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飲食店のオープントレーニング②/食とまなびのブログ

続きです。
飲食店のオープントレーニング①
https://note.com/masayuki_kudo/n/n0a2b1b51a7fc

前回は一つ目のイメージである、回転のことを書いた。
次にもう一つの波形の流れのイメージである、緊張と緩和、不安と自信の揺れ動きの話。

トレーニング開始からオープン日までの期間をオープントレーニング業務として請け負うわけだが、その期間の中で緊張と緩和、不安と自信の波を意識して作り出すことをしている。

トレーニング初期、みな緊張をしている。
極度の緊張は学習効率が落ちるので、なるべく早い段階で緊張を解いてあげる必要がある。
最初の緊張の理由は単純、初対面だからだ。
人間関係が出来ていないことへの警戒感なので、スタッフ間でのコミュニケーションを増やすことを強制的に作り上げればよい。
具体的には、初日に基礎セミナーを実施して、他のスタッフとの交流が生まれるようなワークを多く入れ込んでおく。そして、途中で必ず休憩時間を作り、自然なコミュニケーションも生まれる環境を作る。

他人への警戒感が無くなると単純なもので、人はすぐ弛緩し、学びへ向かう気持ちが弱くなってしまう人が一定数いる。
従って、二日目には試験を入れる。最初の意図したストレスの設計だ。
理念や行動指針などを丸暗記するというだけのものだが、このストレスで辞めてしまう人も稀にいる。さじ加減が必要となる部分だ。
しかし、試験というのは分かりやすい達成感、成長実感を感じさせる事が出来る。これがさらなる学びへスムーズに向かわせるコツとなる。
毎日の朝礼で発言する機会を作ったりすることで程よい緊張を維持させる。

毎日毎日覚えることが山になって覆いかぶさってくる。
それだけで結構なストレスなので、私の基本スタンスはストレス緩和に舵を取る。
プチ成功体験(出来るレベルのトレーニングをする)を演出することや褒めるアプローチを増やすことだ。
何かが出来るようになったら、とにかく大げさな位褒めあげる。
そして、毎日の終礼では、褒め訓練というスタッフ同士で褒め合うという時間を作っている。
これは意外に強烈らしく『今まで、こんなに褒められたことがなかったです』と泣き出す人が出る位だ。
泣けるくらい、一生懸命頑張ってトレーニングについてきているとも言える。

中盤はおおむね、ストレスを緩和し、自信をつけさせるように動く。
なぜなら、笑顔のあるお店を作るためには、楽しく学ぶ環境、楽しく仕事をする環境が必要だからだ。
が、途中で緩み過ぎていると感じればロープレでの要求課題の難易度を上げたりすることで緊張感を維持するようにバランスを取る。

終盤の少し前。ほとんどの場合、緩みが出てくる。
特に、パートアルバイトではなく社員に緩みが出てくるのだ。
パートアルバイトに軸足を置いてトレーニングを繰り返していくと、経験者の社員にとってはトレーニングの難易度が低すぎてどうしても意識が緩んでくる。ましてやキッチンの社員はトレーニングとは別行動でもくもくと仕込みなどを進めている場合があって、緊張感がなくなってしまっていることが多い。
酷い話しだが(しかしよくある話だが)、社員がトレーニングに参加せず、買い出しに走る、業者さんとの打ち合わせばかりしているなんて状態も多々見られる。
もちろん、致し方ない場合も多々ある。オープン前はイレギュラーが発生しやすいので。従って、私だけでもアルバイトのトレーニングは進めていく。
しかし、こうなると社員とアルバイトが分離してきてしまう。チームでなくなっていく。これではオープン後は非常にマズい

従って、朝礼や終礼を社員に仕切ってもらったり、トレーニングの進行を任せてみたりと社員に緊張感を維持するような仕掛けと一体感を失わせないような工夫をしかけていく。

それでも緩んだ社員の意識は存在する。
そこで、トレーニング終盤、プレオープンの直前辺りに、あえて大きく失敗をさせる
失敗をさせて、ヤバい!!という感覚を戻していくことをする。
最後のストレス設計は大きな山場である。
具体的には、全体ロールプレイング(本番営業のように実際に料理も出していく形の店全体でやるロールプレイング)をやるとき、オーダーを盛りだくさん入れて、お店をパンク(オペレーションを破綻)させるのだ。
社員は飲食経験者なので敏感に感じ取る。
オペレーションに負荷がかかりだす⇒オペレーションが滞ってくる⇒お店がパンクする⇒手が付けられないという状況を肌でビンビン感じる。
正直泣きたくなるくらい、社員にとっては非常に強いストレスとなる。
パンクさせるロープレを実施した後、アルバイトさんからも意見をもらい、改善策を皆で考える。
これにより、社員とアルバイトの一体感を作ることと、社員のリーダーシップを発揮する場を作り出す

この部分は、社員を中心とした主要メンバーへのストレス設計なので、逆にアルバイトさんたちは意外と余裕が出てくる。特にホールのアルバイトさんたちは、キッチンがパンクして料理が出てこないことにより、手が空くのだ。
しかし、ホールのアルバイトさんたちにここで課すものがある。
それが実際の料理が出てくることによるものだ。
今までは架空で空のお皿でトレーニングしていたものが実際に料理が乗って出てくる。料理を覚える非常に良い機会だ。
キッチンはパンクして、ロープレ後にミーティングが必要になる。
改善策を練るためのミーティングだ。その間に、ちょっと冷めてしまってはいるが実際の料理をアルバイトさんたちに食べてもらう時間とする。
(飲食店において最前線にお客様と触れているアルバイトさんにお店の商品を食べてもらうことは必須項目だと考えるが、意外とこれを軽視する場合が多い。経費は使うべきところでは使うべき)


大失敗したままでオープンを迎えるのはいけない。
直前には、一度必ず成功体験を作り出してからオープンを迎えるようにする。
最後は波を自信に持っていくのだ。

いざオープン。
オープン前にありえない位のオーダーを入れてパンクさせているので、オープンは比較的スムーズに進む。これも狙い通り。
しかし、オープン時には、黙っていても緊張でガチガチになり、社員含めてスタッフから笑顔がなくなるので、こちら側のスタンスはリラックスさせること、褒めることを徹底していく。

無事オープンを迎え、お客様からの高評価をもらうことが出来れば大成功と言える。
(時と場合により、オープンメニューや入店制限などをかけていく)


以上のように、緊張と緩和であり、不安と自信の波を意図的に繰り返しながら心身ともに、個々人だけでなくチームとして成長を促していく。

以上、2回に分かれ、少し長くなったが、私が実施しているオープントレーニングの概要である。

実施しながらブラッシュアップする部分があれば随時書き足していこうと思う。

ご質問あれば、コメント欄にください。



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