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エルコンドルパサー(ウマ娘)のキャラ設定ガバガバ説を検証する

「ウマ娘」が人気である。
ウマ娘達が、レース後のウイニングライブでセンターを目指すという内容だ。身も蓋もない言い方をすれば、Cygamesが作った実在する競走馬を美少女にした育成ゲームである。
しかしながら迫力あるレースシーンや華麗なライブを生み出す美麗なグラフィックは、同社の技術力の高さが伺える。モチーフとなった競走馬のエピソードを盛り込んだ熱いストーリーや、意匠を取り込んだ勝負服のデザインなど、丁寧に作り込まれているのもよくわかる。

だが、なにやら怪しいウマ娘がいるのである。それがエルコンドルパサーだ。まずは公式サイトによるキャラクター紹介を見てみよう。

キャラ紹介png


まず特徴的なのは目の周りを覆うマスクである。他にも以下の設定がある。

覆面(マスク)をかぶっている
マスクは父から譲り受けた
アメリカから日本に来たラテン系
好きなものはプロレス観戦とデスソース(非常に辛いソース) 
趣味はフラメンコギター
「語尾にデース」をつける
日本語、英語、スペイン語が話せる
「マンボ」と名付けたコンドルを飼っている
などなど

だいぶ詰め込みすぎているし、「帰国子女の語尾=デース」という安直さを含めて、雑な印象は否めない。もっとも特徴的なのは「プロレス好き」であり、ゲームにおいても強調されている。とはいえ、このキャラ設定はガバガバではないか?という疑念がある。アニメ版の公式サイトですらキャラ紹介で「本当にアメリカ生まれなの?」と、経歴詐称が疑われる始末である。まず皆さんが一番最初に突っ込む部分を検証してみる。

マスクがマスクじゃない疑惑

まず一番ガバガバなのはマスクである。

エルコンドルパサーの顔

公式設定では「覆面でありマスク」とされている。モチーフである競走馬もメンコと呼ばれる覆面をしているが、顔半分ぐらい覆っている。

メンコ


エルコンドルパサーのマスクは、プロレスラーの父親から譲り受けたマスクである。そもそもプロレスラーのマスクとは、顔全体を覆うものだ。目の周りを覆うだけで「マスクであり覆面だ」と言い張るのはどうなのか?Sa・Ga2 秘宝伝説のふくめんぐらい怪しい。

いくら耳と尻尾以外は人間の女性に近い容姿のウマ娘でも、目しか隠れていなれば、誰なのかバレバレである。人間の女子プロレスラーでもこんな感じである。

スターライトキッド

スターダム所属のスターライト・キッド選手

もしかすると「マスク」ではなく「フェイスペイント」という解釈もある。フェイスペイントをするのは「ヒール」と呼ばれる反則もいとわない悪役レスラーであり、ウマ娘と正々堂々の熱いレースを繰り広げる彼女にはふさわしくない。

アジャコング

フェイスペイントの例:アジャコング選手

では「目だけ覆うマスクの女子レスラー」は実在するのか?その答えが意外なところから出てくる。
ストリートファイターシリーズに登場する「レインボー・ミカ」である。

レインボーミカ

これはエルコンドルパサーと同型のマスクだ。ここで前例は確認できるが、「正体を隠す」という本来の目的を果たせていない点に疑問が残る。さらに調べると、このマスクにはあるモデルが存在していた。

ヤッターマン

ヤッターマン2号である。キャラクターデザイナーが、アニメ「ヤッターマン」を参考にしたと語っている。そして彼女の正体は上成愛(かみなり あい / アイちゃん)だが、マスクのおかげでバレていない。つまりヤッターマンの世界では目の周りだけで人物を特定するので、その部分を隠せば正体がわからなくなるのだ。
ウマ娘の世界でも同様に、目の周り"だけ"でどのウマ娘なのかを認識するので、エルコンドルパサーのマスクも効果があるのだろう(可能性としては虹彩認証かもしれない)。現実世界では最近になってマスクのままでもiPhoneのFaceIDで顔認証できるようになったが、ウマ娘の世界では既に目の周り"だけ"で個人を認識できるのだ。実はテクノロジーが進んだ世界観だったという、意外な結果に驚いている。

父親は"あの"マスクマン疑惑?

