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格差の方程式:「成りたいものに成れ」というのは遺産がない悲しい謝罪、「きっと上手くいく」ことはない。

「努力すれば、成りたいものに成れる」というのは大嘘である。僕は『ブラブラ遊びの大金持ち』に成りたかった。

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かつて私達は「家業」を継いでいた。世襲は当たり前だった。小さなコミュニティでそれぞれの「家族」は「家業」を持ちコミュニティの中の役割を持っていた。農家があり、海産物屋・問屋があり、八百屋・魚屋・肉屋、豆腐や、自転車屋、子供は親の家業を学び、やがて親の位置に立ち、親は爺さんになり、死ぬ。「循環する家族」である。

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母方の両親、写っている二人は早くに亡くなった。兄はシベリアで、妹は結核でなくなる。母はこの後生まれ7人兄弟の長女となった。

3世代は共に住み、厨房技術は伝えられ、社会の変化は数世代を掛けて起こったので、家庭は維持された。社会の変化はゆっくりなので対応することが可能だったのだ。

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地域の家族たちは互いにそれぞれの家業を頼り合い、経済は閉じられていた。この時代のローカルで閉じたの経済を分析していつ学者はいない(笑)、儲からんからなあ。僕はこの時代を手放しで称賛はしない。

盲腸で人は死に、感染症で多くの悲劇が生まれた。汲み取りトイレは家族のマイクロバイオームをシャッフルして、家族というカクテルを作っていたのだ。

グローバリズムの始まり

母の父親はタンスを列車に乗せて北海道に売りに行った。帰りは海産物を仕入れてきたそうだ。

つまり、北海道のタンス産業を破壊しに行ったのだ(笑)。同時に新潟県内でも多くのたんす屋が「鉄道」と言う手段を使い販路を広げた。

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そして、彼は廃業した。市会議員になって、地元で不動産業を始めるのである。まさに田舎のグローバリストである。

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グローバリズムはその腕の長さの中に入るものを全て打ち砕く。

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父の実家も母の実家も既に離散して、誰も集まらない。何年かすれば誰も覚えてはいない。

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1980年代の社会の激震

今の格差は、1980年代のいくつかの発明が生んだ。同時に不可逆なまでに地域の経済を破壊した。シラフじゃ考えていられない。

誰もが何になるかが分かっていた時代が崩壊したのである。

「怒りの葡萄」の時代、失業者がアメリカ獣に溢れた時代と対比すべき閉塞感の有る時代だ。失業者はホーボーと呼ばれ、路上生活を送り、アメリカの鉄道網を作り始める。中国からの多くの移民が鉄道網を作った事を描いている映画があったなあ(注)。

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今の時代は、生活保護は厚く食うに困らないかも知れないが、ニートと呼ばれ、誇りを失った若者の時代である。

しかし、大恐慌の時代に、労働者はテロを繰り返し、それが引き金になって労働者の権利が生まれた。つまり、あんまり労働者をイジメすぎると工場を焼かれたり壊されたりするから程々にしなさいということであった(注)。

反面では、親の金で税の限りを作るバカどもが幅を利かす。成金が通帳の桁をSNSで自慢して女を釣る。いいなあ。「華麗なるギャツビー」の格差の時代である。なるならばソッチのほうがいい。まあ、正義の見方に懲らしめられない範囲で欲望を満足させたい。

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「きっとうまくいく」というのはインド映画だ。

この映画の舞台は、まさにグローバリズムが中小の自立企業を破壊して、行く時代である。物語はハッピーエンドであるが、実際にはこうは行かない。けど、楽しみたいではないか。僕は大好きな映画だ。

親たちは、子供に「好きなものになれ」という。それは裏返せば、お前に残るものはなにもないということだ。自分の会社の跡取りになれとも言えないし、知り合いの会社の部長にも合わせてやれない。所有するマンションもなく、家賃収入もないから何とか生きろということだ。

親は苦労して大学に子供をやるが、決して大学は豊かになる為の自己鍛錬の場ではなくなっていた。

僅かな成功者は自分を誇るが、宝くじだってもっと当たる率は高い。

僕は東京に出ていく時に父に言われたことをよく覚えている。「新発田には帰ってくるな」そう言われたのだ。

戦争で特攻隊で生き残り、帰ってきて子供を二人育てた父母、帰ってくるなと行ったのはどういう意図だったか今なら分かる。田舎の小さい枠の中にいたらこの枠の中のボスの飼い犬にならなければならないのだ。父も母もさんざんそういう目にあってきたのである。

結局15年後に僕は帰り、父と母の介護して二人をおくった。世の中はわからないものだ。

なんだかんだ、文句は有るけど楽しい映画です。何よりもヒロインが綺麗。結局成功した(写真家、ブロガー、特許所有の科学者)3人と、企業の飼い犬になった一人の物語なのです。「特許」というある意味の特権を得ることの出来た主人公が総取りするというものがたりなのです。そこは気に入らないけど、仕方がない。それ以外の子どもたちはどうなるのかはわからない。特権階級の子供が箔をつけるために大学行くとか闇の部分も多い。

親の家業が破壊的にだめになり子どもたちがどう生きるのかという裏の主題が描ききれていない。

それでもいい映画です。何よりもヒロインが綺麗。

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果たして僕の人生は上手くいくのだろうか?

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注)あんまり労働者をイジメすぎると工場を焼かれたり壊されたりするから程々にしなさいということであった

では、私たちは今の時代の権利を持てるだろうか?僕は疑問だ。

経営者は狡猾だ。海外に工場を持ち、部品を安く仕入れる。下請け(サプライチェーン)と言う名前はよく聞こえるが、下請けで自殺者が出ようと他所の国の話。上手く管理できないなら別な会社に流す。

仕事がなくなるのと抗うつ剤飲むのとどちらが良いかと言われれば抗うつ剤を取る。そして経営者は労働者の賃金を削って自分は賃上げである。100人の工場で一人あたり1,000円落とせば10万円だ。一人1000円は22日×8時間で割れば時給6円落とせばいい。

規模が大きいほど給料を決められる連中は儲かる。


厨房研究に使います。世界の人々の食事の価値を変えたいのです。