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【光る君へ】平安時代の陰陽師=現代のシステムエンジニア説を唱えてみる|大河ドラマ雑感

今年の大河ドラマ「光る君へ」を毎週楽しみに見ています。

大きな騒乱もない平安文化が花開いた時代が舞台という制作発表のニュースを見た時は、ドラマとして1年持つのかな、とぼんやり思ったものですが、そこはプロの仕事。

毎週視聴後はSNSで他の人の考察を見たり、源氏物語や大鏡、小右記など当時の資料を調べて、史実と脚色のバランスを楽しんでみたりと、制作陣の術中にまんまとハマっています。

ところでドラマ内において主人公の紫式部や藤原道長は別として、個人的に注目している登場人物に陰陽師・安倍晴明がいます。

本作ではユースケサンタマリアさんが演じられています。


従来の陰陽師像と似ても似つかない「安倍晴明」

自分の中で陰陽師と言えば、野村萬斎さんが主演した映画「陰陽師」での佇まいや、それをモチーフとしてプログラムに取り入れ、フィギュアスケートのオリンピック2連覇を達成した羽生結弦さんの鬼気迫る演技など魔界から人の世を守るヒーローのイメージ。

ところが今回の大河で演じられる安倍晴明はそれらと似ても似つかない。

魔を祓う祈祷などするシーンもあれど、どちらかというとその祈祷を権力者の策謀に利用させたり、あるいは依頼されてもすげなく断ったり、イメージする涼やかなヒーロー像と悉く違う振る舞いに当初は戸惑ったものです。

ところがドラマが進むにつれて、これが段々気になる存在になってきました。

(以下ネタバレを含みます)
例えば先週の権力者・藤原道隆の最期を描いた回(第17回「うつろい」)。
自身の体調悪化は誰かの呪詛によるもので祈祷で打ち払え、と迫る道隆の命を「呪詛ではなく寿命です」(一説には糖尿病で命を落としたと伝わる)とあっさり断る安倍晴明の姿が。

またもやヒーローとは程遠い振る舞いですが、見方を変えれば権力の座から寿命と共に転がり落ちようとする相手を冷徹に損切りしているように取れます。

高いスキルを有する人が時としてそのスキルを用いることなく政治的に振舞う。

これって今でも似たようなことってあるよな、優秀なシステムエンジニアでこんな人いるな、と思い当たると急に親近感が湧いて来ました。


陰陽師の祈祷はシステムエンジニアのコーディングスキルのようなもの?

例えば現代においてシステムエンジニアはコーディングスキルやフレームワーク等に関する知識、ビジネス要件をシステムに取り込む論理的思考などを用いて、素人の自分から見ると魔法のようにも思えるシステムを構築する仕事をされている訳です。

但し、そうしたスキルの高さが必ずしもエンジニアの優秀さを担保する訳ではありません。

むしろ問題解決のための仮説の立て方、キーマンへの質問スキル、関わる組織のパワーバランスへの配慮など、場合によっては政治的なコミュニケーションの中でそのスキルの用い方(或いはあえて用いないも含め)を知っている方が重要だったりします。

「光る君へ」での安倍晴明の姿もまた、星を読み、暦を調べ、祈祷など陰陽師として高いレベルを保ちながら、実際に貴族たちと関わる時はそれを駆け引きに使ったり、あるいは使わずに立ち回ったりコミュニケーションに重きを置いている姿が繰り返し描かれます。

発生した問題を持ち合わせたスキルで解決すると、表面的な解決に留まり、根本的な原因は取り除かれないままということはありがちなことです。

そうしたスキルを発揮するより、権力者たちの間で人間くさく立ち振る舞うことに重きを置く、安倍晴明の姿に現代の組織で奮闘するシステムエンジニアの姿が重なって見えたのでした。


人間くさく立ち振る舞う安倍晴明も物語の伏線なのか?

そのようなどちらかというと人間くさい安倍晴明の振る舞いが、物語の今後にどのように関わって来るのか。

自分にとっての大河視聴の密かな楽しみの1つになっています。

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