エルコンドルパサーの父親はプロレスラー(マスクマン)であり、チャンピオンだと公式設定にある。では、一体どんなプロレスラーなのかを推察してみる。まずわかるのは、飛び技が得意という点だ。彼女は父親の影響でプロレス好きであり、特に好きなのは飛び技である。ゲーム中でも「春風に乗ってボディプレスをしたい」「プロレス中継で空中技がブエノ(良い)だ」などの発言がある。こうした背景とゲーム中の発言などから、飛び技を多用するルチャドール(メキシコのプロレスラー)であることは確実である。つまりエルコンドルパサーの父親がメキシコと関連する可能性が高い

もちろん彼女はアメリカ出身なので、父親もアメリカ人と考えるのが自然だろう。それでは、世界最大のプロレス団体があるアメリカではなく、メキシコを選ぶ理由を考えにくい。メキシコのプロレス(ルチャ・リブレ)は勧善懲悪の娯楽要素が強く、メキシコ人レスラー(テクニコと呼ばれる善玉)が悪役(ルードと呼ばれてアメリカ人を含む外国人はこちら)を倒すのが基本である。アメリカ人レスラーがリングに上がれば、星条旗を振りかざして「トランプ最高!」と叫び、観客は罵声を浴びせるのがお約束だ。
よって、ルチャ・リブレにおけるチャンピオンはメキシコ人が大前提となり、アメリカ人のチャンピオンは考えられない(もっとも福岡で試合をすると地元である獣神サンダー・ライガー選手がチャンピオンになったりするので、結構テキトーではある)。
しかし父親がメキシコにいたままでは、アメリカ出身のエルコンドルパサーと整合性がつかない。考えられる展開としてはこうなる。

メキシコでプロレスデビュー → アメリカの団体に移籍 → チャンピオンになる → エルコンドルパサーが産まれる という流れである。

チャンピオンになった時期や場所は明確にされていないが、一定のキャリアや人気がなければチャンピオンになれない。よって、アメリカ時代にチャンピオンになった可能性が高いだろう。
そして現実にルチャ・リブレ(メキシコのプロレス)出身でアメリカの世界のプロレス団体(WWE)でチャンピオンとなったレスラーが、たった一人実在するのだ。

ミステリオ

それがレイ・ミステリオ選手である。

168cmという小柄な体格ながら、WWE世界ヘビー級王座 を2回戴冠した「小さな巨人」であり、ダイビングボディプレスなどの飛び技はもちろん、ロープの間をくぐり抜けて相手の顔面を蹴りつける「619」という華麗な技もある。エルコンドルパサーに好きな数字を聞いたら「619(シックスワンナイン)デース」と答えるだろうし、「1枠6枠9枠に入ると調子が良くなる」というスキルがないのは、まったくもって謎である(レイ・ミステリオ選手がカリフォルニア生まれのメキシコ系アメリカ人であることはスルーしつつ)

また、レイ・ミステリオ選手はWWE公演での来日(2012年)や新日本プロレスへの参戦(2018年)もあるので、日本とのつながりもある。そしてメキシコと日本におけるプロレスの関係性は、言うまでもなく長く深い
仮面の貴公子ミルマスカラスの活躍は言うに及ばず、新日本プロレスは毎年「ファンタスティカ・マニア」という興行でメキシコのCMLLから選手を招聘しており、元井美貴さんと仲良しのルチャ・リブレに詳しいミキティコさんがいる。武者修行で日本人選手がメキシコに行くと、神様(風神・雷神)になったり、妖怪(カマイタチ)になったり、「怖そうだから」という理由で名前+サンの雑なリングネームになったりする。そして帰国すると、クネクネしたり、制御不能になったりする歴史がある。つまりメキシコという土地は、人にキャラ付けをさせる"何か"があるのだ
こうしてエルコンドルパサーはルチャ・リブレ出身の父親の影響から日本に興味を持ち、帰国子女キャラを引っさげてトレセン学園に入学したのだ。アメリカ出身でありながら日本で走ることを選んだ理由には、偉大なる父親の背中があったのである。

