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映画/ドラマレヴュー

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観た映画やドラマのなかから興味深かったものについていろいろと。
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2017年7月の記事一覧

私たち、今から始めない? 〜 映画『浮き草たち』〜



 アダム・レオン監督の初長編作『ギミー・ザ・ルート NYグラフィティ』は、とても初々しい青春映画だ。この映画はニューヨークを舞台に、グラフィティ・アートに夢中の若い男女を描いている。若さゆえのイタい情動を描きだし、大人になってしまった者たちの心をいちいち突いてくる。粗もなくはないが、アダム・レオンが持つ才能の一端を楽しめる。製作で参加したジョナサン・デミが猛烈にバックアップしたのも頷ける。

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この世に命を繫ぎ止めるための言葉 〜 映画『心のカルテ』〜



 アン・セクストンという詩人がいる。1974年に自らこの世を去ったセクストンは、シルヴィア・プラスと共に告白詩のムーヴメントを作ったことで有名だ。
 セクストンは不安定な精神との戦いを余儀なくされ、死の間際まで入退院を繰り返した。そのなかで綴られた詩を読むと、セクストンの詩は“生と死”を行き来していることがわかる。たとえば「Snow」という詩では、〈希望がある いたるところに希望がある〉と前向

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