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【無料記事】エブリシング・バブルの崩壊(エミン・ユルマズ)を読んでみた。※一部分要約と感想

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2022年は、欧米先進国はガタガタな株式市場を経験した。
S&P500指数は年間19.44%の下落となり、これはリーマンショックのあった2008年の38.49%下落を経験した以来の下落率となった。
また、その中で、年間リターンがプラスとなったのはエネルギーセクターのみで、59.05%上昇であった。
その中で、日本はどうだったかと言えば、TOPIXが年間5.05%下落となったが、アメリカと比べれば遥かに軽傷で済んだことが分かる。
今年のアメリカのGDP成長率予想をが+0.5%と見込まれる中、日本のGDP成長率予想を各シンクタンクは+1.3%~+1.9%を見込んでいる。
相対的に日本がアメリカよりも有利な環境予想が出ているということは、
かねてより日本推しの第一人者であったエミン・ユルマズさんの言う通りのシナリオになっている気もする。ちなみに昨年のアメリカの悲劇的相場はGAFAバブル崩壊が牽引したと考えられるが、エミンさんはこれも事前予想していた。
エミンさんが日本経済をどのように見ていたのか改めて確認し、投資戦略に生かせるものを取り入れていきたい。
このコラムでは日本株投資に特に関係があると思われる
第3章 難儀きわまるインフレがやってきた
第4章 日本経済の今後を考える
についてまとめた。

【要約(ネタバレ)】

【第3章】 難儀きわまるインフレがやってきた!

・世界のインフレの余波が日本にも?引き締めに転じざるを得なくなる日銀

2022年の大きなテーマになりそうなのがインフレである。
すでに欧米ではインフレと利上げが織り込まれているが、久々に日本でも名目インフレ率が大きく上昇するかもしれない。世界の大きな中央銀行はインフレ抑制に動いている。ECB金融緩和を見直し、FRBはテーパリングを加速させ、利上げの回数の増加まで検討している。つまりFRBは「金融の流れが緩和から引き締めへと変わる」とシグナルを発し始めた。
そうした流れを受けて日銀も引き締めに転じざるをえなくなる。

・必ずしも経済にプラスとして働かないインフレ

「インフレとはある国の通貨の数量がその国の経済活動の健全な発展に必要以上、ないし有害な程度に増加する事である」(石橋湛山 元首相)

「油は機械になくてはならぬ。それがなければ円滑に運転しないが、その量が多すぎると、また機械の運転を阻害する。少なくてもいけないし、多すぎてもいけない」(英経済学者 マーシャル)

「インフレとはインフレーションの略で、継続的に物価が上昇し続ける状況の事です。物価はお金と物の交換レートの事だから物価が上昇することは貨幣価値が低下することは同義です。小幅かつ安定的に推移するならば、経済活動にとってプラスに働くという見解もある」(金融庁)

小幅とは年率2%という国際的なコンセンサスが存在している。
2%程度のインフレであれば経済も成長するし給料も上がる。
しかし日本の場合、残念ながら長年2%のインフレを達成することはなかった。
インフレ下では借金の負担が軽くなるので、借金をしてでも大きな買い物をしようとし、資産と負債のバランスシートを増大させる。
物価上昇に伴い、企業や家計が保有する不動産屋株式の資産価値が上昇する。
だがインフレには問題点も多く、必ずしも経済にプラスとして働くとは限らない。
トルコのようにハイパーインフレに陥ると、毎日価格が上昇し、核の妥当性がわからない。消費や投資の判断を的確に行い事が難しくなり、効率的な資源配分が行われなくなる。
借金を抱えている人は借金がどんどん減っていくのでいいのだが、逆にお金を貸している人にとってはものすごくマイナス。

・理にかなっていたデフレ下の日本人の判断

デフレに関して日本政府はこう定義づけている。
「単に物価が下落することを差すのではなく、物価の下落を伴った景気の低迷」
デフレとは、インフレとは反対に継続的に物価が低下し続ける状態の事。逆に貨幣価値は上昇する。物の値段が下がっていくため、物を買うより現金で持っている方が有利となり、自ずと消費は低迷する
 これは今まで日本で起きていた現象である。日本人の多くはなるべくお金を使わず、金利が着かなくても預金していた。日本人の判断は理に適っていた。
デフレ下においては、インフレ時とは反対に販売量の縮小と販売価格の下落の両面で売上収益が振るわないなか、企業は設備投資に消極的になる傾向が強い。

