強かったんだな

少年は毎日、いじめられていた。

ちょっとやそっとのものではない。ヤンキーども、そして体格のいいホッケー部員からグーで顔面を殴られる。

小学校卒業後、少年は親に相談をしていた。

「僕、太ってるから…中学校でいじめられるかもしれない」

そんなSOSを、少年の母親は笑い飛ばした。大丈夫、問題ないと…。

しかし残念なことに、少年の予想は当たってしまった。

親にも友達にも言えない。誰にも相談が出来ない。

朝礼前には机や椅子が全て後ろまで下げられ、「少年虐め用」の特設リングが設けられる。

さすがにその状況に耐えかねたのか、少年は早起きし、朝５時に登校した。

母校・釧路市立大楽毛中学校

まだ校門は閉まっている為、無理を言って用務員さんに開けてもらう。その後、適当な階段の踊り場や廊下の隅っこで、朝礼が始まる8時40分を待った。

…そんな孤独なファイターである当時の私へ、この場を借り、届かぬメッセージを残す。

・
・
・
・
・
・

よう。大変そうだな。

あのな、お前が今感じている辛さ、怖さ、悲しさは絶対に無駄にならないから、今のうちに味わっておけ。

そのいじめは中学校で終わる。お前を殴った奴らは皆、将来しがないサラリーマンや下っ端ヤクザになる様な奴らばかりだ。気にしなくていい。高校生活は、まぁまぁ充実するから安心しろ。

今、お前は太っているだろう？運動なんて、した事も無いよな？でも、これから別人の様に体を動かすことが好きになる。ちゃんとスリムになるし、最終的には…まぁまぁのイケメンってやつになるぞ！だからそこも、気にしなくていい。

びっくりするくらいの女とヤる事になるからな！ちゃんと下半身の勉強もしとけよ。あと、性病に気を付けろ！わははは…

…いや、まぁそんな事はどーでもいい。

それより…しっかり聞いておいてくれ。

残念な知らせだが、その「いじめられる辛さ」ってのはまだまだ序の口でね。特に高校を卒業して社会に出て…そうだな…22、3歳あたりからお前の人生は転落の一途を辿り続ける。しかもその真っ暗なトンネルは、20年ほど続く事になる。

ふふ…ただでさえ今、絶望的な状況なのに冗談じゃない！…って感じだよな。その頃にはお前も40歳を越える。信じられないだろう？

でもね…次は嬉しいお知らせになるんだが…それでもお前は立ち上がる。

今はあえて詳細を端折るが、お前が思っている以上に40歳からの俺は、健康でめちゃ若いんだよ。

むしろ、そこからお前の本格的な人生がスタートするだろう。

気の毒だが…まだ向こう30年間は、そうやって階段の踊り場で朝礼を待つような人生が続く。

そんな中でも、お前はお前なりの「使命」ってやつに気付き、やるべき事をやるだろう。そして、とうとう40代にして「生き方」が見つかる。

だから…

その時まで決して、諦めるんじゃない。

お前は自分を責める傾向にある。どうせ今も、見た目が醜悪だからいじめられている自分を嫌悪し、否定しまくってるだろう？

あのな…お前は実は、凄い奴なんだよ。

どんな時も、自分を赦せ。

誰かに褒めてもらおうとか、許可をもらおうとか…その腐った考えを捨てろ。

本当の意味で自分を赦せるのは、自分だけなんだよ。

これから何度も過ちを犯すだろう。友人を裏切り、裏切られ、人間不信になり、いつまで経ってもまとまったお金が手に入らず、経済的にも底辺な状況が続き…しまいには、いけない事にまで手を出す時が来るかもしれない。

