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一語でI love youが表せるハンガリー語・くしゃみするたびに授業が止まる先生

私がトルコ語専攻だったという話は前にしましたが、それは日本語の文法に似ていると物の本で読み、それに関心を強く抱いたことがきっかけとなったという話を自己紹介の記事でしたことがありますが、同じ理由で大学で専攻したかった言語のひとつがハンガリー語でした。

ハンガリー語も大きくみれば、膠着語で基本語順はSOVという日本語と似たような特徴を持っており、さらにトルコ語と祖先が同じだという「ウラル=アルタイ語族」という説まで以前はありましたので、それなりの共通点があるということであっては、勉強しないわけにはいきません。

大阪大学(外国語学部)は日本で唯一ハンガリー語の課程を持つ大学で、特に当時はハンガリー語の文法を専門にされている先生が多かったので、トルコ語を1年勉強した2年生には必ず勉強したいと思っていました。残念ながら第二外国語や共用外国語のような科目は開講されていなかったので、専攻語の授業を週に3つ聴講させていただくことになりました(先生方の広いお心で実現したことに感謝です)。

文法は日本のハンガリー語研究の第一人者とも言える早稲田先生の授業に参加させていただいてました。教科書は「ハンガリー語入門」で、解説、練習問題、音声とまずはこれ一冊あれば大丈夫というバランスの取れた教科書でした。音声の日本語部分が先生ご自身の声だったのが印象的です(今は私の使っていた教科書の改訂版が出ているようで、こちらは確認できていませんが、表紙もよりかわいらしくなっています)。最近ご退官なされたそうで、先生の授業を受けられて幸せだったなぁと思い返してしまいました(歳だね)。

後の2コマはネイティブの先生の授業で、なかなかついていくのが難しかったのですが、劣等生ながら一年は授業に出してもらいました。専攻語の一年生たちも優しく、先生の家でグヤーシュ(ハンガリー伝統のパプリカのスープ)を作るときには誘ってくれました。この先生の授業で印象的なのは、授業中に誰かがくしゃみをするたびに、Egészségedre.(英語のBless youのような言葉)を言ってくれて、いちいち授業が止まっていました。優しい先生だったんでしょう。

トルコ語を学んだ感想としては、まぁ日本語と似ている部分もあるなという感じでしたが、ハンガリー語を学んだ時には聞いていた話と違うぞ!と思ったのが正直な感想でした。ハンガリー語ではすぐに語順は変わるし、ドイツ語みたいな分離動詞はあるし、対格を伴うかによって動詞の活用が変わるし、やたら格変化のバリエーション多いし…という日本語やトルコ語から見たら「難しい」言語だと感じたのです(でもハンガリー語専攻の同期は簡単と言っていて悔しかった思い出)。

特にハンガリー語の好きなところは、通常の動詞の主語による人称の変化だけでなく、2人称の目的語を伴った人称の活用があることです。具体的には「私があなたを」までを表す人称-lek/-lakというものが存在します。例えば、ハンガリー語でI love youを表す言葉はSzeretlek(セレトレック)となるのですが、Szeret-は「愛する」という動詞語幹で、母音調和した-lekが「私があなたを」を表しています。これを始めて習った時はこんな言語もあるのか、「ほー」、「へー」というトリビア感がすごかったです。

テュルク語からの借用語も少なからずあり、alma「りんご」、kapu「扉」など日常的によく使う語彙なども使われていたことを覚えています。

テュルク語の次にお勧めしたい言語の一つです。