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男運の悪い女と女運のいい男のお話

世にいる男女の組み合わせはいろいろあるけれど、男運の悪い女はたいがい世話焼きで母性が強い。

そして女運のいい男はたいがいがダメ男だ。

うちの両親がまさにこれで、母はなぜ父と結婚したのかと、不思議で仕方なかった。祖母がいうには成績優秀、学校でも1番の美人と言われ、芸能界にスカウトされたこともあるという母。

これに対して父は学歴もなく、私がいうのも申し訳ないが、典型的なダメ男であった。甘えん坊で見栄っ張り。短気で子供のような人だった。

一度母にきいたことがある。「なんでお父さんと結婚したの?」

「だって。。。結婚してくれないと死ぬっていうから。。。」そんな風に答える母は少しだけ、嬉しそうな顔をした。

2人の恋人時代の写真はまるでジャガイモみたいなアタマで、えなりかずきの子役時代みたいな顔をした男が美女の隣で満面の笑みをうかべて写っている。

よっぽど母が大好きだったのだろう。

それが写真からありありと伝わってくる。

そんな父でも、会社を興して財をなしたが、もとは母のアイデアで始めた事業だった。母は自身の会社でエステをはじめ、その時代にはまだ脱毛なんてあまりなかった時代。お客さんが押し寄せて、儲かって儲かってしかたなかったそうだ。

自分の会社より、母の会社が売り上げを伸ばすと、面白くなかった父は、女が仕事をするなんて、子供のためによくない。子供が小さいときは母親が家にいるべきだと、半ば強制的に仕事をやめさせた。

その後、バブルがはじけたり、株で大損害をし、ウン億円という借金をつくって父は逃げた。私の貯金も、「必ず倍にして返すから。」なんて言って、ある日突然姿を消した。なんつー父親だろう。

今まで高級車に乗り、運転手さんもいて、毎日ゴルフ三昧だった母は、文句一つ言うこともなく、お弁当屋さんで働き始めた。

自分にそんな日が来るなんて、きっと夢にも思わなかっただろう。

人生は何が起きるか本当にわからない。

私はというと、たいした悲壮感もなかった。もともと、父は物心ついた時から、週に一、二回しか帰ってこなかったし、どこの家の父親もそうだと思っていたからだ。

父親というものは、基本毎日帰ってくるものだということは、ずっと大人になってから知った。今思うと、母は父が帰る日は必ず父の好物の天ぷらやちらし寿司を作って、ウキウキした様子で待っていたものだ。

父が失踪したあと、たまによく無言電話がかかってきた。

あまりにしつこいので、「誰!?お父さんでしょ!?」というと、「あのー美代子さん(母の名)はいますか?」と、まるで好きな女の子の家に電話をかけてきた中学生のような父の声がした。

「なんなの!二度かけてこないでよ!」私は言いたいだけ文句を言うと、電話をガチャリと切った。勝手ばかりして母を振り回した父が許せなかった。

内心私は父が母と別れてくれてホッとしていたところがあった。それは、母が陰ながら、泣いているところを数回見たことがあったから。

それでも、そんなどうしようもない父のことを、母は愛していたということはよくわかっていた。

母は電話が来ると気になっている様子だったが、それきり、電話は二度とかかってくることはなかった。

それから父の消息はぱったりと途絶えた。

続く

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