリルが出てくるまで盤面から脅威を取り除いておき、相手がヒーヒー言っている間に叩きつけたほうがインパクトが強いだろう。

問題は、こんなに長い間耐えられるかどうかという話だが、それは問題ないだろう。というのも、今回のトクスリルの固有色は青と黒。盤面を整え、相手の危険なカードを打消し、頃合いを見計らってアドバンテージをひっくり返す。このデッキを総称し「コントロール」と呼ぶのだが、この青と黒という色はそのコントロール戦術が立てやすい色なのである。

ちなみに、コントロールデッキの中に入るデッキで能力が強力で、一気に勝負を決めうるカードは「フィニッシャー」と呼ばれる。言ってしまえば、このデッキのフィニッシャーをトクスリルに据えてしまおうというのが今回の方針になりそうだ。

つまり、今回の方針はこう立てられる。

「トクスリルをフィニッシャーに据えた青黒コントロールデッキを組む」

具体的なカードは何を採用するのか それは次の項で見ていくこととしよう。

4.どうやってデッキを組むのか

さて、コントロールを組むうえで重要なことだが、「相手の盤面に干渉するカード」および「アドバンテージをひっくり返すカード」の2通りを考えていく必要がある。それぞれ確認していこう。

①相手の盤面に干渉するカード

まずはトクスリルを出すまで生き残るために、相手の盤面に干渉するカードを探していこう。例えばこういうものは必要になってくるだろう。

《冥府の掌握》
1B
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。それを破壊する。あなたは2点のライフを失う。

《杯に毒》
1BB
インスタント
クリーチャー1体を対象とする。それを破壊する。この呪文が予顕されていたなら、占術2を行う。
予顕1B(あなたのターンの間、あなたは2を支払って、あなたの手札からこのカードを裏向きに追放してもよい。後のターンに、これの予顕コストでこれを唱えてもよい。)

まず、相手のクリーチャーをシンプルに除去する呪文は必要になってくるだろう。どんなに相手が強力なクリーチャーを出そうとも、たった1枚でこれらに対応できるカードはコントロールで必須のカード群である。採用できるだけ採用しておいた方が良いだろう。

しかし一方で、無計画にこれらのカードを乱射しているだけでは、いずれこちらの手札が無くなってしまう。コチラの手札の消耗を抑えるためにも、一枚で相手のクリーチャーを2枚以上処理できるカードはほしい所である。

例えば、こういうカードはどうだろうか。

《雪上の血痕》
4BB
氷雪ソーサリー
以下から1つを選ぶ。
• すべてのクリーチャーを破壊する。
• すべてのプレインズウォーカーを破壊する。
その後、あなたの墓地から点数で見たマナ・コストがX以下でありクリーチャーかプレインズウォーカーであるカード1枚を戦場に戻す。Xはこの呪文を唱えるために支払われたSnowの点数に等しい。(Snowは氷雪である発生源からのマナを意味する。)

6マナとちと重いが、その分能力は絶大。クリーチャーかプレインズウォーカーをまとめて消し飛ばす万能除去である。また、払った氷雪マナに応じて、墓地にあるクリーチャーやプレインズウォーカーを場に戻すことが可能でもある。一方的に優位な盤面を一気に作ってしまおう。

また、こういう除去も採用可能だろう。

《食肉鉤虐殺事件》
XBB
伝説のエンチャント
食肉鉤虐殺事件が戦場に出たとき、ターン終了時まで、すべてのクリーチャーは-X/-Xの修整を受ける。
あなたがコントロールしているクリーチャー1体が死亡するたび、各対戦相手はそれぞれ1点のライフを失う。
対戦相手がコントロールしているクリーチャー1体が死亡するたび、あなたは1点のライフを得る。

場に出た際、つぎ込んだマナに応じて、クリーチャーに-X/-X修正を与えるエンチャントである。また、相手クリーチャーが死亡した際、自分のライフを回復するというオマケもついている。このオマケが結構地味に有能で、相手の攻め手を潰しつつ、ライフを回復してナメクジを叩きつけるまでの時間稼ぎも可能となる。ぜひ採用しよう。

また、これらのカードはクリーチャーしか対応ができない。それ以外の呪文に対応するために、こういうカードも採用しておこう。

《襲来の予測》
1UU
インスタント
呪文1つを対象とする。それを打ち消す。
予顕1U(あなたのターンの間、あなたは2を支払って、あなたの手札からこのカードを裏向きに追放してもよい。後のターンに、これの予顕コストでこれを唱えてもよい。)

なんにでも対応可能なカード、打ち消しの出番である。相手が呪文を唱えた際にしか対応できないという弱みはあるものの、ほぼなんにでも対応できるのは偉い。基本的にはこれで立ち回り、取りこぼしたものを除去で対応するというプレイングが基本的になってくるだろう。

なお、最近だと「イニストラード:真紅の契り」でこういうクリーチャーも収録された。

《過充電縫合体》
2UU
クリーチャー ― - ゾンビ・ホラー
3 / 3
瞬速
飛行
濫用(このクリーチャーが戦場に出たとき、あなたはクリーチャー1体を生け贄に捧げてもよい。)
過充電縫合体がクリーチャー1体を濫用したとき、呪文や起動型能力や誘発型能力のうち1つを対象とする。それを打ち消す。

