飛んでいる内に辿り着いてしまう

その木の実が
君の手には届かない
それが、解っていて
君は
今日も飛んでいる
今までもそうしてきた
来る日も来る日も、だ
「ぴょんぴょん、ぴょんぴょん」
その
ぴょんぴょん、ぴょんぴょんと言う音が
誰が生み出す、どの、ぴょんぴょん、ぴょんぴょんよりも正しく
ぴょんぴょん、ぴょんぴょん
とだ

君は何故飛ぶか?
それは、
届かない

その木の実が
君の手には届かない
それが、解っていて
君は
今日も飛んでいる
今までもそうしてきた
来る日も来る日も、だ
「ぴょんぴょん、ぴょんぴょん」
その
ぴょんぴょん、ぴょんぴょんと言う音が
誰が生み出す、どの、ぴょんぴょん、ぴょんぴょんよりも正しく
ぴょんぴょん、ぴょんぴょん
とだ

君は何故飛ぶか?
それは、
届かない
その事が解りきっているからだ
どんな奇跡よりもそれは正しい

君の高さの問題なのか
木の実の高さの問題なのか
否、そうではない
君の空想力の問題だからだ

もしもある時、君が変わって
木の実が届く可能性が生まれたとする
すると、君はもう飛ぶのを辞める
君が変われば、木の実を手で掴むことが出来るのに、だ

「僕が変わっても、
世界が変わるわけじゃあないんだ」
誰にともなく君はそう呟く

もし君が変わって

木の実が君の手で届いても
君は飛ぶのを辞めているし
例え
「ポトリ」と木の実が落ちたとしても
君はそちらを振り向きもしないだろう

新井昌広