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【第8回】代名詞の格変化【クリミア・タタール語】

第6回と第7回で名詞の格変化について見てきました。今回のテーマは代名詞の格変化です。名詞の規則的な格変化と代名詞の格変化がどう違うかに注意して見ていきましょう。

08. 代名詞の格変化_page-0001 (3)

まずは規則通りの名詞の格変化を思い出しましょう。属格は-nIñ、対格は-nI、与格は-GE、位格は-DE、奪格は-DEn、具格は-nenでした。

人称代名詞編

パッと全体を見渡すと3人称の単数と複数が全体的に名詞の格変化の規則通りに変化していることが分かります。特に複数のolarに関しては、複数接尾辞の-larの後ですから普通の名詞の複数形と同じように規則的に変化していることが分かります。本当に3人称(特に複数)は代名詞なのかなという疑問が湧いてきます。このテーマについてもう少し考えていくには、人称の曲用を見ていく必要があります。

次に、1・2人称の単数と1・2人称の複数の変化のパターンが似ていることが分かります。men-ni, men-geなどは音が融合してmeni, mañaとなったのかもしれません。

menimとbizimだけñではなくmになっています。語頭の音がmとbで両方唇の音だからでしょうか。

具格はなぜか1・3人称の単数だけ二つのパターンがあります。もしかしたら他の人称でも2パターンある可能性はありますが、確認できませんでした。上段の形は規則的なものです。menimnenは属格に-nenが付いた形です。他のテュルク語でも具格の前の名詞は属格になることがあります。この点でも-nenは他の格接尾辞と異なる振舞いをしています。

指示代名詞編

こちらも名詞の格変化とは少し違っていますが、şu, bu, oの3つの指示代名詞は同じようなパターンで変化していることが分かります。

位格と奪格で3人称の所有人称接尾辞もついていないのにnを挿入するという現象が起こっています。

【会話表現】
Sağ ol.「ありがとう。」
Sağ olunız.「ありがとうございます。」
Çoq sağ ol.「本当にありがとう。」
Şükür allağa.「ありがとう。」(lit. 神に感謝)
Sizge teşekkür bildirem.「あなたに感謝申し上げます。」

【学習の感想】

一見するとまたトルコ語とノガイ語がバラバラに分布しているのかなと思いましたが、ノガイ語の格変化を調べてみると、人称代名詞はほぼノガイ語と同じ形をしていることが分かりました。それに対し、指示代名詞はトルコ語の方が比較的近いようです。ノガイ語ではbuの変化形はmで現れるものが多く、şuにあたるものはそもそもsolという形の様です(ノガイ語にşuにあたるものが完全にないかというとそこまでは調べられていません)。