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映画/ドラマレヴュー

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観た映画やドラマのなかから興味深かったものについていろいろと。
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2017年9月の記事一覧

“観る”から“体験”に移行しつつある現在の映画界を象徴する作品のひとつとしては、よくできている 〜 映画『ダンケルク』〜



 クリストファー・ノーランは、何よりも形式を重視する映画監督だ。このことはノーランのフィルモグラフィーを振りかえってもわかる。10分間しか記憶を保てない男が主人公の『メメント』(2000)、人の夢の中で物語が進行する『インセプション』(2010)、理論物理学を下敷きにしたSF『インターステラー』(2014)など、物語の設定や凝った仕掛けで私たちを驚かせるのが、ノーランの常套手段である。

 そ

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この問題作を受け入れられるだけの感性が、日本にあるだろうか? 〜 映画『エル ELLE』〜



 『ロボコップ』や『氷の微笑』などで知られるポール・ヴァーホーヴェン監督は、とんでもない問題作を作りあげた。主人公のミシェル役にイザベル・ユペールを迎えたその映画は、『エル ELLE』と呼ばれている。

 『エル ELLE』の物語は、凄惨なレイプシーンで幕を開ける(※1)。だが、失神から目覚めたミシェルは警察に通報することもなく、部屋を片づけはじめる。翌日には、経営する会社で社員に強権的な立ち

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