今後意図的にハイパーインフレを起こして、いくらでもお金を刷れる国は一気に借金をチャラにしようとする可能性もありえる。
第一次世界大戦後のドイツは何度もそうした。
日本が同じことをしようとした場合、
日本は対外債務がないことから、大損を被るのは日本国民だけ。

・インフレ時代には株か実物資産で運用すべき


こうした危機を想定した場合、2つの方法がある。
一つ目は、不動産、金、クラシックカー等々、実物資産を買ってモノに変える。
もう一つはやはり株。
これから起きるインフレの時代が長く続くかどうかは判らない。資産バブルが崩壊した後、低インフレの時代に戻るかもしれない。ただし、少なくともこれから暫くはインフレが進むわけだから、自分の資産については株もしくは実物資産で運用すべきである。

・ベースマネー増に乗らなかった日本人の国民性

マネタリーベースとは、日本銀行が金融部門を含めた経済全体に供給する通貨量を集計した統計で日銀の総資産金額の事を指す。

マネタリーベース
=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」

日本:2012年9月~2021年9月の9年間で4.8倍に。
・アメリカ:同期間で約3倍に。
(ただし、2008年9月のリーマンショックから比べると約10倍)

米国のみがこんなにインフレが高まり、日本のインフレ率が大きくならなかった理由は国民性の違い。
ベースマネー(日銀が銀行に供給するお金)が増えた後、
・日本人は借金しなかった。それどころか借金返済を勧めた。
・アメリカ人はすぐに借金に走った。米国企業も同じでお金を貯めずに借金した。
現在も変わらない。
米国企業の債務は増え続け、お金を銀行から借りては自社株買いを進めている。
日本の民間企業の債務はどんどん減り続けている。
「デレバレッジ」の状況。
このような状況ではトータルマネーは増えず、増やすためには市中銀行が日本企業や日本人にどんどん貸し出さなければならない。
そこがまわらずにいたことが日本にインフレが起こらなかった理由。
ところがそれが変わってきた。

・生活必需品の値上げの到来

国内物価に値上げラッシュが来ている。
企業側はこれまではコスト高を無理にに吸収し、価格転嫁せずにいたのだが、 もうその我慢も限界に達しての値上げに踏み切った。
しかし日本の場合、給料が上がらない。
企業が価格を上げたことで売上が減るかどうかがポイント。
「民間企業の給料を上げろ」と政府が企業に促しているが、自分の国が民主国家であることを忘れているのではないか。政府が公務員の給料を上げればいいのだ。それがベースとなって民間企業も賃上げを促されるようになるからだ。

・世界のインフレはいつまで続くのか?

いまの世界的なインフレをつくっている理由の一つが特殊要因、つまり、
・コロナ禍で部品の供給に滞りが生じた「サプライチェーン(供給網)問題」
加えて、
金融緩和のやり過ぎ
という二重構造になっている。
これが長期的に続くのかどうか 現時点ではわからない。

「懸念していることは、インフレ率が10%に上がることではなく、6,7%のインフレが長期的に続いてしまうこと」(米国プリンストン大学マルキール教授)
モノがあり余っていたこれまでの時代から、モノがない時代に移行。
望ましいインフレではなく、スタグフレーション(不況下のインフレーション)に近い。

本来であればバブルが崩壊すれば低インフレに戻るはずなのだが、
物価は上昇とモノ不足、資産価格下落が並行して走っている。

【第4章】 日本経済の今後を考える

・岸田ショックと日本のインフレ

企業はそんなすぐには商品の値上げができない。円安で輸入コストが上昇すれば利益が圧迫されることが起こっている。
もう一つは岸田政権がマーケットから好かれていないことが、株価下落をもたらしている。

・ドル高 円安が企業業績に影響

今のところ日本は製造業の調子がいい。その理由は円安。
円安で日本の輸出企業が恩恵を受ける事は大いにありえる。
一方でコモディティ高の状況での円安は、あらゆるモノの価格を押し上げてしまう。特に日本のなかで、内需関連の仕事をしている企業にとっては苦難が待っている。とりわけ原材料を輸入に頼っているところは値上げ必至で、それが最終的には消費者に転嫁されて行く。

