悩みを転がして一緒に遊ぼうよ
困ったことは何でも親に話す。そんな家は少し珍しかったようで、よく友達に驚かれた。
1番の相談相手は母。あれこれ悩みを話すと、母はよくこう言う。
「『若い頃の苦労は買ってでもしろ』っていうくらいだから、もう少し頑張ってみたら?」
この言葉は、受け取るのがいつも難しい。
どれだけ苦労を買ったらいいのか分からなかったし、じゅうぶん苦労していると感じる自分が甘いのかな、と胸がざわざわしてしまう。
社会人になり仕事に行くのがつらかったとき、母はこうも言っていた。
「1週間頑張らないといけないと思うからつらいのよ。今日だけ行けばいいと思ったら楽になるでしょ?」
なるほどと思って実践しようとしたけれど、そのときはもう「今日だけ」も頑張れなくなっていて、毎日ヘトヘトだった。
母は、何か問題があると解決しないではいられない人だ。
命を助ける仕事をしていることも関係しているのだろう。たくさん勉強して、いつも前向きにいられるように自分の体調管理も欠かさない。そんな姿をすごいと思って憧れながら、わたしはいつもなぜか寂しかった。
その寂しさの出どころが、今やっと少し分かる。
アドバイスも、たくさん貸してくれた本も、どれもありがたかった。心配してくれているのも感じた。でも悩みを母に話したのは、問題を解決して欲しいからじゃなかった。
ただ母に一緒に悩んで欲しかった。いつも立派な母が自分のためにオロオロしてくれる姿を見たことがない。母が立派すぎて不安だった。
悩みを悩みのまま、2人で話す部屋にビー玉のように転がす。解決してくれなくてもいい。ただその悩みで一緒に遊びたい。
だから、いつものようにテキパキと箱にしまって片付けないで欲しいんだよ。
立派な母親じゃなくていい。うろたえてくれていい、悩んでくれていい。その方が嬉しい。
我ながら、わがままでぜいたくな考えだと思う。母をモヤモヤさせてしまうかもしれない。でも、それも全部、一緒に抱えて欲しいんだ。
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今回は母との話でした。以前、同じように母について書いた文章もよかったらあわせてどうぞ(^ω^)
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