田原イコール物語10「自己解体のためのペイフォワードプロジェクト」
教育システムに組み込まれている抑圧装置の存在に意識が向き始め、それを言語化していくにつれて、だんだんと学校批判のような言葉が口から出てくるようになった。僕も、教師を批判したいわけではなかった。彼らが真摯に仕事に取り組んでいることを知っていたから。
でも、どうしても立ち止まれなかった。批判の刃が自分に刺さり、大学受験を支援する物理ネット予備校の仕事を続けるのが苦しくなった。毎週発行していたメルマガが月1回の発行になり、ついには、ほとんど発行しなくなった。どう進んだらよいかが分からなくなった。
そのころ、様々な社会的な取り組みが目に入るようになり、クラウドファンディングを応援する機会が増えていた。本気で社会を変えようとしている人たちを応援するために、1万円とかを支援として払っていた。しかし、一方で、物理ネット予備校はグーグルに10万円の広告費を払って集客していた。
「社会を変えたい人に1万円で、グーグルに10万円じゃ、今の社会の継続に加担している。それでいいのか?」
と思った。しかし、グーグルに払うお金を止めれば、人は集まらなくなり、収入は途絶えてしまう。海外生活を維持できなくなってしまう。収入が減ってしまう。。。
と考えているうちに気づいた。
「自分は、お金が無くなることが怖いのだ。」
それが、自分が目を背けていた不都合な真実だなと思った。この恐怖によって自分の選択を方向付けられていることに気づいた。お金が稼げるかどうかに、自分の思考が強く制約されているのだと思った。これを壊さないと、次のフェーズに進めないという気がした。
自己解体とは、自分が逃避している根源を振り返って見つめ、根源の方向に歩いていくことによって起こる。それを、若いころの自己解体の経験を通して知っていた。
「一番恐れていることをやることで、未来が出現する」
という謎の核心があった。
グーグルに毎月払っていた10万円をストップするだけではだめだ。もっと反対側に進むんだ。ということで、毎月10万円、応援したい人を支援するペイフォワードプロジェクトを始めることにした。
自分は、誰に感謝していて、誰を応援したいか。ペイフォワードプロジェクトにふさわしい人はだれか。と考えたとき、Amy Lenzoの顔が浮かんだ。彼女が導いてくれたおかげで、「反転授業の研究」の活動が生まれ、かけがえのない友達がたくさんできたのだと思った。
AmyにFacebookメッセンジャーで「Amyのおかげでコミュニティを作ることができた。そのことへの感謝を示すために10万円を送りたい」と伝えた。
Amyは「あなたはAmazingな人ね。何度か話さない?」と言ってきた。Amyとの対話はかけがえのない時間だった。ワールドカフェ10周年イベントで来日する直前だったこともあり、Amyのことを多くの人に知ってもらえるような記事を書くことにした。オンラインワールドカフェの参加者にも招待された。何かが動き始めた。
それからは、毎月2人の人に5万円ずつ支援することにした。誰を支援すれば後悔しないのか、自分としてしっくりくるのか、を、ずっと考え続ける日々が始まった。自分の意識が明らかに変わった。この意識で渡す5万円は、相手にも大きなインパクトを与えた。
「今までやりたかったけどやれなかったことを、これをきっかけにやります」
という返事が返ってくることが多かった。結局1年間続けた。たくさんのドラマが生まれ、たくさんのプロジェクトが発生した。この渦の中で生きていけるという確信が生まれた。その確信に「生命論的安心感」という名前を付けた。お金が無くなることへの恐怖が消え、お金に条件づけられていた自分自身が解体されていった。謎の何とかなる感を手に入れた。
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