・日本と米国の違い

日本ではバブルの崩壊後 二つのことが起きた。
まず 銀行が簡単にお金を貸さなくなった。
また企業や一般市民も銀行からお金を借りようとしなくなった。
バブルで失敗したり痛い目に遭った企業や 一般市民は今でも借金を返している。
だから日本の場合は 国の借金が増えても 市場におけるトータルマネーは急速に増えなかったので 日本はインフレにならなかった。

米国は真逆ですぐに5%~6%のインフレとなった。米国人は基本的にお金も資産も持っておらず、買い物のほとんどはクレジットカード。膨大な借金で将来のインカムを使う文化。

ただし、今回はサプライチェーンの乱れというもう一つの特殊な理由が生じた。
米国では新車が市場に供給されなくなり、今すぐに供給可能な中古車が1年後納入となる新車の価格を超えた。

プレイステーション5、任天堂スイッチが超品薄となり転売屋大儲け。
物の供給が足りていない一方で、お金が有り余っているから商品の価格がどんどん上がる。インフレである。
賃金を同じくらい上げないとスタグフレーションとなる。

・バブルのトラウマを抱えている日本人

設備投資をしないことは最終的にはインフレを生まず、高成長も生まない。
特に先進国は低成長に陥っている。この現象が最初に起きたのが日本なので「ジャパニフィケーション」と呼ばれている。
日本はバブルのトラウマを抱えており、バブル前よりもお金を借りず、デフレから抜け出せなくなった。銀行に借りに行かない。
だが、低成長、低金利のジャパニフィケーションを生み出したとはいえ、日本の場合は優秀で、日本は経常黒字をずっと出し、さらに日本は世界最大の債権国で海外に資産をふんだんに持っている。だから日本円はずっと評価され続け日本の豊かさが大きく失われることはなかった。
経済危機が起きるたびに非効率な古い企業、悪い経営者、ある意味での弱者は消え、そのかわり、新しい良い物が台頭してきてそれらの後継者となっていく。これは自然な流れ、サイクルであり、決して悪いことではない。

・台湾有事を見据え、米国の本気が窺える駐日米大使人事

2021年12月米国の本気度が判る人事がおこなわれた。
これまで2年半空席だった駐日米大使に、オバマ元大統領の首席補佐官を務めたラーム・エマニュエル前シカゴ市長が就任したことである。
日米同盟はいやがうえにも強化される。
米国による、中国孤立策が進行している。
もう一つの戦争への懸念の理由は、世界の借金が膨らみすぎてしまったことだろう。借金をご破算にするには、ちょっとやそっとのインフレ頼みではとても無理な状況に追い込まれたとき、戦争の火ぶたが切られる事を歴史は示している。ハイパーインフレを起こして借金を実質的にチャラにするという手もある。
もしかしたら中国との戦争でハイパーインフレが起きる。
世界中の者と生産と物流が途絶えるからである。
台湾有事が現実になれば、世界は圧倒的半導体不足に陥り、パソコンは1台50万円くらいになるかもしれない。全てがバカ高くなる。

・日本の半導体を潰したバブル崩壊

世界で唯一、5ナノ半導体を生産できるTSMCを擁する台湾。その台湾を巡って有事が起きるならば、同時に世界大戦が勃発しても不思議ではない。
EV生産が止まる。米国の戦闘機に搭載する精密軍事機器の生産が止まる。高性能パソコンやスマホも作れなくなってしまう。
半導体は昔で言うところの原油のような存在。
1980年代、日本は半導体生産で世界を席巻していたのが、なぜ台湾や米国の後塵を拝してしまったのか、その原因を突き詰めると、結局、1989年末の日本のバブルの崩壊に収斂される。半導体生産は、対象となる技術分野の高度化に合わせ、毎年大きな設備投資が必要。市況の良し悪しにかかわらず、それが必要であったのだが、バブル崩壊後には、各企業が不振になり、設備投資を削り始め、大きな失敗に繋がった。
世界を席巻していた「日の丸半導体」構想は、半導体材料や半導体製造装置の供給に方向転換した。

・TSMC熊本工場建設の意味深長

TSMCの創業者である張忠謀(モリス・チャン)は長く米国にいたエンジニアであり、米国籍を持つタイワニーズ・アメリカンである。彼が台湾に戻ってきてTSMCを起こした。米国にしてみれば、その技術は自分たちの技術でもあると認識しているので、中国には絶対渡したくない一心で、米国が台湾の戦略的アセットを日本に「回避」させる意図を持ってのプロジェクトかもしれない。これも台湾有事に備えてのものである。

・インフレ時代に日本人が投資すべき分野は?

