今村夏子の『ピクニック』を読んで何か感じた方の人

映画「花束みたいな恋をした」で2回くらい出てくる台詞に興味をそそられたので読書感想文。例のあれです。「あの人はきっと今村夏子さんのピクニックを読んでも何も感じない人なんだよ」です。

今村夏子さん初めてなんですが「こちらあみ子」っていう短編集の2番目の話だったから素直にあみ子からスタート。読書自体久々だったからめちゃ時間かかったのだった。もっと本を読みましょう

まずはあみ子なんだけど途中まで特にこれといったショッキングな出来事や山場等は無かったものの徐々に不穏になってくあの空気で、ああこの作者ってこういう感じなのねと理解。不穏というかあみ子の何かが欠落した感じ。
言ってしまえば知的障害なんだろうけど、あみ子が幼少の頃から描かれてるからなんとなく気付きにくかった。実際もそうなのかな?個性と病気の臨界点って判断に困るよな~
病気も個性!みたいなポジティブスローガン見ることあるけどあれはあくまで当事者サイドの人間じゃなきゃ許されないよね。自分も持病あるけど健康な人から素敵な個性!とか言われたらぶん殴るぞって思うもん。病気は病気だよそれ以上でもそれ以下でもないわ。病気も個性の一部だとか言われたらキモすぎる、病気はペルソナじゃありません

脱線した!
あみ子の世界に戻りますがあの家庭、家族としての人間関係は崩壊してるのに何とか家族の形は法的にだけ保たれてて地獄…ハウルの動く城の最後の方で床と足だけ機械的に動き続けてる状態並みに不安定なのよあの家庭

でも父親だってグレた息子を更正させたり病み病みになっちゃった妻を支え続けたり知的障害抱えた娘を支援し続けるの同時進行なんて辛すぎるもんね 四面楚歌じゃん 敵ではないかもだけど味方って程の力にはならないのが火を見るより明らかでしんどい。
私ならどうするだろうかと考えたけど逃げるに逃げられなくて本当に生地獄じゃんね 何から着手すりゃいいか分からんよあんなの…

オチがつかないのであみ子はほどほどにしといて本題に移ります


ピクニック!


いやあ怖かった~あみ子で今村夏子を履修した人間が読むことで開始3ページで「アッこれは今村夏子の波動」と身構えました。
もう今村夏子というか人間の善意らしき言動を素直に信じられない。性悪説モード入っちゃう

バ先の女達、一見後輩から七瀬さんを庇ってるっぽいけど本音は超ウケるコイツヤバすぎしばらく遊べんじゃんいつまでもつかな?笑あんまりいじめすぎちゃ駄目だよ~笑笑なのがま~じでキツかった。

ヘドロ掃除(もといスマホ捜索)してる七瀬さんの口にピーナッツ投げ入れるとことか七瀬さん本人は美味しい!ありがとうございますみたいな本心で言ってるであろうところがもう…もう…汚い川隔てて見世物にされてるんだよ七瀬さん…
それを一定の距離空けて眺めているであろう若い女複数人っていう図がありありと想像できました。ちょっと抜けてるというか察することが出来ない人をいじるのって遠目からみると睦まじいようでズームアップすると巧妙なリンチなんですよね。本人は幸か不幸か気付いてないのがまたもどかしいっていうか…

七瀬さん本人不在の中後輩呼び出して会話が続く場面とか身の毛よだつよね。「なに笑ってんの」「イヤ先輩が笑ってるからスよ」(誰も何も言わないが目反らしながらみんな笑ってる場)みたいな。こえ~
当方陰キャでござるからいじめられる側として自己投影してまして、明日もしこれでバ先の更衣室入ってこの人達いたらクッソ怖いわ!着替えも躊躇するからめちゃ早く来て済ませとこうみたいな妄想するよね。

あと恐ろしいのが今村夏子さんのこの短編集って、分かりやすい起承転結や大きな山場、これといったトリックじみた小細工も無ければ難しい世界設定も無いからスラスラ入ってくるのにそこに含まれる毒素も軟水みたいにナチュラルというか引っ掛かりが無いんですよね。気付いたら致死量の毒浴びてたみたいな。悪意って善意に梱包されてるのがあるあるなんですかね?知らぬが仏の方が自分を守るためな気もするけど、気付いちゃうともう人間は基本信じない方が身の為みたいになっちゃうよね。
それでも信じられる人はいるしそんなに疑いまくるのも疲れるから自分が信じたい人やものを信じてればいいよね。

改めて今村夏子さんの作風は個人的にホラーっぽいなと思いました。欠陥のある人間を中心に据える感じとか、日常には必ず影が差す感じとか。
他の作品も読んでみようと思いました。というか読書を習慣付けることからなので次の読書感想文はいつになるやら。



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