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書いて、寝かして、起こして、卒論と格闘した約2ヶ月。

先日、12月28日。実に2ヶ月ものあいだ格闘し続けてきた「卒論」の初稿が完成した。初稿が完成しただけで、31日のゼミ内提出を経たあとゼミの先生からのフィードバックがあり、それに沿ってリライトして来年1月12日〆切の本提出を迎えるが、ひとまず完成は完成だ。その日の夜はコンビニで食べたかったMr.CHEESECAKEのアイスとビール(箱根駅伝が近いのでもちろん星のやつ)を買い、自分だけのささやかな打ち上げを行なった。

それにしても、長かった。

個人的に「長かった」にはふたつの意味が含まれている。

一つは単に執筆に対する格闘の時間(つまり2ヶ月間)の長さ。もう一つは、卒論というものにぶちあたってからモノがカタチとなるまでの長い年月のことを指している。

今回僕は『地域活性化を目的とした市民マラソン大会のあり方についての研究 ー東北の市民マラソン大会を事例としてー』というタイトルで卒業研究を行なった。ここに来るまでがとかく長かったのだ。

①2万字以上の壁を感じた4年の時間

僕が最初に「卒論」に向き合おうとしたのは2017年のことだった。僕の人生については省くが、一応2017年まではストレートで4年生まで上がってきた。当時、僕はランニングとは全く違う軸で卒業研究を計画していた。僕が高校生の時から経験してきた、被災地における10代のキャリア支援、マイプロジェクトの伴走について研究をしたかった。

しかし、自分自身の進路について悩んだことから卒業せずに留年することを決めた。卒論を書くのは翌年に持ち越された。2018年、5年生になった自分は結果からいうと卒業できなかった。年度途中に学校に行けなかったことや卒論の作業を中断するできごとがあったから。

6年目はご存知の通り休学してラントリップでのインターンを経験した。

そして、7年生。2020年も終わる今振り返ってみると、僕は「大学4年生」そして「卒論の完成」に4年の時間を費やした。今、自分で突っ込みたい。おかしすぎるだろ。

今になったから話せるけど、今年も体調や資金的な問題から大学を辞めるのではないかという時期があった。正直、その頃は卒論どころではなかったし、卒論をやったとて大学を辞めるなら意味がないと自暴自棄になっていた。

普通であれば、夏休み頃から文献調査を行なったり、ヒアリングを行なったりするものの手をつけたのは今年も残り2ヶ月となった11月頭。つまり、通常であればガントチャートで左上から右下へと塗り潰された帯が斜めに降りてタスクを完了していくところ、文献調査からヒアリング、執筆まで全て同時並行で行うという奇行ぶりを発揮した。しかも、そのほかに就活にバイト、他の授業も受けるという詰め込みぶり。なんじゃそりゃ。

やはり、4年生を伸ばしてきた僕にとって積もっていたのは「2万字以上のプレッシャー」だった。「木幡は力があるからできる」と先生から言われれば言われるほどキツかった。ちゃんとしたものを作らなければいけないと思えば思うほど、どこから手をつけていいか分からなくなっていた。

②傑作なんてここで作らなくていい

それを救ってくれたのは学生相談室のカウンセラーの人から「学生の頃書いた卒論なんて今になってみれば微妙だったと思うし、ここで傑作なんて作る必要ない。」と言われたことだった。

とにかく微妙でもいいから、書き出してみる。大変ではあったけど、文献調査をしながら卒論を書いていくという荒治療は功を奏した。今日は2,000字まで行こう、今日は5,000字まで行こうと区切りながら前に進んだ。ゴールから逆算してはっきりとしたものが見えているわけではないけど、やりながらだんだんと霧が晴れていくことを感じた。

あらゆる論文を読んで、書いて、寝かして、次の日起こして。

他のことをやりながら、使える時間を全て卒論に向き合った。電車での移動中やちょっと空いた時間も使った。起きている時間はほとんど論文を読むか、なんらかの作業に時間を割いているのではないかと思うほど。

その日行き詰まってモヤモヤしていた内容を寝かして、次の日もう一度執筆に向き合ったり、新たな文献を読んだり、はたまた他の作業をしていたりすると「こう書けばいいのか!」と閃いた時もあった。

この2ヶ月の知的格闘の作業を通じて得た学びは「向き合い続けると、昨日見えなかったものが今日見えるかもしれない」「だいたいのことは先人によって論じられている」の2つだ。

ここでいう「向き合い続ける」とは、ただ念じるのではなくアウトプットとインプットの両方を同時に続けることで出せる答えがあるということ。例えば、僕の論文ではマラソン大会の現状と課題について述べる時に「廃止大会数」を課題のファクトとして使おうとしていた。しかし、探せど探せどはっきりとした数字が出てこない。そこに悶々としたまま執筆と文献調査を続けたある日、経済効果が同じ都市規模、大会規模の大会どうしでも2倍〜4倍異なることを知る。

