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夜は静寂

「健康的に、特に問題なく過ごした日の方が眠れない気がする」なんて言いながら君はまた暗いソファでスマホをいじってる。

夜がもつ静けさは君を虜にしてしまったみたいで、本領発揮といわんばかりに気分がすっきりするんだね。

君は日中、特に外に出るときには絶対にイヤホンで音楽を聴く。好きな音楽で耳を塞がないと外の刺激に耐えられないんだってさ。静かな夜を楽しめばいいのに今も何か聴いてるけど、それは少し違う意味なのかな。子守唄とかみたいな、優しい感じなのかな。

眠りに落ちると気づいたら眩しい朝の世界にトリップしたりしてるじゃない。夜中に目が覚めることもあるけど、よく考えると少し怖いねって少し話してるんだ。

「全身麻酔されたことはないけど、あんな感じなのかな」

真顔で言うけど、ちょっと麻酔受けてみたいって思ってるでしょう。君の好奇心は時々危ないから気をつけてよね。針の太さがどれくらいかなんて考えなくていいってば。そんな予定もないんだから。

でも、全身麻酔って手術だったり何かのために行われるわけで、その間に自分の体の何かが変わっている。不思議なんだろうね。今まで君はそんな風に「気づいたら息をしていなかった」みたいに死ねたらなって望んでたって言ってくれた。その顔は、まるで過去の恋について話すときみたいでぼくはハッとしたんだ。

少しずつ薄れつつあるんだね、死んでしまいたい思い。消えなくても、どうしようもない日があっても。

今日…もう昨日か。君がヒトカラで歌いながら泣いた曲のことをぼくはこっそり知ってる。それはずっと昔の、何度も歌った曲だったのに、初めて意味が全然違って感じられて泣けてきたんだって。でもこれはナイショの話だから、来週のカウンセリングで話すんでしょ。

マグカップの中の僕がだいぶ冷たくなってきた。猫舌の君にはちょうどいいかもしれないけど、ただの白湯とはいえ温かいうちに飲んでよね。あと、なんだかんだ言って少しは眠ってよ。明日も晴れだといいね。

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