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世界とわたしを分けたもの

コンビニで買ったジャスミン茶を飲んでいた、高1でのバイト先。わたしにとって最初のバイトだったけれど、何をやってもうまくいかず、いつもびくびくして出勤していた。バックルームでの休憩は一人になれてほっとする。

とはいえモノを取りに誰かが入ってきたりすることもある場所。ふと、女性のアルバイトが入ってきた。わたしを見て驚いた顔をする。

「ますぶちさん、すっごい匂いのもの飲んでるね」
「えっ、ただのジャスミン茶ですけど」
「ちょっと飲ませて」

先輩は、一口飲むと、わ〜やっぱりすごい味〜!!と騒いだ。確かアルバイトたちの中心みたいな人だったと思う。なになに?と集まってきた他のアルバイトの人たちも、わたしのペットボトルを回し飲みしては「うえ〜!」だとか「匂いが無理だわ〜」なんて言う。

そうして、仕事ができず馴染めず変わり者だったわたしは、変わった味覚も持っているということにされてしまった。

今となれば大人の広い世界、ジャスミン茶が好きな人はきっといくらでもいるのだけど。

たったそれだけのこと。
たったそれだけのことなのだけど、あの時わたしは世界中でひとりぼっちのように感じた。

悲しいと感じると同時に、すっきりもした。なぜか世界になじめないとぼんやり思っていたことを、たった150円ちょっとのジャスミン茶は鮮やかに突きつけてくれたのだ。

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コミュニティが変わると前に居た人たちとは連絡をとるのがこわくなる。そのバイト先を辞めてからもわたしは連絡をしなかった。クッキリ世界とわたしが分かれて見えるようになったのは、あの夏の日からかもしれない。

バラバラになった心に何か効くかもと、最近ジャスミン茶を飲んでいる。

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