長野マラソン実行委員会では、昨年の大会について、マラソン参加者へのアンケート調査などを基に宿泊費、交通費などを推計し、大会運営費などを加えて経済波及効果を9億5,330万円と算出しました。県外からの参加者が約6割で、そのうち77%が宿泊し、ランナーの同行者も4,000人程度宿泊したと推計されることから、下関海響マラソンの4億4,290万円(2011年、下関海響マラソン実行委員会調べ)、愛媛マラソンの2億9,227万円(2012年、いよぎん地域経済研究センター調べ)など同規模の地方都市マラソンと比べて、経済効果が高くなったと考えられます。
(一般財団法人長野経済研究所「市民マラソン大会が地域に与える効果」より引用)

この数字を見た時に、近視眼的にこの数字が必要だと思っていた他にも自分の主張に引用できるものは転がっていることに気づいた。

二つ目の「だいたいのことは先人によって論じられている」については自分のプレッシャーともリンクするが、すごいものを作ろうとしていたけど、そのすごいものは世の中の論文にほとんど書かれていたという事実に気づけたことだ。悲しいかな99.9%は存在していた。でも、99.9%をリサーチしてロジックを通すことはとても大事なことだ。

③インターンで聞いていたことがこういうことか!と学べた

今回、文献調査をしていて感じたのはマラソン大会がいかに観光や宿泊に支えられているかということ。雑誌「ランナーズ」やRUNNETの運営を行うアールビーズの調査によるとランナーの多くは「日帰り参加」できることを条件として出場大会を選んでいるのだそう。

宿泊や観光によって地域が潤うというのを数字を持って示された。だからこそ、多くの大会が期待したほどの効果をあげられていないと分かる。

そういうのを見ているとラントリップが行なっていることのWhyが自分事として見えてくる気がした。例えば、RuntripMagazineにレース参加後の延泊についての記事があるけど、この記事の背景にある課題の見え方も卒論を書く前と後では解像度が違う。

そもそも、なぜランニングと観光(旅)を掛け合わせたのかといったところも近年の地方創生に対する政策のうちスポーツに関するトピックを見ていくと明らかにスポーツツーリズム(特にDoスポーツ)に関するものだ。また、大森さんが事業に対して説明する時に話していた医療費増大のこと(今回の論文には盛り込みませんでしたが)も厚生労働省の資料をみるといかに健康に対する対策が必要なのか見て取れる。

それでも、大人から見たら表面しかなぞれてないものだとは思うけど、今回ファクトを掴むという流れを踏めたことは大きな経験値になった。

④大学生として一番学びに真摯になれた時間である

今思えば、僕は大学での学びを疎かにしてきた。大学の外で活動することがあたかも学びになっているように見せてきた(もちろん、学びになったものもある)し、想いが大事だと思ってきた。

高校生の時であれば、想いだけあれば行動できたかもしれない。もちろん、想いは行動を支えるベースになる。しかし、何をするにも知識と事実を見つめる眼がなければ、身が詰まったものには変えていけられない。ここ5年ほどはそのことに頭打ちを感じながら、向き合うことから逃げていた時間だったのかもしれない。

復学して卒業を目指す1年間は大学生として一番学びの必要性を感じた時間だった。昨年度はアウトプットに全振りしていた時間で、何もないなかで絞り出そうとしてた時間だった。そんな中で迎えた大学7年目は、知識を蓄えること、行動してきたことと学びを結びつける絶好の機会だった。

今さらながら大学を辞めないで、ここまで来れてよかった。

この卒業論文を書いたのは、奇遇にもコロナ禍でマラソン大会が続々と中止になっていく2020年になった。きっとどの年に書いたとしても、学びの重要性は感じただろう。ただ、この「マラソン大会」をテーマにした卒論はスポーツが岐路に立たされた2020年に書いたことに意味があるような気がしてならない。また、結果論としてだが、ラントリップ入社を控えての論文執筆となった。

今年は人との交わりが多く途絶えた年だったが、ここで腰を据えて論文執筆に臨めたことは、これから仕事をしていく自分にとって大きな財産になっていくと思う。

どんなに小さな動きであったとしても、日々のインプットとアウトプットの積み重ねが大きくものを言う。そして、論文執筆とは孤独な作業だ。どんなに相談に乗ってもらったり、指導してもらっても、最後はたった一人で自分のテーマへと向き合い続ける。混沌とした、知的格闘の暗闇を走り続ける。これは長距離選手にも通じるところがあるような気がした。

たった、2万字。されど、2万字。

書き終えられて本当によかった。

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