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ミュージカル「マタ・ハリ」を終えて Vol.2


M17 「寺院の踊り」

二幕はマタ・ハリが公演を続けながらスパイ活動を積極的に行なっている描写から始まります。
世界中を飛び回りまるでマタ・ハリが何人もいるかの様に仕事をこなしていきます。
それはアルマンのことを忘れようとしているかの様にも。


マタ・ハリの妖艶さと時間の経過をダンスと五枚の巨大な鏡で表現しています。
私は鏡の一枚を担当していましたが恐ろしく重い上に床の模様のせいで目印がわかり難く大変苦労しました。
自分だけ全然違う場所にいたこともあり、恥ずかしい思いを何度もしました。


M18 綱渡りの命

舞台は再び飛行場に。
女性達が男達の帰還を待っています。
その中にはマルガレータも。

「せめてあの人だけでもと祈るしかない」

そこへ通信兵(伊藤)が通りかかり、女性達は彼を問い糺します。
しかし聞きたくなかった言葉が聞かされてしまいます。

「残念ですが、殆どのパイロットが撃ち落とされました。」

泣き崩れる女性達。
そこへ一機の飛行機がボロボロの状態で戻ってきます。
乗っていたのはピエール。幸運にも生還したのです。
マルガレータはピエールに詰め寄りアルマンのことを尋ねます。
しかしピエールの返答もまた、受け入れ難いものでした。

「撃墜され命の保証はない 祈ってくれ彼の命に」

そして背景には打ち落とされた兵士達の亡霊が浮かび上がってくるのです。
哀しみの中舞台はドイツ側へと移っていきます。

亡霊として登場した男性達はスモークの中で歌っていました。
流石に亡霊なので咳き込むわけにはいかず、自分との戦いでした。


M19 あの日をもう一度

飛行機が撃墜されたもののアルマンは奇跡的に生きていました。
しかし深い傷と疲労、敵地での逃避という極限の状態です。
そんなアルマンを支えたのはマルガレータへの想いでした。

戻る必ずあの人の為 僕は死ねない 嘘を抱え」

すぐ側をドイツ兵(伊藤)が通りアルマンは息を潜めやり過ごします。
ただ、包囲網は確実に狭まっていました。
やがて2人のドイツ兵(上条・竪山)にアルマンは見つかってしまいます。
抵抗するも心身共に限界だったアルマンは捕まってしまうのでした。

この際ドイツ兵(竪山)が「パイロットは殺さない、捕虜として連れていく」と発しますが、それは地上戦闘員と違いパイロット達は戦闘中の指示系統が機能するのは機上のみ。つまりは地上に降りた段階で同じ軍人でも「戦闘能力を失った軍人」とされていた様です。
一種の「騎士道精神(馬を降りた騎士は殺さない)」に近いのかもしれません。

因みに上条、竪山共に身長180cmを超えますがこの二人が両脇から抱えても尚体が有り余る東アルマンの長身振りは感嘆の一言でした。三浦アルマンでもかなりの長身なのに・・・
もし私がドイツ兵のどちらかを担当していたら引き摺るか自力で歩いてもらうことになっていました。・・・フン!


M20 あなたがいるから

深夜にラドゥーの自宅をマタ・ハリが訪ねます。
目的はアルマンの居場所を聞き出すこと。
マタ・ハリにとっては藁をも掴む想いだったでしょう。
まさか目の前の人間がアルマンを異動させた張本人だと知らないマタ・ハリはこれ迄のスパイ活動を引き合いに出し何とかしてアルマンの居場所を引き出そうとします。

「私の力で何もかも動く あなたのことは私が守ろう」

酒を勧めながら優しく語りかけるラドゥー。
然しマタ・ハリはベルリンのベーリッツ病院に収容されていることを聞き出すことに成功するのです(割とあっさり)。
用は済んだとばかりに急いで立ち去ろうとするマタ・ハリに対しラドゥーは

「私の許可証がなければお前は列車に乗れない筈だ」


と不気味な空気を纏い

「取引を始めよう わかるだろう? 選べばいいんだ目の前の男を 愛などなくてもいい」

堂々と見返りを求めてくるラドゥー。
しかしマタ・ハリは間一髪逃げ出すのでした。

マタ・ハリの後ろ姿を追いながら止まらない感情を爆発させるラドゥー

「あなたがいるから眠りを忘れた 深みに嵌った哀れな男よ 戻り道はない あなたがいる限り」


この一連の流れを見ていた人物が一人。
妻であり、パンルヴェ首相の娘でもあるキャサリン(飯野)です。

「情報が欲しくて俺を誘惑しにきた。追い返したよ。」


悪びれる様子もなく嘘を吐いたラドゥーにキャサリンは騙されません。

「あなたって・・・最低ね。」


なす術なくラドゥーはキャサリンの信用を完全に失うのでした。
首相の娘ということも含めてラドゥーが失ったものはあまりにも大きくダメージは計り知れません。(せめて自宅で暴走するのはやめとけば良かったのに)

初演ではキャサリンの台詞は「あなたには愛想が尽きたわ」でした。
再演で変更された理由は初演よりも強く非難したかったからだそうです。

まぁ、ずっと見てたし。
マタ・ハリが嫌がることを見越して「追い返した」っていうのは些か・・・いや、無理か。

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