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タイでのエピソード・その73
—その72の続き—
部屋で仕事をしていると、電話が鳴った。ビザツアー会社のTさんからだ。
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「もしもし。」
「あ、はい、マサヤンです。」
「どうも。いま大丈夫?」
「はい、大丈夫ですよ。どうしました?」
「あのね…もう、観光ビザ取れない。ダメ。ラオスのビエンチャンに行ったこの前の参加者、みーんなビザ取得出来なかった。初回でも、無理だったのよ。」
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「えぇ…そんな…」
頭の中の整理がつかなかった。…とはいえ、軍政となった今のタイなら、遅かれ早かれこうなる事は分かっていた。
以前から言っている様に、タイは外貨でここまで大きくなった観光国だ。しかし、軍政になってから外国人の「締め出し」が始まった。ビザランの渡航者たちを追い出し、それを「不法滞在者対策」と銘打ってどんどん実施した。
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「気軽に遊べるタイ」はもう、どこにも無い。言ってしまえば、やつらは日本で言うところの「お役所さま」的に、頭が硬い。国の利益と世論度外視で、違法性のありそうな人間をとことん排除しようという方針。これにより、タイ国民もタイを避難し、観光客となる外国人たちもタイを離れていった。簡単に言えば、「超・つまらない国になった」ってこと。
タクシーなんかに乗れば、運ちゃんは口を揃えて「今のタイは昔に比べて、本当につまらなくなった」と言うよ。そらーそうだ。
まったく…上のやつらの頭がパッパラパーなのは、どこの国も一緒かね?
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ちなみに2022年4月現在は、コロナのせいでお金が無くなった為、外貨を求めて観光ビザの取得が容易になっている。6月からはワクチン接種歴無しでも入れてしまう。何やってんだか…。
…この様に、観光ビザの取得難易度は、その時のタイミングによって大きく上下する。
そして…今まさに、その最悪のタイミングが訪れたという事だ。
「だからマサヤンさん。次の二ヶ月後の予約の件なんだけど…」
「はい。仕方ないでしょうね…。キャンセル、という事でお願いします。」
「大丈夫?帰るところ、あるの?」
「はは。Tさんって実は優しいですよね。」
「まぁタイに来る人間ってのはさ…どんな奴も何かを抱えているからね…。借金した人、ヤ◯ザに追われてる人、脱税して帰れない人…そんな人をたくさん見て来たよ。」
「観光ビザツアーの仕事してりゃ、そらーそうでしょうね。」
「そう。そして今回も、帰る所が無くて困っている人がたくさん出ちゃった。どうしても、助けてやれなくてね…。」
「そうですか…。」
「うん。やっぱり海外ってのはさ。日本人同士で助け合わないとさ。」
「確かに、そうですよね。」
「今後、しばらくタイは変わらないだろうね。最低でも向こう四年間は。」
「なるほど…。ちなみにTさん、キャンセルポリシー通り、違約金2000バーツをお支払いしますね。どの様にお支払いすれば良いでしょうか?」
「いや…まぁ…いいよね、今回は。」
「いえいえ、そういうわけには…」
「いや、いいよ、本当に。仕方ないじゃん。」
「…Tさん…。これから、どうするんですか?」
「そうね…。俺もまぁ、仕事、無くなるよね…。でも俺はまだ、大丈夫な方だから。」
「そうですか…。」
——そんな会話を続け、最後にお礼を言って終話した。
…そうか…
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あと二ヶ月か…。
ほとんど仕事しかしない二年間だった。遊んだには遊んだが、あまり記憶に無い。
全力で、人生を大逆転させようと走った。そして、盛大にすっ転んだ。
…それだけの為に、来た。それだけの為に…。
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17階のコンドミニアムから、夜景を眺める。こんな美しく、素敵な場所が毎月12000バーツ(約4万円)だ。日本では考えられない。
かつての絶望は消えていた。しかし…途端に数多くの思い出が私の頭の中をよぎった。
帰りたくない…。
いや、でも…そろそろ帰りたい様な気もする。やるだけやった。本当に、よく頑張ったよ。
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たくさんの思い出をくれた。大好きだよ、ハビトモール。今度旅行に来る時は、必ずここでまた、思い出を拾う事になるだろう。
帰るところなんて、無い。
無かったはず…なんだが…。
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私は腹を括って、おふくろに電話をかけた。
彼女はため息混じりに、「分かったよ…帰っておいで。」と言った。
…おふくろ、すまなかった。
—その74へ続く—
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