R.I.P. フィリップ・ズダール



 フィリップ・ズダールが転落事故で亡くなりました。訃報を聞いてまっさきに思い浮かんだのは、彼が遺した素晴らしい音楽たちです。ズダールといえば、フェニックスフランツ・フェルディナンドなどの作品を手がけたプロデューサーとして知られています。あるいは、90年代からフランスのダンス・ミュージック・シーンを牽引し、発展させた功労者として記憶する人もいるでしょうか。しかし、筆者にとってはもっと個人的で、大切な想い出を彩ってくれたアーティストでもあります。

 なかでも大好きなのは、モーターベースとして1996年にリリースしたアルバム『Pansoul』です。ダフト・パンクの『Homework』よりも1年早かったそれは、90年代後半から2000年代前半にかけてのフレンチ・ハウス・ブームの先鞭になりました。肉感的なグルーヴと艶かしいサウンドは、いまでも筆者の心を躍らせてくれます。
 お気に入りは“Flying Fingers”です。基本的には4つ打ちだけど、時折挟まれるブレイクビーツ、ヒット音、スクラッチはヒップホップ。この要素は、ラ・ファンク・モブ名義の「Casse Les Frontières, Fou Les Têtes En L'Air」でもうかがえます。とはいえ、折衷度は“Flying Fingers”のほうが高く、いまも聴けるのはこっちかなと思います。ズダールのヒップホップ好きな一面を知ると、フランスのラッパーであるMCソラーのプロデュースをしたことも、半ば必然だったのがわかるでしょう。
 もちろん、カシアスとしての活動も忘れてはいけません。ベタだけど、“Cassius 1999”で踊った回数は数え切れないほど。この曲はドナ・サマーの“(If It) Hurts Just a Little”をサンプリングしていて、ドナ・サマーにハマるきっかけにもなりました。

 筆者のように、2000年代からダンス・ミュージックを本格的に聴きはじめた人にとって、ズダールはとても大きい存在だと思います。ディスコ・ボーイズやDJメディーなど、2000年代はカシアスの曲をミックスに使う人は多かったし、ズダールもソロでTurboから「Don't U Want」をリリースしたりと、精力的だった。振りかえれば振りかえるほど、筆者の音楽体験に深く影響をあたえてくれたと実感します。
 そんなズダールに対しては、哀悼の意だけでなく、感謝の気持ちもいっぱいです。


※ : ズダールが関わった曲でプレイリストを作りました。Spotifyにない曲は選べなかったけど、彼の素晴らしい仕事の入口になれば嬉しいです。
 カシアスの新曲"Don't Let Me Be"のMVも貼っておきます。お風呂上がりの女性が踊っているところに、「踊りに行こう、迎えに行く」と連絡が来るというストーリー。女性3人が迎えに来るところで終わるけど、その3人は友達とも解釈できるし、女性4人のダブルデートにも見える。おもしろい作りです。





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ポップ・カルチャーが大好きなフリーライター/編集。批評スタイルは「群れずに是々非々」。主な仕事のまとめ : http://masayakondo.strikingly.com/ 連絡先 : acidhouse19880727@gmail.com

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