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この世界のプロフェッショナルとして、どこにいっても大切にしてきた20のこと

皆さま、こんにちは。安田雅彦と言います。今はラッシュジャパンという会社で人事の責任者をしています。

今回、青田さんからこのHRアドベントカレンダー2020にお声をかけて頂き、とても嬉しく思っています。有り難うございます。蒼々たる執筆メンバーの中で、「精神・根性・人情派」の私が果たしてお役に立つ内容をご提供できるのか、過去5社経験・うち4社が外資系で業種もバラバラというキャリアはあまり一般的でなく受け入れ難いんじゃないか、もう人事を30年近くやっているので「ブッチャケ古い」と思われないか。色々とどうでもいい不安はあるのですが、せっかくの機会なので思うままに書かせて頂きました。体系的な学びと論理的な思考を苦手とする私が「人事」という世界のプロフェショナルとして生き延びるためにどこに行っても大切にしてきた、いわば「サバイバル術」でございます。20項目。ちょっと長くなってしまいました。どうぞご笑覧くださいませ。

1. ビジネスを知り、好きになろう
新卒のスーパーマーケットから始まり、ラグジュアリーブランド・ヘルスケア・製薬、そしてコスメティックと今日まで渡り歩いていますが、どこでもそのビシネスを知り、好きになっています。一生懸命、好きになる。そうすることにより、会話が増え、ヒトがわかり、共感が育まれ、そのビジネス固有の「ネイチャー(特性)」がわかる。共通言語を持つこと、そしてネイチャーを知ることはその会社の全部門の人たちと関わる人事担当にとって、必須アイテム・イロハのイだと考えています。

2. 早く「その会社」の人になろう
上記1と似ていますが、転職で新しい会社に着任した場合には、できるだけ早く、意図的に「その会社」のヒトになろうとしています。社内イベントには全て参加する、そのブランドの物をすぐに身につける、商品を使ってみる。学会に足を運んだりもしました。「入社して○ヶ月とは思えない」と言われたら嬉しい。親近感と仲間意識はオープンで深い人間関係・信頼関係を作り、人事としての正確な判断をヘルプすると思っています。

3. そうなっている理由を探ろう
なぜこの制度なのか、なぜその運用なのか。そうなっているには必ず理由がある。そして、そうなった当時はそれが正しかった。それを徹底的に突き止めて理解する。ランチ時や忘年会で昔の話をさりげなく聞きまくる。既に退職している「歴史上の人物」(よく名前が出てくるような)を捜し当てて、話を聞きに行ったりもしました。組織の歴史を知り、文脈を理解して、そこに敬意を払うことはとても重要であると考えています。特に新しいことをするときは。

4. 難しい人から仲良くなろう
どの会社/組織にも必ず、ちょっとコミュニケーションに慎重になるべき人(俗に言う、面倒くさい人。ごめんなさい)がいるものですが、そんな人を早く見つけて、最初に仲良くなるようにしています。人事担当である以上「避けるヒト」は作るべきではないし、居てはいけない。そして、得てしてそういう方が影響力を持っていたりする。難しい信頼関係は先に作っておいた方が後々良いですよね。

5. 施策実行の前にはセンスチェックをしよう
企画や制度を実行する前には、人事メンバーでもなんでもない、しかしその制度の影響を確実に受ける「誰か」を捕まえ、こっそり草案を見せて「こんなのやろうと思ってるんだけど、どう思う?嬉しい?悲しい?」とカジュアルに聞いたりしています。そうすると、なんとなくこの「制度」の支持率が測れる。あ、この言い方は刺さりにくいんだ、とか。そして必要に応じて修正を加える。意図したことを確実にワークさせるために行なっていることです。

6. 用も無いのにブラブラしよう
コロナ前の「オフィス勤務時代」は、用も無いのにオフィスをぶらぶらしたり、支店・営業所を訪問したりしていました。で、声をかけて会話する。冗談半分に「パトロール」と呼んでいますが、これをすると当然「職場」のリアルがわかる。どこが忙しいかそうでないか、誰がハッピーかアンハッピーか。また「あ、いいとこに来た!」などと色々相談されたりする。そんな小さくて細かい現実やナマ声が蓄積されてくると、組織課題が全体感を持って現われる。従業員サーベイの結果にリアリティが出る。欠かせないルーティンです。(リモートワーク時代にどうするかは考え中)

7. 好き嫌いを紐解こう
評価や採用における、マネジャーやリーダーたちの「好き嫌い」を軽視しないようにしています。「好き嫌い」で終わらせてしまうから問題になる。「もうちょっと言うと?」と言うのが私の口癖なのですが、突っ込んで聞くことでそのマネジャーやリーダーの「好き嫌い」の奥にある判断ポイントや価値観を言語化し、コンピテンシー的に表現したり、そもそもある評価基準との整合を取るなどとして再現性の向上に努めています。

8. 呼ばれた会議には(可能な限り)全部出よう
可能な限り、呼ばれた会議は全部出席するようにしてきました。貢献が少ないケースがあるのは否定しませんが、疎くなりがちな「ビジネスの最前線」の情報が入りますし、議論の内容や雰囲気で今の組織状況や出席メンバーのモチベーション、エンゲージメント度合いもわかる。複数の事業部を掛け持ちしていたHRBP時代のスケジュールはひどいもので「舟を漕ぐ」ことも多々(今も)ありましたが、それでも役に立つことが多いように思います。