本当にプロレスが好きなのか疑惑

ところでエルコンドルパサーは、本当にプロレスが好きなのだろうか?ゲーム中のセリフなどからテレビで放送された試合はチェックしているが、それ以外にもプロレス観戦に関する情報を掘り下げてみる。
まずわかるのは、育成で1月にトレーナーと一緒にプロレス興行に行く点である。わざわざチケットをトレーナーの分まで用意するあたり、沼に沈める気かもしれない。注目すべきは「若きライオン達の抗争」という発言である。年明けのプロレス興行は複数団体で行われるが、「若きライオン」から新日本プロレスの1.4(イッテンヨン)東京ドーム大会とわかる。これは同団体の新人選手が「ヤングライオン」と呼ばれるからだ(ちなみに「ヤングライオン」の商標登録は、なぜかトヨタ自動車)。
ここ数年の東京ドーム大会で新人選手が登場するのは、「ニュージャパンランボー」という時間差で多数の選手が参戦するバトルロイヤルな試合形式である。これは人数の都合で試合に出場できない選手達によるファンサービス的な面もあり、他団体では0試合やダーク・マッチとも呼ばれる。ウマ娘としてチャンピオンにこだわるのが、敢えて前座的な試合や新人選手に注目するあたりは、なかなかにシブい。
一方、新日本プロレスはチェックしつつ、他団体に関する言及は見られない。日本にも多くのプロレス団体があり、アメリカやメキシコも同様である。フランス語を学んで凱旋門賞を狙うので、お隣のイギリスにおけるプロレス事情も認識しているだろう。本当は他団体の興行に足を運んだり、動画サイトや週刊プロレス(週プロ)をチェックしたり、アメリカやメキシコやイギリスの動向も把握しているかもしれない。だが、プロレス沼に沈めたいトレーナーはプロレスへの興味が薄いため、大量の情報を与えると混乱してしまう。そこで日本の最大手である新日本プロレスに限定して、話を合わせているのだろう。
普段は空気を読まず勢いのある性格なのに、プロレスについてきちんと配慮できるのは、次の疑惑があるからだ。

エルコンドルパサーよりもプロレスが好きなウマ娘がいる疑惑

エルコンドルパサーが、プロレス好きという点は証明された(少なくとも新日本プロレスは好き)。だがあくまで「プロレス観戦」であって、実際に体を動かしてプロレスをするわけではない。この疑惑には、数多くのプロレスを繰り出すウマ娘の存在があるのだ。次の画像を見てほしい。

メジロマックイーンの一覧

なんとメジロマックイーンが、プロレス技を仕掛けているのだ!これはアニメ1期の場面であり、OVAの14話で見せたロメロ・スペシャルはメキシコ発祥の技なので、ルチャ・リブレもおさえている。
対してエルコンドルパサーはアニメにおいてプロレスに関する描写はなく、かろうじて4コマ漫画「うまよん」で足四の字固めを使うだけだ。しかも同技の使い手といえばザ・デストロイヤー選手である。同選手はアメリカ出身であり、そもそもエルコンドルパサーが好きな飛び技ではなく関節技だ。これではメジロマックイーンの方が、プロレス好きと言えるだろう。

意外な事実が発覚したが、まずはメジロマックイーンがプロレスに興味を持った背景を探ってみたい。プロフィールを見ると「名門メジロ家のお嬢様」「体型を維持するためダイエット」というキャラである。リングで大暴れして、体を大きくするため無理にでもたくさん食べるプロレスラーとは真逆でしかない。しかし、彼女について掘り下げていくと、意外な一面が見てくる。野球が好きなのだ。
ゲームでも野球観戦をしたり、「かっとばせー」という寝言で起きたり、「ユタカ」を応援している。この「ユタカ」とは武豊騎手(阪神ファン)なのか、阪神の和田豊選手(4コマで縦縞ユニフォームを着用)だろうか。可能性としては江本豊選手、高木豊選手、大野豊選手もありうる。盗塁王の福本豊選手は、ステイヤー(長距離が得意)の彼女とは異なるイメージだが、野球選手としては認識しているだろう。
ちなみに現実における野球とプロレスの繋がりだが、元阪神の赤星選手はプロレス好きで知られており、ゲスト解説に呼ばれたこともある。また、プロレスラーの棚橋弘至選手は野球選手を目指しており、内藤哲也選手が広島カープの始球式に参加したり、同じくカープの九里亜蓮選手は登場曲を内藤哲也選手の「STARDUST」にしている。そして4代目タイガーマスク選手は巨人ファンとして原監督にマスクをプレゼントしており、完全に自分の立場を忘れている(かろうじてマスクの色を巨人仕様にしていたが)。それでもメジロマックイーンの「ユタカ」つながりで、プロレスラーの吉江豊や豊登のファンという線は考えにくい。

