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見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって

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あるところに、“文字”でしか語れない人間が居た。 またあるところに、”写真”でしか語れない人間が居た。 20XX、人間は目に見えないウイルスに翻弄されたあとの僕らは、 この目に見… もっと読む
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見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって 10

今ある選択肢の中で最も簡単な道を選んだ未来。 と 今ある選択肢の中で最も難しい道を選んだ未来。 正解も不正解も、成功も失敗も、やってみなければわからないじゃない。 運も縁も実力のうち。 ただし、 ひとつ大きく違うのは、 簡単な道を通り抜けた先のあなたと、 難しい道を通り抜けた先のあなたは、 似ているようで全然違う。 まるで別人なんてこともある。 私は私、変わる必要はない。 自信に満ちたあなたは、 簡単な未来を選んで力強く最速で駆け抜ければ良い。 私は変わりたい。 不完全

見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって 9

何か素敵な、素晴らしい出来事があった時に贈られる、おめでとう、っていう言葉の中にはね、 愛でたいって、 もっと愛したいって、気持ちが隠れていると思うの。 もっと愛したいだなんて言われたらね、 なんだか元気が湧いてくるよね。 おめでとうございます。 わたしはもっとあなたのことを、 愛でとうございます。(AI)

見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって 8

「誰かがきっと見てくれているから。」 くやしさをグッと堪えた時には、優しさで出来た、言葉が染みる。 でも、見つけてもらえなくちゃ意味がないんだ。 見つかりにいかなきゃいけないんだ。 努力は決して無駄にはならないのだけれど、 無駄な努力、というのは大いにあり得る。 誰かが僕を探している、私を求めている。 そんな日はいつかきっと来ると信じて。 でもその時に、ねえ見てみて、っていってお腹の傷を見せびらかすようにするのではなく、ただそこに、在るべき姿で真っ直ぐと立っていて、誰

見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって 7

知らぬ間に始まって、気づいたら終わっていた。 季節みたいな恋心だった。 憧れを憧れのままにしておくことなんて出来ない。 仕草一つを目で追いかけて、一歩でも近づきたくて、振り向かせるまで輝こうと努力した。 その全てが欲しかった。 私があなたの背中に追いついて、 純度100パーセントの果実が絞られると、 その途端に恋は完成して、すでにもう自分のものでは無くなっていた。 きっとすぐに忘れるだろうけど、 どちらか、いいえ、どちらも、にとって、 浸って温まれるだけの、思い出であれ

見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって 6

あなたの心を晴らしたい、だなんて。 ロマンティックに聞こえがいいのだけれど、 遠く離れた街では曇が強すぎる日差しを遮って人を守ることもあれば、 雨乞いしてまで雨を欲しがるところもある。 「今の自分は、少し、不幸なくらいでちょうどいい。悲劇があるからヒロインでいられるの。」 自分の幸せと、他人の幸せを、同じものさしではかってはいけない。同じ空を見て、同じような青がそこにあって、それで世界が繋がっていたとしても。 「なんだか空に浮かぶ海月みたいだね。」 みたいな突拍子もな

見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって 5

たった一つの綻びで、バラバラになってしまうことがある。 たった一つの嘘を突き通すために、沢山の嘘をつくことがある。 あれって一体、何を守りたかったんだっけな? 私が私のネジを緩めると、 部屋の中で心と身体が勢いよくバラバラに散らばっていった。 情けない仕草でそれらを拾い集めて、組み立てることの惰性。 とてもじゃ無いが人に見せられるものじゃない。(AI)

見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって 4

期待なんかするからいけないんだ。 勝手に裏切られた気になって、バカみたい。 自分の頭の中で次の言葉の予測変換が見えて手を止めた。 どうせ、から始まる文脈で、良い話なんて出てくるわけがない。 自分の思う、人を嫌いになる簡単さと、人を好きになる難しさは、 他人の思う、自分が嫌われる簡単さと、自分が好かれる難しさ、と、概ね等しい。 端的に言えば、簡単に嫌えば簡単に嫌われる、ということ。 容易に好けば、容易には好かれる。ただし、それが良いこととは限らない。 儚さと美しさは常に

見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって 3

見上げた夜空に、星が綺麗だななんて思えたら、 死にたくなるような夜が、少し紛れたりするんだ。 何年振りの天体ショーに胸を高鳴らせる気持ちと、 期間数量限定のスイーツに並ぶ気持ちはどこか少し似ている。 モンブランの頂から手を伸ばしたら届くまあるい月、 私は今、フォークを突き刺したところ。(AI)

見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって 2

ある人は歌を歌ったし、軽やかにダンスを踊った。 鮮やかな絵を描いた人もいるし、 好きな本の一節を引用して役になり切る人もいた。 呪文のように円周率をつらつらと唱え始めた人もいる。 心臓の高鳴りで空気が震えて、呼吸する度にそれが伝わってくる。 それぞれの命が光り輝いて見えた。 自己紹介をしてください、と言われて、 私はただその場に、ただ立ち尽くしていた。 何者でもない自分に愕然とし、 それと同時にほんの少し「だよね」と納得もした。(AI)

見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって 1

僕、私、俺、ひらがな、カタカナ、alphabet、 自己紹介も一人称から迷う時代だ。 私はまだ私のことがよくわからない。 明日はどれを使うかも決めていないし。 インターネットの世界では、性別も、年齢も、職業も、収入も、なんだっていい。ただ、純度100%のなりたい自分でいられる。 偶像、虚構、現実世界。 どっちの世界にいるのが本物かわかりゃしない。 今日もハートマークの投げキッスを散らかして、安っぽい愛をばら撒きにいく。 別に良いじゃない、減るもんじゃないし。 キーボードで叩く

見えないものに怯えた僕らは、目に見えるものを愛したくなって【はじめに】

-Prologue- 相も変わらず空は広いし、雲は柔らかそうだし、ビルは高い。 コンクリートは固いし、急かすように信号は点滅にして赤に変わる。 一見して世界の表情は何も変わらない。 人と人は2mの距離を置き、不織布で口を覆い、 不要不急なんて言葉を合言葉に、出歩くことを控え、家での時間を過ごした日々。 そもそも自分は必要か?なんて思いに耽る。 バスの隣の座席の人が咳払い一つするだけで不安になる。 逆もまた然りで、一瞬にしてその場に居づらい空気に押し出されそうになる。 換気