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映画/ドラマレヴュー

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観た映画やドラマのなかから興味深かったものについていろいろと。
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2017年2月の記事一覧

私たちは今、夢を見ることができるのか? 〜 映画『ラ・ラ・ランド』〜



 2014年の映画『セッション』で注目を集めた、デミアン・チャゼル監督の最新作『ラ・ラ・ランド』。ミア(エマ・ストーン)とセバスチャン(ライアン・ゴズリング)、夢を追いつづける2人の甘美な愛と苦楽を鮮やかに描いている。特に惹かれたのは、ラストで見せるミアとセバスチャンの微笑みだ。挫折や苦難に見舞われながらも、愛する人が夢を叶えたのだという喜びであふれていた。セバスチャンをずっと好きだと言ったミ

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劇場版史上最高傑作。そこに込められたメッセージとは 〜 映画『相棒 劇場版Ⅳ 首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断』〜



 『相棒』シリーズは、日本のドラマ史が誇る金字塔と言っていいでしょう。単純な話はひとつもなく、視聴者の心に深く突き刺さる重厚な物語を生みだし続けている。
 なかでも僕は、社会派と言われるエピソードが好きです。法のもとではすべての人が公正に裁かれるべきと考え、組織の論理から自由という意味でもリベラルな思想が濃い杉下右京(水谷豊)の危うさを描いた、「暴発」(※1)などがそれです。労働問題を真正面か

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対話なき世界という思考実験 〜 映画『沈黙 ‐サイレンス‐』〜



 ロシアの学者ミハイル・バフチンは、異質と思われるもの同士が出逢ったとき、それぞれが一体性を保ちつづけることが創造的対話に繋がり、それが互いを豊かにすると説いた(※1)。バフチンは、主体性を放棄させたり、培ってきた文化を強制的に忘却させること、いわゆる同化主義的な思想には批判的だ。“外在性”という言葉をよく用いて、どんなものでも複数の視点が存在すること、そしてそれを解消することは不可能だと語っ

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