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田原イコール物語7「ワールドカフェとの出会い」

予備校で「壇上の賢人」しかやったことのなかった僕にとって、「グループで学びあう」とか「ファシリテーション」とか、全くイメージが沸かないものだった。

「グループで学びあう」ことで、どうやって理解が深まるのか?その原理を知りたかった。「反転授業の研究」でワールドカフェというワークショップ手法を紹介してくれる人がいて、早速、『ワールドカフェをやろう』という本を購入した。

書籍の中に機械論的世界観と生命論的世界観が対比された表があってはっとした。自分がかつて、粘菌の研究者を志して自己組織化の原理を追求していたことと結びついた。20年間封印していた想いが噴出して、これは、自分がやるべきことだという気持ちになった。

著者の香取一昭さんに長文のメールを書いて送った。返事が返ってきてスカイプで話すことになった。自分の知らない世界がそこに広がっていることに興奮した。「マレーシアに住んでいる状況でワールドカフェのことを学ぶにはどうしたらいいでしょうか?」と質問すると、Amy Lenzoというアメリカ人のファシリテーターが、オンラインでワールドカフェホスティングの講座をやっていることを教えてもらった。調べてみると、翌月から8週間の講座が始まるタイミングだった。ここに飛び込まないと未来は開けないと思った。

Amyの講座に参加している人の多くはプロのファシリテーターだった。アジアから参加している人は僕一人だったし、ファシリテーションの素人も僕一人だったし、英語が十分に使えないのも僕一人だった。ワールドカフェの文献をPDFで渡されて事前に読むように指示された。第1講の宿題は、「1章を読み、心に残ったことを引用し、その理由を書け」というものだった。Moodleというプラットフォームに掲示板が設定され、受講者がそこに書き込んでいった。辞書を引きながら英語を読むのに膨大な時間がかかった。自分の言いたいことを英語で書くことにも苦労した。読んでも内容がよくつかめなかった。

ところが、掲示板に書いてある他の人の投稿を読んでいくと、第1章の内容が分かってきた。自分一人で読んでも理解できなかったのに、たくさんの人の投稿を読んでいるうちに分かってきたのだ。これが、グループで学ぶ意味なのかと思った。自分が体感したい学びの原理がそこにあることが分ってモチベーションが沸いた。講座はMoodleの掲示板でのやりとりとGoToMeetingというWeb会議室に集まる対話セッションから構成されていた。後半になるとグループごとにワールドカフェの文脈と問いをデザインするというワークになった。僕はロシア人の女性と同じグループになり、スカイプでミーティングしながらワールドカフェのデザインを生まれて初めてやった。正直、とても大変な8週間だった。途中で参加しなくなった人も多かった。でも、僕は脱落するわけにはいかなかった。ここで何かをつかんで次に進むのだという強い意志があったから、最後までやりきれた。

Amyのおかげで、学びあいの原理を体感することができた。MoodleとGoToMeetingを組み合わせたオンラインワークショップのやり方も分かった。次のステップは、自分たちでやってみることだと思った。「反転授業の研究」のメンバーも1000人を超え、次のチャレンジを必要としていた。反転授業に関するオンラインワークショップの企画を立ち上げることにした。

■田原イコールのクラウドファンディングは、残り64日。24%達成

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