見出し画像

【詩】通り雨

通り雨、犬といっしょに
夏、背中を濡らし
大きな雲が頭の上を
黒く塗りつぶす

息を詰まらす
俄かな夜の中を
走ってきた雲が光を放ち
大地を震わす

 ついさっきまでの太陽の中
 ぼくは影を落とし
 座り込んでの手探りの中
 もう戻ってはこない

通り雨、ぼくと似た人が
黒い喪服を濡らし
降り続く雨はまた轟々と
影を塗りつぶす

       (1976年8月作)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?