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【キュライオ出資のご報告/対談】バイオベンチャーの非常識なチャレンジが世界を救う

この度、クライオ電子顕微鏡による構造解析をベースとした創薬、研究開発事業を行っている株式会社キュライオに私、嶺井個人として出資をさせて頂きました。

今回の出資の経緯、キュライオが目指すビジョンをキュライオ代表取締役CEOの中井基樹さん、嶺井へのインタビューを通じてご紹介させて頂きます。


■ノーベル化学賞を受賞した技術が創薬に革命をもたらす

―本日はお忙しいなか、ありがとうございます。早速ですが、中井社長からキュライオの事業内容をご紹介いただければと思います。

中井:キュライオの中井です。今日はよろしくお願いします。社名の由来にもなっている「クライオ電子顕微鏡単粒子解析法」という構造解析の技術を活用して、自社での創薬ならびに他社の創薬の支援を行うために立ち上げたのがキュライオです。創業からまだ3年弱ですが、すでに自社での創薬のパイプラインを構築し、クライアント企業の創薬支援もスタートしています。 

キュライオ 中井社長


―クライオ電子顕微鏡単粒子解析法というのは、具体的にはどういった技術なのでしょうか。

中井:2017年にノーベル化学賞を受賞した技術で、簡単にご説明すると、タンパク質、もしくはタンパク質と一緒になっている化合物の構造を3Dで解析することができるものです。これまで構造解析の主流はX線でした。X線は汎用性が非常に高く、数十年にわたる改良の結果、現在は比較的低コストでの解析が可能となっています。

タンパク質を横・上・下から見た画像。
クライオ電子顕微鏡は3Dで見られるからこそ様々な角度から視認できる


ただ、X線を使った解析にはいくつかのハードルがあります。特に高いハードルが、結晶化しなければ分析できない点です。そもそもタンパク質の結晶化は難易度が高いものであり、結晶化できないタンパク質も数多く存在しています。また、結晶化することで構造が変わってしまうタンパク質もあるため、それらはX線での解析が意味をなしません。

一方のクライオ電子顕微鏡単粒子解析法は、結晶化するプロセスが不要で、直接、タンパク質の状態を3Dで確認できるというメリットがあります。 

嶺井:結晶化をしなくても見ることができる。つまり、これまでよりもスムーズに創薬を行えるということですね。

中井:そうです。基礎研究の効率化ができて、これまで医薬品のターゲットにならなかったものも創薬対象になります。これは創薬分野における大きな革命と言ってもよいと思います。


―その革新的な技術を通して、キュライオが実現したい世界、ビジョンを教えてください。 

中井:今現在、治療方法が確立されていなかったり、薬が高価なために手が出せなかったり、副作用により服用することがストレスとなってしまっていたりと、日本全国、そして全世界には、病気で苦しい思いをされている方がたくさんいらっしゃいます。キュライオは、一人でも多くのいま苦しんでおられる患者さんに、一日でも早く適切な薬を届けていきたいと考えています。


■外資系金融出身の二人は出会うべくして出会った!?

―次にお二人のこれまでの関係性についてお聞きしたいと思います。中井さんと嶺井さんとの出会いのきっかけは共通の知人からのご紹介と伺っていますが、いつ頃からのお付き合いなのでしょうか。 

嶺井:最初にお会いしたのは、2016年10月だったと思います。

中井:そうですね。当時の上司から「中井君に紹介したい人がいる。性格だったり、ものの考え方、キャリアという面で似たところがある人だから、きっと将来のキャリアを考えるうえで参考になると思う。一度会って、いろいろと教えてもらったらどうだろうか」と紹介してもらったのがきっかけです。 

嶺井:中井さんはJPモルガン、私はモルガン・スタンレー出身で、その後、IT系のスタートアップに参画しており、キャリアも似たところがあります。自分で言うのもなんですが、一番の共通点は、醸し出す空気感だと思います。中井さんが当時在籍していたDeNAで初めてお会いした瞬間に、そのことを感じました。一般論ですが、外資系の投資銀行出身の方は、ガツガツとも強いとも言えるオーラを放っている方が多いのですが、中井さんと私は、外にオーラを放つというよりは、内に秘めるタイプですよね(笑)

