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2024年3月21日(木)「醗酵食品・鹿児島の壺酢」

今日の東京は晴れ。
朝方の最低気温は3℃、日中の最高気温は10℃迄しか上がらず。春分の日を過ぎたのに、また寒さがぶり返して来ましたねぇ。三寒四温で徐々に気温を切り上げて行く時期だから、仕方無いですね。さて、

昨日は「二十四節気・春分(しゅんぶん)」について書きましたが、本日は「醗酵食品・鹿児島の壺酢」について書いて行きたいと思います(冒頭写真はコチラから拝借した「振り麹」の写真です)。

壺酢。
鹿児島は霧島市福山町隼人町で、伝統的製法によって造られている黒酢ですね。やっぱり、ビジュアル的には壺畑は中々に圧巻ですよね。ナンでココで黒酢造りが行われているかと言うと、この地は一年を通じて温暖で寒暖差が小さく、且つ薩摩焼(現在は大半が信楽焼)の壺が身近に得られる土地柄であるから。その薩摩焼の壺を使って仕込み、屋外において醗酵させるコト6か月以上、長期熟成によって醸される独特の香りと円やかな酸味が壺酢の特徴なんだとか。

この地区で壺酢を造る会社は現在8社あるようなのですが、ビックリなのはその大半が工場の中の醸造場ではなく、内容量が三斗(54ℓ)入りで胴径約40cm・口径約14cmの陶器である「アマン壺」と呼ばれる信楽焼の壺を並べた「壺畑」と称される屋外で造っていると言うコトです。
壺の一つ一つが小さな工場なんですね。この壺の中に、米麹・三分搗きの蒸米・近辺に湧出する水(廻りの水)を入れるだけ(最後に熟練の職人にしか出来ないと言われる「振り麹」を水面に均等に振って空気を遮断)。
アトは放置しておけば、壺の中で糖化(by 麹カビ)→アルコール醗酵(by 嫌気性酵母)→酢酸醗酵(by 好気性酢酸菌)→熟成と言う過程を経て黒酢は出来上がるのだとか(熟成年数が経つホド淡褐色から琥珀色へと色付いて行く)。コレが各種微生物と太陽エネルギーだけで出来ると言うのだから、オドロキですね。この壺の大きさもミソなのだそうで、大き過ぎても小さ過ぎても上手く酢が出来ないそうで、このサイズが良い酢を造り出すベストなモノなのだとか(大き過ぎると醗酵を促す為の温度が保てないし、小さ過ぎると高温になり過ぎて酢にならないらしい)。コレまたオモシロいですね。先人達の失敗と苦労の末に辿り着いた大きさである、と言うのがスバらしいですねぇ。このような酢の造り方は世界的に見ても類の無いモノのようです。

酢は紀元前5,000年にはバビロニアで造られていたと言われているので「世界最古の調味料」とも呼ばれるそうですが、昨今では石油から合成して出来る氷酢酸を薄めた合成酢が製造され、安価な合成酢やその他穀類から造られた醸造酢が一般化している状況にあり、鹿児島の黒酢のようなホンモノの造りをしている酢は然程大きなシェアを獲得するには至っておりませんが(矢張り価格的にも高いコトもあり)、やっぱりエエものは使いたいですよねぇ。

鹿児島の壺酢の歴史は江戸後期の1800年頃から始められていたようで、即ち約200年超の歴史があるワケですが、戦前迄は24もの醸造所があったそうなのです。しかし乍ら、上述の通り合成酢の台頭によって廃業者が続出、現在では8軒のみとなってしまっているようです。また、50年ホド前迄は「黒酢」とは呼ばれておらず、「福山酢」・「壺酢」・「天然米酢」等と呼ばれていたらしいのですが、福山の8社のウチでも約7割のシェアを持つ「坂元醸造」さんの5代目が「黒酢」と命名したのだとか。

坂元醸造さんの黒酢は結構スーパーなんかでも売られているので、比較的入手はし易いです(流石に価格的には高いのですが)。
が、エエものはエエ。真面目に伝統的な製法で造られたモノには多少の出費をしてでも、使いたいモノです。

実際、坂元醸造さんの壺酢を飲んでみましたが、ホント円やかで優しいお味。そりゃあ、コレで料理作ったら不味く出来るハズが無いカンジです。オーガニックでもあり、カラダにも優しいし、整腸作用も大いにありそう。
使いましょう。

明日は「内臓料理(ではないですが)・牛タン」についてお届けしたいと思います。


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