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自転車をとられたんでゴーヤを食べに行きました。



撮影を終えて取引先の事務所を出ようとしたら仕事仲間のピカチュウ君が慌てた様子で「ピィカァッ!!」なんて言うのだよ。


貸すのは別に構わないよ。でも僕の自転車はちょっと問題があってね。素人さんには乗りにくい。


それを丁寧に説明しようかと思ったんだけど、ピカチュウ君は「ピッカピイカァァッッ!!プカピカァ!」と、如何に自分が急いでいるかを10まんボルトで訴えてくる。本当ならもう新天町に着いてなきゃいけないらしい。説明する気が失せた。

そんなに急いでるなら勝手に行けばいいさ。甲斐のない男だ。カギを渡す。


もし僕がオランダ人なら極小の部類だろう。オランダの国政調査によると、遺伝子組みかえでは無い三代続いたオランダ人男性の平均身長は2メートルらしい。なんのつもりだろうね2メートルって。


学生時代、その話を教えてくれた先輩・伊賀上野さんは大学院でも名うてのウソつきだったので、どこまで本当かは保証できない。多分ウソだろう。でもデカいのは事実だよ。


昔、綺麗なオランダ人と知り合った際に、あの子キレイだと思うんだが君はどう思うかね?と何故か隣に立ってたフランス人に尋ねると「うむ、キレイだ。オランダ人のわりには」と、さもフランス人ぽい毒を吐いていた。ヨーロッパでも指折りの大造りなんだよね。

オランダ人では無い僕の身長は日本人の平均値。ピカチュウ君も同じくらい。


だから油断したのかもしれないけれど、僕は身長の割に脚が長い。ピカチュウ君ときたら、またがった瞬間から乗車フォームにかなりの無理が見受けられた。危ういなぁとは思ったものの、なにしろ急いでるらしく、でんこうせっかで走り去ったピカチュウ君。ズキュン。


右のブレーキにクセがあることも、そのクセを理解しないとブレーキング出来ないことも何も教えるヒマが無かったけど、まあ仕方が無い。話の腰を折る方が悪いのだ。

ピカチュウ君のデスクに座ってしばし待つ。ピカチュウ君のSNSアカウントで、僕の写真にイイねしたり、僕のnoteにスキしたり、ちんすこう食べたりしながら帰りを待ったのだけど一向に戻ってこない。


あの自転車で無事に済むとは思えない。たぶん角屋あたりでバランス崩して、平和楼に自転車ごと突っ込んだんだろう。平和楼もかわいそうに。


頭に来て腹も減り、イイねもスキも押しつくしたので「自転車は我が家の駐輪場に停めておけ。そして立ち去れ」とLINEを入れた後、打合せと言う名の飲み会へ向かう。


「沖縄料理を食べながら泡盛を呑みたい。だって僕、ちんすこう食べたんだから」


僕の中の乙女がそんなワガママを言ったら、幹事役のボビー君は本当に沖縄料理屋に連れてってくれた。


ボビー君はつくづく日本人らしいもてなしの心を持っている。話し方はボビー・オロゴンそっくりなのに。


沖縄料理屋なのに延々ストラヴィンスキーがリピートしてる不思議な店だったが美味かったんで何の文句も無い。


途中、ピカチュウ君から「ピィカァ??」とLINEが入ったので、植木鉢の下にでも隠しとけと返信した。カギといえば植木鉢の下が相場だろうに。気のきかないやつめ。


気分よく飲んで、仕事の話も多分きっとした気がするのでまあいい。


家に帰って駐輪場を見る。ちゃんと自転車は戻っていた。ピカチュウ君は指令通り立ち去ったようだけどサドルの上におわびの品を置いて帰っていた。


チキンラーメン。


僕がフェリシティ・ジョーンズやセシリア・メンデスに負けず劣らずチキンラーメンが好きだということを覚えていたのだろう。最後の最後に気がきいてるじゃんピカチュウ君。

振りかえると悪くない一日。




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写真と文:マスダヒロシ

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