話を戻すと、メジロマックイーンはウマ娘として競技一筋な性格かと思いきや、意外と他の趣味もあるのだ。しかし、これだけでは野球とプロレスにはつながりがないので、他のウマ娘におけるプロレス要素を探ってみる。
まず思い浮かぶのはゴールドシップが、G1レースで勝利するとドロップキックをお見舞いする点だ。また、アニメでもトウカイテイオーにコブラツイストをかけており、プロレスに対して一定の知識がある(現在ではほぼ使われないクラシカルな技を選ぶあたり、昭和プロレスファンかもしれない)。また、ウマ娘として長身(170cm)の彼女がドロップキックをするのは、自分をどう魅せるかを考えた結果だろう。ドロップキックはシンプルな技だが、身長191cm(公称)のオカダカズチカ選手もドロップキックの使い手である。オカダ選手が繰り出す打点が高く回転するドロップキックは、非常に見栄えが良い(余談だがエルコンドルパサーがレース勝利時に両手を広げるのははオカダ選手のレインメーカーポーズがモデル)。ウマ娘の脚力ならば、さぞかし派手なドロップキックだろう(ゲームではトレーナー目線でしか見られないが)。同じく長身のビワハヤヒデ(171cm)が髪を振り乱したり、タイキシャトル(172cm)が色々揺らながら、見栄えのよろしいドロップキックを魅せてくれそうだ。飛翔天女と呼ばれた豊田真奈美のように、飛翔天マと呼ばれるかもしれない。

またまた話を戻すと、メジロマックイーンとの絡みも多いゴールドシップがプロレスを教えた可能性もある。一緒に映画を見に行くイベントもあるので、プロレス観戦も誘えば来るかもしれないが、根拠としては弱い。
さらに視点を広げてみると、競走馬のメジロマックイーンにヒントがあった。メジロマックイーンは1987年産まれ、デビューは1990年、引退が1993年となる。実はこの時期にプロレスと大きく関係する、あの作品が存在するのだ。

キン肉マンの表紙

キン肉マンである!
漫画のキン肉マンは1980年~1988年に連載されて、アニメが放送されたのは1983年~1986年となる。これはメジロマックイーンが生まれる前後の話だ。
だが、最初にアニメ化されなかった「キン肉星王位争奪編」は1991~92年に放映されており、これはメジロマックイーン(競走馬)の現役時代と完全一致する。
メジロマックイーン(競走馬)がライバル達と走り、怪我からの復帰を願う中で、キン肉マンもキン肉星の王座を目指して運命の五王子と戦っていたのだ。再度メジロマックイーンが使用した技を見てみよう。

