2019年ベスト・ブック10


 2019年のポップ・カルチャーについてはベスト・アルバム50に書いたので、そちらをぜひ。ベスト・ブックの評価基準はそこで書かれているのとほとんど一緒です。

 今年のベスト・ブックでは、小説、研究書、漫画といったさまざまな日本の書物に加え、洋書も選考対象にしております。簡単には入手できないため、対象にしようかギリギリまで迷いましたが、日本の出版物を読むだけでは思考が周回遅れになるという気持ちを隠せなかったからです。とりわけポップ・カルチャーに関する本は、海外のほうが刺激を受け、勉強になるものがたくさんありました。日本語で思考を続けるかぎり、日本的価値観から逃れるのは難しいと痛感する昨今です。

 筆者がブログやWebメディアで記事を執筆した本は、書名のところにリンクを貼っています...と書いておきながらなんですが、書評は全然書けていないのでリンクはありません。ブログはどうしても音楽、映画、ドラマを優先してしまうし、書評の仕事が来ないかな...。依頼がありましたら、ぜひご連絡ください。お待ちしております。



巣内尚子『奴隷労働 ベトナム人技能実習生の実態』

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巣内尚子『奴隷労働 ベトナム人技能実習生の実態』

ベトナム人実習生の実情に迫ったもの。低賃金、長時間労働、暴力、ハラスメント、劣悪な住環境など、無視してはいけない問題がいくつも浮かびあがってくる。日本という国の構造がいかに歪であるかを示した良書。



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Vivien Goldman『Revenge Of The She-Punks : A Feminist Music History From Poly Styrene To Pussy Riot』

フェミニズムの観点からパンクを語っている。イギリスやアメリカのバンドだけでなく、日本のバンドも登場。



坂本佳鶴恵『女性雑誌とファッションの歴史社会学 ビジュアル・ファッション誌の成立』

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坂本佳鶴恵『女性雑誌とファッションの歴史社会学 ビジュアル・ファッション誌の成立』

ファッションの観点から女性雑誌の変化を検討したもの。現在の日本におけるジェンダー観は、明治時代の影響が強いのだなとあらためて実感。



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Alon Shulman『The Second Summer Of Love : How Dance Music Took Over The World』

イギリスのポップ・ミュージック史に刻まれた伝説的ムーヴメント、セカンド・サマー・オブ・ラヴに焦点を当てている。少々懐古的ではあるが、いまも参照できるスピリットやセンスも。



ジュリー・ソンドラ・デッカー『見えない性的指向 アセクシュアルのすべて??誰にも性的魅力を感じない私たちについて』

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ジュリー・ソンドラ・デッカー『見えない性的指向 アセクシュアルのすべて 誰にも性的魅力を感じない私たちについて』

アセクシュアルの当事者として活動するうえでの実感だけでなく、先行研究もふまえている。アセクシュアルを知るための入口に最適な内容だ。



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Hannah Ewens『Fangirls : Scenes From Modern Music Culture』

アイドルやポップスターの女性ファンに迫ったもの。この手の研究は多いが、ネットやメンタルヘルスといった現代的な要素にも目配せした論旨は、紛れもなくモダンな感性だ。



ニケシュ・シュクラ『よい移民』

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ニケシュ・シュクラ『よい移民』

イギリスに住む21人の移民が想いを寄せたもの。人種や境遇はさまざまでも、抱える葛藤には共通点が見られる。外国人労働者や複数のルーツを持つ者が増えてきた日本とも関連する内容だ。



マイ・ブロークン・マリコ

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平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』

今年7月にコミックブリッジ オンラインで連載が始まり、同年12月に最終話を迎えた傑作マンガ。突如死んだマリコのために走るシイノの激情を見事に描ききっている。随所で映画からの影響を感じさせる場面(最終話のラストなど)があるのも興味深い。



伊藤春奈『「姐御」の文化史 (幕末から近代まで教科書が教えない女性史)』

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伊藤春奈『「姐御」の文化史 幕末から近代まで教科書が教えない女性史』

時代劇や任侠映画といった近代文化史をフェミニズムの視点から紐解いている。こうした読みなおしはもっと増えていい。



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Nathalie Olah『Steal As Much As You Can: How To Win The Culture Wars In An Age Of Austerity』

今年読んだ文章や書物の中でも、群を抜く痛烈さとおもしろさ。緊縮財政や新自由主義がイギリスのポップ・カルチャーにあたえた影響など、興味深い論旨が多い。労働者階級の視点が濃いのも特色だ。ソーシャル・キャピタル(人脈など)が同じ階層や界隈でしか共有されていない現実が見えてくる。




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ポップ・カルチャーが大好きなフリーライター/編集。批評スタイルは「群れずに是々非々」。主な仕事のまとめ : http://masayakondo.strikingly.com/ 連絡先 : acidhouse19880727@gmail.com

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