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デッサンを学んで良かったこと

わたしは美大志望でした。実技試験のための基礎学習のひとつとして「デッサン」を学んだことが今のイラストレーターの仕事の基礎になっています。

現役のイラストレーターやデザイナーの方の中にも、デッサンを専門的に学んだことがないという方もたくさんいると思います。わたしは今イラスト・デザイン制作をする上で、デッサンの経験が基礎になっていると思っているので、デッサンを学んで良かったことついて、個人的にまとめてみます。


表現するために考える思考回路ができる

絵を描くことというものは、雑な言い方をすると「気分でなんとなく描くもの」だと思っていました。それほど、学ぶ前から気楽に絵を楽しんでいたということでもあるのですが、モチーフ(対象物)の描き方を最初に教わったときは衝撃を受けました。

「絵なのにこんなに計算するの?!」と、おなじみのあのポーズで、腕を伸ばして持った鉛筆越しに、比率や角度、画面への収めかたを教わりました。

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重要なのは、デッサンをする対象物がどうやって成り立っているかを比率などのデータで理解することです。特に建築やプロダクト、彫刻だと顕著だと思うのですが、物理的に成り立たない状態を描いてしまうと、対象物が同じ状態で存在できません。

それは視覚表現できているとは言えないので「目の前にある対象物(例:りんご)が乗っている床は本当に水平に描けているか?」「りんごの縦横の比率は一目でりんごだとわかるように描けているか?」「りんごの曲面はりんごらしい曲面を表現できているか?」といったことをたくさん考えます。

描くことは考えることだと思います。ただ手を動かして画面に何かを描くのではなく、描きたいものの「それらしさ」がどこにあるのかを見つける訓練・表現をする訓練になります。

「見る」ではなく「観る」目を養う

最近の #観察スケッチ ブームの流れを見ていてもますます実感するのですが、観察をはじめると「目の使い方」が変わると思います。例えば電車に座っていて向かいのサラリーマンが目に入ったときも、色々なことが気になるようになってきます。「スーツのしわがたくさん入っているけどスーツが大きいのかな、それとも素材が薄めなのかな」「脚の間に傘を挟んで寝ているけど主にどこで支えているのかな」

受験生時代は無印の一番安い無地のノートを毎日持ち歩いて、電車で1日に5人以上クロッキー(素早く対象の形をおさえる描き方)することを日課にしていました。(勇気がないので寝ている人しか描けませんでしたが…あと描いていると隣の人によく話しかけられます笑)

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雑誌を見てクロッキーすることもよくありました。写真から絵に起こすのは簡単そうに思えて、立体感・距離感が分からないので違う難しさもあります。

言葉との関係性が育つ

生徒たちで集まってデッサンをして、全員で絵を並べて先生たちに講評をしてもらいます。そのときに言われる言葉の意味が、最初はちっともわかりませんでした。

「床に落ちた影が沼みたいでこのまま沈んでいきそう」「台からこの立方体が浮いてる感じがする」「空間が描けてないから、距離感が分からない」

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抽象的なコメントが多くて「どういうこと?」と首を傾げつつメモをしていたのですが、少しずつデッサンが上達していくにしたがって「あれはあんな風に言うしかなかったんだな」と理解ができるようになっていきました。先生のコメントは、美術に関わる人たちなりの言語化だったのだと思います。それでも、なんとかわかりやすく伝えようとしていました。

わたしたち生徒も、目で観て考えながらも、先生に伝えるときなどは「この濃淡で質感を出そうと思ったんですけどうまくいかなくて」という風に、言語で伝えてアドバイスをもらいます。どうしても抽象的な言葉になってしまうこともあるのですが、描いているものについて言葉でやりとりする訓練は後々とても大事なものになってきています。

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↑全体の雰囲気を捉えるのが得意だったようで、よく「描き込みは甘いけど似てる」と言われるので好きだった石膏像デッサン

とはいえ美大には受からなかったのですが

ここまで書いておいてなんなのですが、わたしは美大にはどこも受からず、一浪の末に実技試験のない美術系専門学校に入学しました。専門学校でもたくさんのことを学びました。今描いているのは全く写実的なイラストではありませんが、上記に綴ったことが血肉になっていると思っています。

↓わたしの普段のイラストはこんな感じですが

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↓人の絵の特徴を観察すれば、全然違うタッチの絵も描けます。

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(ジョジョ・ボールペン一発書き)

他人の表現に限らず、自分の表現についてもどこがどういった効果を生み出しているか考えるのがおもしろいですし、次の制作のヒントになったりもします。

絵に関して聞かれること

ときどき「絵心がないと絵は描けないですよね」と言われることがありますが、絵心というものはあるのでしょうか?あるのかもしれないですが、わたしにはよく実感できません。絵心=情緒的に絵を描けること、だとすると、絵を描くことに関して情緒的な感覚があったほうが有利な面もあるかもしれませんが、すべての場で情緒的な表現だけが求められるわけではありません。文章も一緒ですよね。なので、絵心がなくても絵は描けると思っています。

「専門的な勉強をしないとイラストレーターにはなれないですよね」とも聞かれることがあるんですが、後からでも学ぶことができると思っています。とはいえわたしの受験生活でも「1日6時間かけて1枚のデッサンを描き、行き帰りもクロッキーをし、それを毎日続ける」という状態ではあったので、美大に進んだ人はもっとたくさん絵を描いていると思います。なので、独自の方法で自分の表現を磨くことは必要なのかなあと思います。専門的な勉強が何かを保証してくれるものでもないですし、独学で活躍しているイラストレーターさんもたくさんいます。

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そんなわけで、こんなにふにゃふにゃな絵(花粉症がつらいダースベイダー)を描いているわたしですが、自分の大きなベースとしてのデッサンについて語ってみました!何か参考になれば幸いですー!

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