日本人の金融資産総額が2000兆円を突破したようだ。個人金融資産の中身を見ると、相変わらず株で運用している人は11%でしかない。
やはり預金は54%と高い。
私がお勧めしたいのは「日本株の積み立て」である。ただ、指数や好きな個別株を少しずつ買い増していくのも良い。有事が近づきハイパーインフレになるような場合には、自己防衛として預金の価値を減らさない為にも、株式投資を勧めたい。
リスクの低い投資先としては、防衛関連株などのバリュー株は最適である。三菱重工、川崎重工、IHIなどの防衛関連株はこれまで見向きもされなかったので割安である。
もう一つは食料、飲料関連株。ディフェンシブ銘柄で有事になっても需要が落ちない。
半導体関連も悪くはないが、サイクル的な要因から割高。

・サブスクリプション・サービス全盛とミドルクラスの弱体化

このところ日本の30代、40代で家を持っている人の割合が急減。5割を切っている。米国も同様。何の資産も持たない人が増加。給料が上がらないから。
その一方でサブスクリプションサービスに入っている人が増加。バーチャルエコノミー。

・有事の際に平時の体制でコロナとの戦いに勝とうとした日本政府

「平時と清掃時の軍事力が同じでは戦争に勝てない。」
日本はコロナとの戦いに勝つためには、最初の頃に国の総力を挙げて医療体制を再構築しないといけなかった。日本のような医療大国が、実際には罹患者全員の対応が追いつけず、医療破綻寸前まで追い詰められた。
つまり日本政府は、パンデミックに襲われる有事の際に平和時の体制で勝とうとした。現実に近い想定が出来なかった。これは政府のイニシアチブの問題で、残念ながら日本はそれを発揮できなかった。
一方で中国は当初からコロナ禍に対して全面的に政府がイニシアティブを取った。早々に突貫工事で病院を作り、危機に対してリーダーシップを見せつけた。共産主義、独裁主義の強みかもしれない。

■ 読後の感想

1/18に開かれた日銀政策決定会合で、日銀が断固とした緩和継続を唱えたことについて、国策として、2000兆円に及び日本人の個人金融資産を市場にばら撒く策なのかもしれないと感じた。
2000兆円に及ぶ資産のほとんどは当然に年配、高齢の方のタンス預金であり、労働世代の懐にはない。
それを還流させるためには、相続より生前贈与した方がいいという優遇税制
だけでは間に合わない。
強烈な話、年配の方のタンス預金を紙くずにして、現役世代の収入を上げていく取り組みが必須であり、最も重要かつ即効性がある策となるだろう。
日本はシルバー民主主義なので、そんなことを声高に言ってしまえば、当選できない。だから、「貯金から投資」と呼び掛けたり、「賃上げ」を呼び掛けたりする必要があるのだが、日銀の頑なな緩和継続にはこのような日本独自の問題の解決も見据えているのかもしれないと感じるようになった。
外国人投資家にその背景は決してわかることはないだろう。
そして、分からなければ、きっとひたすらに緩和終了に向けたポジションを取り続けていき、日銀と戦い続けることになるだろう。
日本は対外債務が皆無である以上、
異次元緩和でインフレが起こり、物価上昇し、現役世代の収入がアップし、タンス預金が紙くずになってしまったとしても、
実はそれは天国にいる安倍元総理、もうすぐ任期満了を迎える黒田総裁の若い人、現役世代に向けた国策の狙った通りのストーリーなのかもしれない。
この本を読み、そんな仮説も頭の隅に置いておいた方が良いと感じた。
いずれにしても、日本が決して悪くない国ではないという確信と、大局としては間違った方向には進んでいないという希望を持った!
明日も頑張ろう!


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