9. 「いいですね!やりましょう!」を口癖にしよう
経営陣や事業部長に呼ばれて「こんなことやりたい」と言われる。思いつきだなーと思うこともある(失礼)。でも、まずは「いいですね!やりましょう!」と返事をします。それから厳かにリスクを示して、その解決方法を考えることを始める。多分に心理的な部分もあるかと思いますが、結果的に同じことをするにしても順番を間違えると苦しくなりますよね。評価のフィードバックと同様、ステークホルダーに対しても「まずは肯定、それから懸念」のスタンスで臨んでいます。

10. むしろバリューに目を向けよう
人事という仕事には「リスクマネジメント」という重要な側面があるため、どうしてもそっちに目がいきがち。しかし「100年に1回あるか無いか」のリスクに囚われて、やれば確実に大きなバリューが得られる施策・アイデアをお蔵入りにしたり、骨抜きにしたりするのは勿体無い。程度問題はあるにせよ、そもそも「リスクがゼロ」の選択肢は無いですよね。リスクとバリューのバランスを常に評価して、判断・選択すべきだと考えています。

11. 新しい人を成功させよう
入社・異動・昇格など、新しい環境に移行してくるメンバーに気を払うようにしています。どうですか?と声をかける。そのメンバーの上司と連携してオンボードプログラムを準備・計画し、確実に成功するようにサポートして、「お手並み拝見」にならないようにする。新しく加わったメンバーが上手くいくかどうかは、その組織/職場の文化と風土を示し、その組織自体の今後の成長に大きく影響すると思っています。

12. 言い淀まないように練習しよう
「流れるように説明できなければ着地しない」と思い込んでいます。私個人の思考回路と口頭表現力のせいであるかもですが、ハラに落ちていない説明は必ずどこかで引っかかる。突っ込みに対して言い淀む。従って、大事な提案や説明会の前には、声に出して練習しています。質問を想定して答えてみる。緊張しないようにというよりは、論理の矛盾や抜け穴を見つけるのが目的で、ちなみにそれをする場所はお風呂とクルマの中です。

13. それは起きているのか、現場で確かめよう
制度導入や施策の後には、現場に出向いて「期待した変化・効果」が起きているかどうかを確かめるようにしています。「人事ヒアリング」などとオーガナイズすることは敢えてせず、フラっと行ってサラっと聞く。「ああ、いいんじゃないですか」なのか「面倒なんですよねー」なのか。はたまた「なんですか、それ?」なのか。制度を入れました、ハイ終わり!にしないように気をつける。手段の目的化防止です。

14. ファーストラインマネジャーを助けよう
最小組織単位の管理職(=ファーストラインマネジャー、営業課長とか店長とか製造課長とか)が適切且つハッピーにマネジメントをしていれば、人事が手がける諸問題のうちのほとんどは起きない。約30年間、この仕事をしてきて実感していることです。つまり、それだけ「最前線」のマネジメントは複雑且つ難しい。故にこの層のエンゲージメントやモチベーションには細心の注意を払い、最大限のサポートができる環境を整えるようにしています。

15. ヒトか制度か見極めよう
そのヒトの問題であるにも関わらず、制度の運用や設計で解決しようとしたり、制度の問題であるにも関わらず、そのヒトの俗人的な問題として片付けてしまうことが無いよう、本質を見極める。そのヒトじゃなくても同じ対応をしてきたのか、その制度のままで同じことは起きないと言えるのか。過去や未来との整合性を意識した判断が肝要だと考えます。

16. 逃げないで正面から向き合おう
「変革」に、社内の不満や対立はつきもの。重要な人事施策においてはその満足度にバラつきが出ることもある。説明会で声が上がったりもする。そんな時は絶対にごまかしたり、うやむやにしたりせず、その場でキッチリと話し合う。最終的には柔軟に判断するカードを持ちながら、誠実な論争を厭わない。「隠れることはできても逃げることはできない」と言う言葉(誰が言ったか忘れましたが)を肝に命じています。

17. 「何と言われたいのか」に思いを巡らそう
新しい制度を導入する、組織改訂を行う。そのアナウンスメントをリリースした後に、その説明会を行った後に、聞き手である社員に何と言われたいのか。どんな感想が欲しくてそれをするのか。細かい設計や調整をしているとそこを忘れがちになるので、常にそこに戻るよう心がける。人事制度と組織改訂は、社員への「メッセージ」だと考えています。

18. 意外と「常識」で考えよう
法的には問題ない。就業規則にも書いてある。制度的にもおかしくない。だったらいいんじゃないか、と実行したことが労務トラブルになる。世間でも時々聞く話です。人事である以上「社員感情」という当然の概念を忘れてはならず、これはおそらく「常識」で考えると意外と間違えないような気がします。自分だったらどう思うか。自分の大切な人が勤務先で同じ対応をされて、しょんぼり帰ってきたらどう感じるか。この辺の感覚を大事にしています。

19. 上も見て仕事をしよう
一般的に「上を見て仕事する」と言う言葉にポジティヴな意味は無いのですが、敢えての「上も」です。どんなに素晴らしいものを企てても実行できなければ意味が無い。経営陣に承認されず、ウチの上はわかってない!と嘆いても何の価値も無い。本当にやりたいなら、社員や現場を想うと同様に、決裁権を持つ人々のことも理解しなければならない。その共感を得なければならない。だったらどうするか、ということです。

20. いつもチャーミングでいよう
「人事」としていろいろなスタイル・スタンスがあるとは思いますが、経営陣やリーダー層も含めた全社員がステークホルダーであり、ビジネスパートナーであり、クライアントである。これが私の考えです。良好で健全な「関係」を維持するために、常にチャーミングでオープンな雰囲気であることはこの仕事をする上での大前提(あくまで前提)であると思っています。

以上です。有り難うございました。良い週末をお過ごしください。





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