なんのこっちゃない、普通の4マナ瞬速クリーチャーなのだが、場に出た際にクリーチャー1体を生贄に捧げることで、相手の呪文を打ち消すことも可能となる。起動型能力や誘発型能力も打ち消すことが可能なので、幅広い対応が可能となる。クリーチャーの生贄が必要なのがネックなのだが、最悪自分を生贄に捧げて能力を起動させることも出来る。

②アドバンテージをひっくり返すカード

次はこれである。相手のカードをさばくと、当然自分の手札もどんどん減っていく。最終的には手札が枯渇し、相手の行動に何にも干渉できなくなってしまうという事態が発生する。これを避けるため、自分の行動を増やすことが出来るカードを一定数採用しておこう。

一番わかりやすい手段は「手札を増やす」という手段である。

《多元宇宙の警告》
3U
インスタント
占術2を行い、その後カード2枚を引く。
予顕1U(あなたのターンの間、あなたは2を支払って、あなたの手札からこのカードを裏向きに追放してもよい。後のターンに、これの予顕コストでこれを唱えてもよい。)

4マナで占術2、さらに2ドローが可能となる。今のスタンダードでもよく見かける呪文ではないだろうか。

当然そのまま使っても十二分に強力な呪文なのだが、さらに言ってしまえばこの呪文、予顕を持っているため、暇なときに2マナで追放しておくと、後々2マナで撃つことが可能になる。極めて強力なドロー手段である。

他にも、こういう手段はどうだろうか。

《記憶の氾濫》
2UU
インスタント
あなたのライブラリーの一番上にあるカードX枚を見る。Xはこの呪文を唱えるために支払ったマナの点数に等しい。そのうち2枚をあなたの手札に、残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。
フラッシュバック5UU(あなたはあなたの墓地にあるこのカードをフラッシュバック・コストで唱えてもよい。その後、これを追放する。)

コチラも4マナで唱えられるドロー呪文だが、なんとこの呪文、ライブラリーを4枚見て、その中から好きなものを2枚手札に加えられることが出来る。

それだけでも十二分にすごいのだが、さらにこの呪文、フラッシュバックコストを7マナ払い、墓地から再度唱えることが出来る。その際はライブラリーを7枚見ることが可能となる。正直言って性能がおかしい。そらスタンダードで死ぬほど見る呪文になるだろう。

また、手札を直接は増やさないが、こういう手段も検討可能である。

《溺神の信奉者、リーア》
3UU
伝説のクリーチャー ― - 人間・ウィザード
3 / 4
すべての呪文は打ち消されない。
あなたの墓地にありインスタントやソーサリーであるすべてのカードはフラッシュバックを持つ。そのフラッシュバック・コストは、そのカードのマナ・コストに等しい。

5マナ3/4。更に、墓地のインスタントソーサリーをすべて唱えなおすことが可能となるクリーチャーである。つまり言ってしまえば、墓地のカードが全て手札になるようなものである。

ただし注意事項として、全ての呪文が打ち消し不能となる。そのため、相手の呪文に対して干渉不能となってしまうという欠点があるが、これは言い換えれば自分の呪文も打ち消されないということである。相手が打ち消し主体のデッキの場合、かなり優位に立ち回ることが出来るだろう。

5.サンプルデッキ

そういう訳でコチラ、「ナメクジ大行進」デッキである。ぜひ皆様にもブロールでナメクジを盤面にばらまいていただきたいので、以下にMTGアリーナ用のデッキリストを貼っておいた。ダウンロードして使ってほしい。

序盤は除去で耐え忍び、中盤でマナをひっくり返し、後半対処が困難なフィニッシャーを叩きつける…という、至極オーソドックスな青黒コントロールができたような気がする。デッキとしての面白みは少し足りないかもしれないが、デッキとしては極めて強力である。うまく相手の行動をコントロールし、盤面をナメクジだらけにしてやろう。

また、出て来たナメクジの利用法として、《移植された自我》など、コストに生贄を要求するカードを何枚か入れてある。ナメクジボディの相手クリーチャーとか嫌が過ぎるのだが、ゲーム的には何の問題もない。使ってやろう。

このデッキにおける最強カード候補《ヘドロの怪物》。その能力は絶大で、スライムカウンターが乗ったクリーチャーを問答無用で2/2のバニラに変換してしまう。こいつ自身が殴ったり場に出た際にもスライムカウンターがをばらまくことが出来るのだが、トクスリルがいるとあら不思議。相手のありとあらゆる相手クリーチャーを2/2バニラに変換できる。

6.終わりに

いかがだっただろうか。工夫次第ではこういったコテコテのコントロールデッキも組むことが可能になるのがブロールの面白い所である。

「ブロールは同名カードが1枚しか使うことが出来ないからカードパワーが低い」という言説をよく耳にするが、決してそんなことはない。むしろブロールだからこそ輝けるカードや戦略は星のように存在する。

このトクスリルにしたって、我々からすると巨大な気持ちが悪いナメクジに見えるかもしれない。しかし、このトクスリル、イニストラードでは邪神として崇め奉られているという側面もある。

ところ変われば品替わる。ぜひ皆様も、独特な環境、ブロールを味わってみてはいかがだろうか。

よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。