三浦大知「COLORLESS」


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 三浦大知が“COLORLESS”をリリースした。ライヴでは以前から披露していた曲で、来年1月に発売されるニュー・シングルのカップリングでもある。

 “COLORLESS”のサウンドはかなり先鋭的だ。ピッチを過剰に変調させたヴォイス・サンプルは、異界から漏れでたゴーストの声みたいな響きを放つ。音数の少ないビートはミニマルで、ひとつひとつの音がゴツゴツしている。それは筆者からすると、「South London Boroughs」や「Distant Lights」など初期のブリアルに通じる要素が感じられるものだ。

 一方で、明るくメタリックなシンセの音色など、フューチャー・ベース的側面が浮かびあがる瞬間もある。とはいえ、一般的なフューチャー・ベースほどアッパー・サウンドではない。それでもギリギリのところでキャッチーさを保つポップ・ソングになっているのは、目まぐるしい曲展開と、それを見事に乗りこなす三浦大知の高いヴォーカル力があってこそだ。

 〈What is your color?〉から始まるサビもおもしろい。とりわけ興味深いのは、断続的に紡がれるシンセ・フレーズだ。微細な変化で起伏を生みだす手法に、ロレンツォ・セニの“Rave Voyeur”といったミニマル・トランスを感じた。“COLORLESS”には、そうした前衛的なエレクトロニック・ミュージックと隣り合わせのサウンドが多い。

 三浦大知が書いた歌詞も見逃せない。〈なかなか変わらない世界 きめつける未来 くだらない〉と歌われるそれは、さまざまな解釈の余地を残す。何かと生きづらい世の中についてかもしれないし、画一的な音が蔓延る日本の音楽界を問うメッセージにも聞こえる。〈何色にでも染まるスタイル〉という一節を聴いて、LGBTQのパレードでよく使われるレインボーフラッグを連想する者もいるだろう。
 このように、聴く人の背景次第で表情が変わる言葉を並べながら、全体としては意志を貫く1人の人間がはっきり見えてくる。それを可能にする言葉選びのセンスは、ダンスや歌と同様にもっと高く評価されていい。


※ : 執筆時点でMVがないので、Spotifyのリンクを貼っておきます。


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