その“頑張れ”はずっとずっと残るはずだから｜ #バーチャレ in宮城

「頑張って！」「ラスト1周だから、前向いて！」

中高生たちを引っ張るペースメーカーたちの声が容赦無い日射しが注がれるトラックに響いた。

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新型コロナウイルスの影響で中止となった「全中」や「インターハイ」の代わりに中高生が活躍する場として創られた「バーチャレ（Virtual Distance Challenge）」。全国各地でそれぞれの選手がそれぞれの場で走り、タイムと動画を専用サイトに申請・投稿し、その中でランキングが決まっていくこの大会は1ヶ月ほど前から各地で計測会が開催されてきた。

Virtual Distance Challenge - 記録を記憶に残す夏。 | VirtualRace.jp

僕がいる宮城でもそのアクションは起こり、知り合いでランニングチームを主宰する阿久津美和子さんを中心に『バーチャレ in 宮城』を企画し、8月15日、加美町陶芸の里スポーツ公園で開催された。

8月15日、16日に開催する情報は8月初頭から発信していたが、現在宮城県内で「大会開催」という形に対して貸出をしてくれる陸上競技場は数少なく、実際に開催する陸上競技場が確定し、要項が発表されたのは約1週間前の8月7日のことだった。この事情からも今各地で行っているバーチャレの計測会がどれだけ頑張って開催にこぎつけているのか容易に想像つく。

開催当日、バーチャレ in 宮城の会場「加美町陶芸の里スポーツ公園」は30℃を優に超える暑さに包まれていた。15時を過ぎ、陽が傾き始めたとはいえタータンから照り返される熱気でトラックはまだ暑い。

実はこの陸上競技場、僕にとっては中学生のとき人生で初めて陸上大会に出たトラックであり、高校時代は合宿で夏と春に来ていた。いろいろと思い出のある場所。

今回のバーチャレin宮城は、小学生から高校生まで合わせて20人ほどが参加。宮城県は先週から今週始めにかけて高校総体の代替大会が開催され、来週には県選手権も開催されるため、高校生の参加は少なかった。でも、こじんまりとした規模で行われるのも一人一人の頑張りを間近で感じられて楽しかった。

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競技は16:00に小学生800mからスタートし、中高生800m、小学生1500m、3000m、100mと続く。

小学生の800mと1500mでは、800mでゴールした後に苦しがりながら屈んでいる女の子が印象に残っている。いつもの大会なら小学生の出る種目は気にせずにいただろう。でも、こんなにも間近で走る人たちの姿を見たからこそ、小学生の子たちの必死さを目の当たりにした。

その姿を見た時にバーチャレのコンセプトである「記録を記憶に残す夏」を思い出した。そっか、記憶に残すのは走る本人だけじゃない。走る姿を間近で見たボランティアや家族、隣で走ったペースメーカー、チームメート全ての人にとっての記憶に残ることなんだと思った。たとえインターハイや全中の舞台に立てない選手であっても、一人一人の走る姿とストーリーがある。

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中高生800mと3000mは本当に本当に速かった。加美に向かう車のなかでペースメーカーを担当する同い年の子が「引っ張るの大変…」と語っていたが、800mで2分を切るかもしれないというスピードで最後のストレートに入ってきた彼の姿は迫力があって、力強かった。

もっともっと速い選手はいる。でも、そうではなくて自分の記録を超えることにひたむきに走る姿に「頑張って」と声を漏らさずにはいられなかった。

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今回、バーチャレin宮城でSNS担当として走る姿を追っていて一番印象に残ったのは選手の隣を走るペースメーカーの声かけだった。

「頑張って！」「ラスト1周だから、前向いて！」とかけたその言葉はずっとずっとその子たちの記憶に残るだろうと思った。その言葉ではないかもしれない。もしかしたら、その言葉のおかげで諦めずに「できるかもしれない」と前を向いて走ったことが人生のずっと後になってふと思い出されるかもしれない。

バーチャレでペースメーカーがいる意味はここだと思う。レースにおいて隣を走るペースメーカーからかけられた言葉や走る背中はずっとずっと記憶に残ると思う。

宮城の子たちが集まって走る小さな大会だったからこそ、見れる一人一人の姿がそこにはあった。短い時間だったけど、しっかりと記憶に残る夏の日になった。

暑い中走った選手のみなさん、力強い走りと言葉で引っ張ったペースメーカーのみなさん、短い時間の中で大会を創り上げた阿久津さんはじめ運営&ボランティアのみなさん本当にお疲れ様でした。