 中井:それは私も感じました(笑)。似ているというのもおこがましいのですが、お会いした瞬間に紹介された理由がはっきりとわかりました。


―嶺井さんと出会ったあと、中井さんはどのようなキャリアを歩まれたのでしょうか。 

中井: DeNA退職後は、IT系のスタートアップでCFOとして、資金調達、上場準備、新規事業の立ち上げなどを経験し、CFOとしてのチャレンジに一旦の区切りがついたタイミングで退任しました。急いで次を決めるのではなく、今後のキャリアについてじっくりと考えたいと思っていたので、半年くらいはとにかく人に会って話を聞いていましたね。政治家、スポーツ選手、役者の方……、ビジネスをするなかではあまり接点のない職種の方々にお会いして、世の中のことを勉強したいと考えたからです。

その中の一人が、のちにキュライオを共同創業する東京大学教授の濡木理さんでした。濡木教授は構造生物学の世界的な権威なのですが、とても気さくな方で、何度も話しているうちに、この人と一緒に仕事をしたいと思うようになりました。

濡木教授自身は、専門分野の知識、技術を世の中に役立てたいと考えている一方で、「自分には経営はできない」と明言されていたので、経営の部分を私が引き受ける形で、キュライオがスタートしたというのが、創業の経緯になります。

嶺井:キュライオがスタートする直前にも、一度お会いしましたよね。 

中井:はい。示し合わせたわけではないのですが、嶺井さんに連絡するタイミングはいつも、人生のキャリアを考えるタイミングと重なっているような気がします。

嶺井:ちょうど私も前職を退任するタイミングだったので、二人で今後についていろいろとお話ししたのを覚えています。


■キュライオに出資を決めた一番の理由

―今回、嶺井さんはなぜ、キュライオに出資されたのでしょうか。

嶺井:理由は2つあります。

1つ目は何と言っても、中井さんの人柄です。6年近く中井さんとご一緒する中で、ここまで誠実で、かつ内に秘めた熱い闘志を持ち続けられる人はなかなかいないと感じていました。そんな中井さんが立ち上げたチームの末席に加えてもらって、チャレンジを応援したいと思ったことが一番の決め手です。

もう1つは、クライオ電子顕微鏡単粒子解析法を使って、病気に苦しんでいる方々を創薬という形で支援するというビジョンに共感しただけでなく、それを実現するだけの確かな技術力を持っている会社だと考えたからです。


―中井さんが出資を受けられた理由もお聞かせください。

中井:最初に出資のお話をいただいたときは、「あの嶺井さんから認めてもらえた!」と素直に嬉しかったのですが、正直な話をすると、そのときすでにエンジェル出資のフェーズは終わっていました。

そのため、普通だったらお断りするしかない状況だったのですが、お断りせずに出資を受けたのには理由があります。

私はキュライオを創業する際、あるテーマを設定していました。それは、尊敬する人、好きな人と仕事をするということです。濡木教授と一緒に創業をした一番の理由もそこにありました。尊敬する嶺井さんと仕事をするチャンスを逃したくない。もっと言えば、株主としてチームに加わっていただくことで、嶺井さんからもっと多くを学びたいと考え、出資をお受けする決断をしました。

嶺井:ありがとうございます。すでに個人から出資を受けるフェーズではなかったにもかかわらず、すぐに動いていただき、こうやってご一緒できて本当に嬉しく思っています。


■サイエンスのバックグラウンドがないからこそ、できることがある

―最後に、中井さんのキュライオの今後への意気込みをお願いします。 

中井:創薬は専門性も難易度も高い分野ですが、残念ながら、私にはサイエンスのバックグラウンドはありません。しかし、だからこそできることがあると私は信じています。
他業界のイノベーションの例を見ても明らかですが、新たな可能性、新たな発明というのは、1つの事業領域をブラッシュアップすることからではなく、異業種との掛け合わせの中でこそ生まれるものです。だからこそ、私がやる意味があると思っていますし、非常識なチャレンジができないのであれば、私がこのポジションにいる必要はないとすら考えています。ですから、これからも、世界の人々に一日でも早く新しい薬を届けるために、過去の常識にとらわれず、積極的にリスクをとった挑戦をしていきたいと思います。

嶺井:病気で苦しんでいる世界の人々を一刻も早く救うには、中井さんがおっしゃるように、これまでと違ったアプローチが必要です。微力ながら私も、日本発のディープテックとして世界に先駆けたチャレンジを続けるキュライオを応援していきます。 

中井:ありがとうございます。がんばります!


―本日はありがとうございました。


株式会社キュライオ
https://curreio.com/