技一覧

実は彼女が使う技のはプロレス技ではなく、キン肉マンの技なのだ
例外としてスピニング・トーホールドは実在するプロレスラーであるテリー・ファンクの持ち技だが、使い手であるテリーマンはまんま彼をモチーフにしているので気にしてはいけない。つまりメジロマックイーンは、プロレスではなくキン肉マンが好きなのだ。
前述の通り、メジロマックイーンは野球が好きなので、他の分野への興味関心がある。そして野球とプロレスは意外とつながりがあり、プロレスをモチーフとした漫画がキン肉マンなのは疑いのない事実である。
さらに興味深いのは、他のウマ娘とのタッグ技もこなしている点だ。ゴールドシップとの技は「クロスボンバー」だが、これは相手の性格を考慮した選択だとわかる。仮にゴールドシップに複雑な指示を出しても、従うとは限らない。そこでメジロマックイーンは腕をぶつけるだけのラリアットで成立するクロスボンバーを選び、うまくコントロールしたのだ。
気になるのは、ダイワスカーレットが関節技(腕ひしぎ十字固め)を仕掛けている点だ。ダイワスカーレットがキン肉マンを知っているかは定かでないが、彼女の性格にヒントがある。一番にこだわり、他のウマ娘の動向もチェックしている(薬品でプール掃除をしたり、図書館で難しい本を読むアグネスタキオンに感心するイベントなど)。そして一番を目指す上では、ウオッカだけでなくすべてのウマ娘がライバルであり、同じチームであるメジロマックイーンは身近な存在として常にチェックするだろう。メジロマックイーンがアニメ1期7話時点で格闘技(パロ・スペシャル)の使い手だとわかり、彼女なりに調べた結果、翌週に腕ひしぎ十字固めを習得したのだろう(彼女はキン肉マンを知らず一般的な格闘技として認識したと推察する)。
あえてダイワスカーレットが腕ひしぎ十字固めというプロレス的な魅せ技ではなく、総合格闘技の技を選んだのは、一番という結果にこだわるからだ。見た目よりも実戦で使えることを重視すれば、しゃがめば避けられるドロップキックやラリアットよりも、軍隊の訓練でも使われる腕十字固めを選ぶのは当然である

引き続きメジロマックイーンがキン肉マンに興味を持ったきっかけについて、競走馬の活躍時期とアニメの放映時期というメタな側面以外では何があるだろうか。
まずは考えられるのは、エルコンドルパサーがメジロマックイーンにキン肉マンを勧めた可能性である。エルコンドルパサーはメジロマックイーン達とは別チームだが、同期でありライバルのスペシャルウィークやサイレンススズカの絡みも多く、メジロマックイーンとも面識はあるだろう。そこでキン肉マンを紹介する流れになったとも考えられる。しかし、アニメ2期において気になる場面がある。

キン肉バスター 枠付き

アニメ2期ではエルコンドルパサーやメジロマックイーンとは別チーム(カノープス)が登場する。なんとここで、同チームのイクノディクタスがキン肉バスターをかけているのだ。これはトウカイテイオーにちょっかいをだすツインターボを連れ戻す場面だが、明らかに不自然である。連れ帰るならジャージのえり首を掴んで引きずればいいし、抱えるなら肩にお腹をのせてもいい。メジロマックイーンやエルコンドルパサーとの絡みがほぼないキャラでも、キン肉マンの技を認知している点が大きい

ここで競走馬のイクノディクタスを調べてみると、2着になった宝塚記念では1着がメジロマックイーンである。当然ライバルとして目をつけるだろうし、メジロマックイーンがキン肉マン好きとなれば研究するのも当然である。そこで打倒メジロマックイーンの切り札として、キン肉バスターを習得したと考えられる。もちろんウマ娘の競技でキン肉バスターは役に立たないが、イクノディクタスは見た目(メガネ)の割に性格がポンコツなので気付かなかったのかもしれない。
追記:アニメ版においてメジロマックイーンとイクノディクタスは同室という設定である。マックイーンが部屋に持ち込んだキン肉マンの単行本や円盤(DVD)や動画視聴などによって、影響された可能性もある。

ここまでで、アニメ版ではキン肉マンを知るウマ娘が複数存在することがわかった。その理由として、大胆な仮説だがウマ娘の世界にはキン肉マンの超人が存在する可能性も否定できない。人間とウマ娘が共存するように、超人も存在していれば、ウマ娘がキン肉マンの技を知っていても不思議はないからだ。もっともこの説はかなり無理があるので、アニメ版とゲーム版はパラレルワールドである点も条件となる。

