Various Artists『Modernation Vol 2』


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 ここ最近の音楽シーンを見ていると、《イタロ》の観点から興味深いと感じる動きが多いのに気づく。ヤング・マルコ主宰のレーベルSafe Tripは、『Welcome To Paradise』シリーズ(2017〜18)で古のイタロ・ハウスを蘇らせた。サウス・ロンドン出身のシンガーであるジェシー・ウェアも、『What's Your Pleasure ?』(2020)でナンバー・ワン・アンサンブルあたりが脳裏に浮かぶイタロ・ディスコの艶かしいラフなビートを取りいれた。

 そうした流れにおいて、スペインのItalo Moderniは強い存在感を放っている。バルセロナを拠点とするアドリアン・マースによって設立されたこのレーベルは、いなたさを醸すシンセ・フレーズと強烈なビートが交わるイタロ・トラックを積極的に紹介してきた。2020年2月にはオランダのダニエル・モナコによる「La Guerreira Araba EP」をリリースするなど、カタログにはスペイン以外のイタロ・サウンドも目立つ。

 そんなItalo Moderniが新たなコンピレーション・アルバム『Modernation Vol 2』を世に放った。これまでのレーベルカラーに沿うイタロ・ディスコが並ぶ一方で、EBMやニュー・ビートに通じるメタリックな音色も響きわたる。それは筆者からすると、リエゾン・ダンジェルーズといったジャーマン・ニュー・ウェイヴ勢の要素を見いだせる側面だ。一言でイタロ・ディスコといっても、漂う要素は実に多彩で、さまざまな観点から楽しめる作品と言える。

 収録曲で気に入った、というより笑ってしまったのはアドリアンによる“New Vision”だ。曲の展開にシンセ・ベース、さらに随所で飛びだすキックの連打を聴くと、ニュー・オーダーの大名曲“Blue Monday”(1983)を連想せずにはいられない。あまりに類似性が顕著なせいで、いつバーナード・サムナーのアンニュイなヴォーカルが入ってくるのか?という想像をしながら踊ってしまった。

 ブルガリアで活躍するテクノベトンの“Markov's Planet”も好きだ。機械的なアルペジオを使ったベース・ラインはもろにジョルジオ・モロダーを彷彿させつつ、アシッド・ハウスの香りが漂う電子音も使われるなど、1曲のなかに多くの要素が込められている。反復するビートが生みだす中毒性は非常に心地よく、ミラーボールきらめくダンスフロアに集う者たちを踊らせる最高のダンス・トラックだ。

 『Modernation Vol 2』は、いまも世界中のポップ・ミュージックで蠢くイタロなムードを加速させるクオリティーが詰まった快作である。


※ : 本稿執筆時点ではMVがないので、Spotifyのリンクを貼って...おきたいのですが、トラブルかなにかで貼れないようなのでURLだけになります。

https://open.spotify.com/album/2H37B3DuxMkZHhQsFQgzZW?si=136fBXG-RjqvUVgwzJSmqg

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