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10増10減

次回の衆議院総選挙から、衆議院議員を10人増やして10人減らすことです。……ん? どういうことでしょう。

衆議院議員は、小選挙区制(1選挙区から1人のみ当選)から289人、比例代表制(得票にほぼ比例して政党の議席数が決定)から176人、あわせて465人から構成されています。

そのうち、小選挙区制で選ばれる議員を、10人増やして、10人減らす、ということですが……

つまり、トータルでは議員数の増減はないものの、人口の多い地域の選挙区を10増やして当選する議員を増やす代わりに、人口の少ない地域の選挙区を10減らして当選する議員を減らす、これが10増10減です。

なぜこのようなことをするのでしょう。

それは、定数不均衡、または「一票の格差」の是正のためです。

極端な話をすると、
 有権者10万人から国会議員1人当選
 有権者1万人から国会議員1人当選
これで、国全体の政策や法律、予算を決めるのはおかしいのではないか、ということです(たとえば「安楽死法」を決めよう、ということになったとして、あなたが10万人選挙区の有権者なら、その決定が国民全体の決定として納得できるでしょうか?)。

有権者10万人の選挙区の意見は、単純計算すると有権者1万人の選挙区の10分の1の価値しかありません。これを防ぐためには、選挙区の有権者が同じになるようにする必要があります。

しかし、日本では人口の多い地域の選挙区が少なく、人口の少ない地域の選挙区が多い現状が続いてきました。これを是正するため、10増10減が実施されることになったのです。

具体的には、

定数増(選挙区増) 東京(25→30)、神奈川(18→20)、埼玉(15→16)
、千葉(13→14)、愛知(15→16)

定数減(選挙区減) 宮城(6→5)、福島(5→4)、新潟(6→5)、滋賀(4→3)、和歌山(3→2)、岡山(5→4)、広島(7→6)、山口(4→3)、愛媛(4→3)、長崎(4→3)

となる予定です。

しかし、これには異論も多いです。地方の意見の反映が、これまでより小さくなってしまうように思えるからです。ただでさえ人口減で地方が苦しむ中、地方をないがしろにする政治が続いてしまうのではないか、という懸念も広がっています。

それは、国会議員のなかからもあがっています。細田衆議院議長が「国会議員は月100万くらいしかもらっていない」などと話をして「炎上」しましたが、島根県出身の細田議長は、地方選出議員を減らすより都市部選出議員を増やして格差をなくせばいい、「どうせそのくらいしか国の支出は増えないのだから」という理屈だったわけです。

もっとも、国会議員には、「選挙区が減らされて自分が立候補すらできなくなったらどうしよう」という、強い利害に絡んだ思惑もあります。「国会議員増やしたほうがいいよね」という声が国民から一向に上がらないことも、議員の皆さんには考えてほしいところでしょう。

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