もう一点注目すべきなのは、ウマ娘に対して技をかけている点である。前述のメジロマックイーンを含めて、技をかける対象は人間であるトレーナーである。対してイクノディクタスはウマ娘のツインターボにかけている。同じチームという親しい関係であり、ツインターボが口で言っても聞かない性格なのでお仕置き的な意味合いもあるが、怪我に繋がる可能性も否定できない。競走馬としてのイクノディクタスが「鉄の女」と呼ばれて、故障なく数多くのレースに出場したので、自分の頑丈さを基準にしたかもしれない。
ここでエルコンドルパサーがプロレス技をかけない理由が見えてくる。彼女は、プロレスを愛するがゆえに技をかけないのだ。
父親がプロレスラーであれば、子供の頃にプロレスごっこに興じるのは自然の流れである。そこで相手に怪我をさせたり、自身が怪我をする場面もあるだろう。大昔に仮面ライダーのライダーキックを真似た子供が怪我をして社会問題になったのと同じく、プロレスごっこで子供が怪我をすればイメージダウンは免れない。もしもそんな場面があれば、彼女は父親からこっぴどく怒られるだろう。
「プロレスラーたるもの、リングを降りれば紳士たれ」というのは、ジャイアント馬場さんの教えである。「インドの狂虎」と恐れられた悪役レスラーであるタイガー・ジェット・シンによる良い人エピソードは、枚挙にいとまがない。そして父親が活躍したアメリカでも、対戦相手に怪我をさせればストーリーラインの変更を余儀なくされたり、契約上のペナルティも起こるだろう。怪我をするレスラーは二流だが、怪我をさせるレスラーは三流なのだ。
こうした背景もあって、エルコンドルパサーは父親から言いつけられた「リングの下では技をかけない」という教えを守っているのだ。ファン感謝祭においても、サイレンスズカとの決着をプロレスで求めるのは、そのためだ(最終的には相撲対決になったが)。
なお、4コマでスペシャルウィークに足4の字固めをかけた件は、ひっくり返せば逆転できるし、加減もできるのでギリOKとしたい(スペシャルウィークが回避方法を知らなければ気の毒だが)。

結論としては、「メジロマックイーンはプロレスではなくキン肉マンが好き」であり、「エルコンドルパサーがあえてプロレスをかけないのはプロレスを愛するがゆえ」となる。
それにしても「良家」とされるメジロ家だが、メジロマックイーン以外はお嬢様っぽくないし、一番お嬢様っぽい見た目でも実は一番イメージから遠いのはどうなのか。ともあれ「エルコンドルパサーのプロレス好き」という独自性は守られているのだ。こうしてエルコンドルパサーのキャラ設定ガバガバ疑惑が晴れたわけで、結論が見えてきた。

ウマ娘はプロレスファンに対するリトマス試験紙

「ここまでエルコンドルパサーのキャラ設定はガバガバではないか?」という疑惑を検証したが、一定の根拠と裏付けがあると判明した。本文を読めば分かるとおり、プロレスとは考察なのだ。プロレスにおける疑問や背景や動向について、ファンは独自に推測し、考えて、想像しながら、行間を埋めるべく、ああでもないこうでもないと議論する。もちろん今回の検証について納得できない部分があるだろうが、それはそれでOKなのだ。あくまで私個人の考察であって、そこに正解も間違いもない

アニメでキン肉マンの技が出てくるのは、スタッフのお遊び要素であって深い意味はないと考えるもアリだ。おふざけとしては、トウカイテイオーが他のウマ娘を調査する流れで、探偵物語の松田優作ルックを着こなす場面もある(探偵物語は1979年放送のドラマでトウカイテイオーは1988年産まれ、似た名前の競走馬「ダイユウサク」は実在するが本来は「ダイコウサク」だった経緯があり、松田優作とVシネマの帝王である白竜が揉めたことはあるが「Vシネマの帝王」として哀川翔、竹内力、小沢仁志の立場はどうなるのかという疑問がある。あえてトウカイテイオーと探偵要素を結びつけるなら、名探偵コナンで「ゴウ」「カイ」「テイ」「オウ」という猫が登場する。よって、麻酔針や蝶ネクタイ型変声マイクを使うシーンが必要だろう)。
アニメ版はスタッフのおふざけ説も可能性としてゼロではないが、私としては「ウマ娘とキン肉マンは同じ世界観説」を提唱しており、幼少期のメジロマックイーンが国立競技場で行われたキン肉マンVSウォーズマン戦に感銘を受けてパロ・スペシャルを使いこなしてほしい。語尾に「デース」をつけるのは帰国子女キャラに対する安直なネタではなく、父親がアメリカで試合をしていた頃に知り合った日本人レスラーがインチキ日本語を教えた結果、エルコンドルパサーに影響したのだろう。「コンドルは飛んでいく」はペルー民謡でありメキシコから遠く離れているが、アメリカと日本のみならずフランスの凱旋門賞を目指す彼女にはとっては、その程度の距離は誤差でしかないのだ。