その都度、お前は自分を責めるのさ。

「あぁ、俺はなんて奴なんだ…」って感じでね。

気にするな。ここも詳細は端折るが、ともかく…全ては大した出来事ではないんだよ。

稼げなくても、友達がいなくとも、女にふられようとも、必ず己を赦すんだ。それを忘れるんじゃない。

それと…母さんのこと。当たり前だけど、お前より先に死ぬ。

今、実感無いだろ？「どうせ帰ったら家にいる。おかえりって言ってくれる」…なーんて思ってるよな？

それも勿論…失う時が来る。

お前が思っている以上に、お前は実家で長く暮らすことになるだろう。つまり、兄貴よりもずっと母さんの側にいることになる。

あの人はな…どうしようもない人だが、お前の事を心から愛している。

だから…別れの時に後悔しない為にも、今から大切にしてやってくれ。

…ん？そうか、それはロマサガの攻略本か（笑）。そうだよな、そうだった。朝礼まで三時間もあるから、それまで教科書見て勉強したり、ゲームの攻略本見て暇潰ししてたんだったな。

ゲームはなぁ、本当にすごい事になるぞ！グラフィックも実写みたいになるし、その中でも操作出来るんだ。ワクワクするだろ？

まぁ実際、これから数十年はゲームと友達って感じになるから、満喫しろ。

そう聞くと、捨てたもんじゃないって思えるだろ？実際、お前の孤独を慰めるといった意味でも、ゲームは大きな大きな役割を果たしてくれるからな。大人になっても、遠慮しなくていいからやりまくるといい。

但し…お前が感じている「楽しさ」ってのは…まぁ言わずとも後から気付く事になるんだが…「友人ありき」なんだよ。

お前は今、どっちかっつーとゲームを純粋に楽しむというより、「友達と遊んでいる時間」を楽しんでいるんだ。

だから、今仲が良い友達と大いにゲームで青春してくれ。

そうそう、その「友達」ってのはYとかUとかMとかの事だよな？奴らとの関係も、割と早めに終わるんだよね。

原因は喧嘩…ではない、かな…まぁ、これも気にしなくていい。その時も絶対に、自分を責めるな。

あ！そうだ。出来るだけカフェインを摂らないようにしろ。お前にコーヒーは合ってない。

カフェイン入ってる物、分かるよね？お前はあれのせいで何度も体調を崩す事になるだろう。だから、気を付けるんだ。

それと大事な事だが…お前は結婚しないし、子供も作らない。

これは悲しいお知らせに聞こえるかもしれないが…って、そうでもないか。そうだよな…お前はこの時から割と孤独を愛していたっけ。

いじめられていたとはいえ、誰もいない校舎に密かに侵入し、ゲームの攻略本見たり勉強したりしてる自分の事を、何となく「特別」なように感じてたんだよな。そして、そのシチュエーションをどこか楽しんでいた。

ふむ…ひょっとするとお前は、辛い中でも楽しみを見出す事が出来る、とても強い人間なのかもしれない。そうだったのか…。

ともかく、お前は家庭を育まない。

でも…だからこそ「次」に行けるんだ。

いいか、最終的なお前の目的は「この世からの解脱」なんだよ。但し、自殺って事じゃないから勘違いするな。

意味わからんよな？今はそれでいいさ。

さて…そろそろ行くよ。そっちも授業が始まる頃だろう？

心配して何となく振り返ってみたけど…何の事はない、お前って割とタフだよな。変な話、今気付いたわ。

そうか…俺はこの頃から、強かったのか…。

お前のお陰でまた自己肯定感が上がったよ。ありがとう。

…ありがとう…か。そうだ、最後にもう一つ。

「感謝」を忘れるな。自然界の動物ですら、「お礼」をするだろう？「感謝」という感情は、恐らく宇宙の真理の一つなんだ。

最終的には、全てに感謝出来るようになれ。「ありがとう」と言える様になるんだ。

当然、お前をいじめている奴らに対しても、だよ。…って、今は難しいよな。それでいいさ。

久しぶりに校舎の空気と匂い、そして当時の地元の景色を思い出せて良かった。

いいな、忘れるなよ。全てを赦し、感謝せよ。

特に母さん…あの人の事は生涯、赦してあげなさい。

己と親を赦し、感謝する…それこそが、お前にとっての最大の「成長」へと繋がるだろう。

じゃあな…未来のヒーロー。

● YouTube【真理探求チャンネル】も宜しくお願い致します。

● 奴隷からの脱出法（覚悟のある方のみ）→https://note.com/masayan_kenji/n/n81a68a0ba12a

● stand.fm【真理探求ラジオ】も聴いてね！📻