Porridge Radio『Every Bad』


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 ポリッジ・レディオはイギリスのブライトンで結成されたバンド。メンバーはダナ・マーゴリン(ヴォーカル/ギター)、サム・ヤードレー(ドラム/ギター/ベース)、ジョージ・ストット(キーボード/ヴォーカル)、マディー・リアル(ベース)の4人。

 もともとダナのソロ・プロジェクトとして始まったこのバンドを知ったきっかけは、2016年のアルバム『Rice, Pasta And Other Fillers』だ。倉庫で一発録りした作品で、装飾0%のサウンドが鳴り響いている。剥きだしのエモーションはリスナーの耳に力強く噛みつき、粗削りの才気はヒリヒリする緊張感を醸していた。

 その『Rice, Pasta And Other Fillers』に続く最新アルバムが『Every Bad』だ。スタジオでの丁寧なレコーディング作業を経ているだけあって、これまでの作品群と比べても音が作りこまれている。それでいて、感情を率直に紡ぐダナのヴォーカルといった、持ち味の生々しさは失われていない。

 正直サウンドに斬新さを見いだすのは難しい。“Born Confused”はピクシーズやニルヴァーナを容易に想起させ、“Long”は『Closer』(1980)期のジョイ・ディヴィジョンが脳裏に浮かぶ。それなりに多くの音楽を聴いてきた人なら、USオルタナティヴ・ロックやUKポスト・パンクの因子を簡単に見つけられるだろう。
 トラップ的なハイハットの刻みが際立つ“Homecoming Song”など、モダンの側面もなくはない。だがそれ以上に、過去の遺産を頼った音があまりに多く、心を揺さぶる驚きは最後まで訪れない。“Born Confused”と“Lilac”の曲展開が似通っていたりと、アレンジも多彩さを欠いている

 歌詞は魅力的だ。ストレートな言葉を選びながら、リスナーの好奇心をくすぐる深さを上手く表現できている。説明し難いフラストレーションを綴った“Born Confused”、憧れと罪悪感がカオティックに渦巻く“Give/Take”など、おもしろい歌詞が多い。

 音も歌詞も上質な作品を求める筆者からすると、『Every Bad』は惜しい作品だ。



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