エルコンドルパサーのプロレス好きというキャラ設定はガバガバなのか?それを言ったら、プロレスはもっとガバガバでいい加減である。山田恵一選手がイギリスに渡ってリバプールの風になると、永井豪先生の家で獣神ライガー選手(後の獣神サンダー・ライガー)が誕生する。誰しも「中の人は山田」とわかっているが、リングで戦うライガー選手を声を枯らして応援する。

フィクションであるキン肉マンに至っては、もっと強引でメチャクチャである。なにせ安土城が地面から生えてくるのだ

安土城


そもそも安土城は500年前に焼失しているので歴史的におかしいし、地面に埋まっていたのにピッカピカなのは物理的におかしいし、天守閣にあるリングと中継モニタにおいてはツッコむ気力すらない。それでも読者は、リングで繰り広げられる戦いに歓喜するのだ。

プロレスやキン肉マンのファンが、あれこれツッコむのは反論や粗探しのためではない。考察して、掘り下げ、議論したいのだ。プロレスは市場規模やファンの数に対して、やたらと関連書籍が発売されており、固定ファンによってそこそこ売れている。かつては週刊プロレスも「活字プロレス」と呼ばれて、文字だけでいかに会場の空気を伝えるか腐心して、ファンもそれに応えてきた。内藤哲也選手が毎回東京スポーツの記者をファミレスに呼んで取材させるのは、ファン時代に友人達とファミレスで語り合った頃を忘れたくないからだ。ファン同士では時に意見がぶつかり議論となれど、最終的にはどんな形であれ納得するのである。

大事なのは、プロレスもキン肉マンも「リングで戦う」という大前提を守っていることだ。ウマ娘も同じく、ウマ娘である(耳と尻尾があってレースとウイニングライブをする)という大前提を守れば、それでOKなのである

そもそもウマ娘における「馬は存在しないが、ウマ娘は存在する」という世界観は明らかに無理がある。ウマ娘は全員がレースをするわけでもなく、普通に学生や会社員をしている場合もあるのだ。そしてウマ息子がいないという、生物として根本的な疑問もある。
それらを無視してレースだけを見ても、レース後で疲れているのにウイニングライブをするのは大変だし、センターを競うレースのためだけに全国に競技場があっても、お金を賭けられなければ維持できない。

こうした疑問について、開発元であるCygamesはどう答えるのか?
私個人の願望としては「だってウマ娘だから」と答えてほしい。

ウマ娘における諸々の描写について、フィクションとはいえ疑問を抱く人もいるだろう。ここまで取りあげたキン肉マンでも、「漫画だからってそれはねーよ!」という描写は多々ある。前述の安土城だけでなく、「重いものは軽いものより早く落下する」「地球の自転を反転させると時間が巻き戻る」など、物理法則すら無視している。世界各地で同時に試合をしても時差はないし、銀閣寺の下にもリングがあるし、リモコンのボタンを押せば東京ドームのオーロラビジョンに鳥取砂丘が映る。さらに「リングで技をかけられたキャラがリングの外にいる」という単純な作画ミスさえもある。「ゆで理論」で調べれば、いくらでもおかしな描写がでてくる。

そんなキン肉マンに対して、読者は「だってゆでだから」の一言ですべて納得する。「ゆでたまご先生の漫画はそーゆーもの」という魔法のキーワードだ。ONE PIECEの尾田栄一郎先生もキン肉マンの大ファンだが、その魅力について「今週号が面白ければそれでいい」と語っている。娯楽作品はそれがすべてである。

なによりキン肉マンは、面白いのだ。
もちろんウマ娘も面白いから、そして可愛いから人気なのだ。

冒頭の疑問である、エルコンドルパサーのキャラ設定など些末なことでしかない。そして我々はCygamesに試されているのである。
「プロレスとプロレスをモチーフにしたキン肉マンと同じく、ウマ娘とエルコンドルパサーをどう解釈するのか?」という問いかけに対するリトマス試験紙なのだ。プロレスファンとキン肉マンファンは、エルコンドルパサーというCygamesから送り込まれた刺客を、真正面から受け止めてほしい。

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