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雪に関する3つの話

ある地方でこんな話を聞いた。
「雪っていうのは、破られた恋文の欠片なんだって。昔、地上に夫婦の神が住んでいたんだけど、ある時夫が妻を怒らせて、妻は天へ昇っていってしまったの。夫は妻に帰ってきて欲しくて沢山手紙を書いて天へ送るんだけど、妻はまだ怒ってるからいちいちその手紙を破いて突き返すの。その破られた文が降ってくるのが雪なんですって。夫は、そんなものでも妻の触れたものだからって後生大事に回収してまわる。だから雪は放っておくと消えてしまうのですって。」


またある地方ではこんな話を聞いた。
「雪ってのはありゃあ、魂が帰ってきてんだよ。天に上った魂が、地上の様子が見たくて降ってくるんだ。そんで満足したら水になって地面に染み込んで、飲み水になったり畑の作物を育てたりするのさ。」


一番最近だと、こんな話を聞いた。
「お手紙だってのはおんなじですけどね、あれは破られた欠片じゃありませんよ。れっきとした手紙です。昔天から下りてきた雲の神が地上の山の女神と恋に落ちたんですが、雲の神は天へと帰らないといけなかったんです。雲の神は別れ際に、山の女神にある約束をしたんです。『私には文字が書けないが、氷の細工なら作ることが出来る。手紙の代わりに細かい氷の細工を沢山降らすから、それを自分だと思ってくれ』ってね。
だからほら、よく見ると雪って凝った形してるでしょう」


いずれも興味深い話ではあるが、今の私の正直な気持ちとしては「正体がなんでもいいから少し止んでほしい」である。


ー豪雪地帯に滞在中のある旅人の日記より


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2年くらい豪雪地帯に住んでいたことがあって、そこで、地元の人ですら「いや、例年はこんなに降らないんだよ?」と言う位の大雪の年に当たったことがあります。以来雪に対して微妙にロマンチックな気持ちを抱けないでいます・・・。見てる分には美しいんですが、あれ、正体は水ですからねえ、重いんですよねー。
高速の立ち往生はいまだに取り残されている車があるようですね。早く抜け出せることを祈るばかりですが・・・。
豪雨の被害に遭った時も思いましたが、最近本当に水(やそれが形を変えたもの)というものの恵みをもたらす側面と恐ろしい側面とを見て、畏れというか、水って力のあるものなんだなあと、今更ながら。

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