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コロナウイルスに学ぶ生物⑥~免疫とは後編~

皆さんこんにちは、大友雅斗です。

前回の記事を読んで頂いた皆様、ありがとうございます。



前回は、免疫の基礎について説明しましたが、今回は免疫のメカニズムを用いた検査などについて述べてみたいと思います。


抗原検査


以前説明したPCR検査に加え、最近活用され始めている抗原検査。PCRについては以下を参照してください。


被験者の唾液を検体とし、その中のウイルス固有のたんぱく質を調べることによって、PCR検査と同じくウイルスの有無を調べる検査です。

インフルエンザなどの感染症で、この方法が用いられています。

PCRと比較し、特別な機器を必要としないこと、30分程度という短時間に結果が出せることを特徴としています。

一方で、PCR検査と比べて、検出のために多くのウイルス量が必要となり、感度が高くないため、より正確な診断のためにはPCR検査が必要となります。

抗原検査を活用したからといって、PCR検査が完全にとってかわられるものではなく、早期治療や、迅速な感染リスクマネジメントに有用でありPCR検査とうまく併用するものであるということを頭にとどめておいて頂ければと思います。


抗体検査

抗原検査があるなら、抗体検査もあるのでは?と思った方、正解です。

指先から少量の血液を採取し、その中に含まれる抗体によって感染を確認する手法です。

ただし、抗体は、前回の記事にあるように、感染後の免疫反応によって数日ほどたって産生されるものであり、感染直後には検出されません

そのため、現在の感染の状態を迅速に調べるものではなく、過去に感染歴があるか?(治癒状況によっては現在感染している場合も含まれますが)、いつごろ感染したのか?を知ることができる検査です。

ここがウイルスそのものを検出している、抗原検査やPCR検査と異なる点となります。


サイトカインストーム


近日、サイトカインストームというワードを耳にする機会が増えたかと思います、免疫が関わっているのですが、どういう現象かに触れておきたいと思います。

サイトカインとは、細胞から分泌されるたんぱく質の総称で、主に他の細胞への情報伝達の役割を担っています。ウイルス感染時は、これが感染が起こった細胞から分泌されることによって、免疫細胞を炎症部位に移動させ、炎症を抑えるように情報伝達を行います。

何らかの原因で、そのバランスが崩れると、過剰にサイトカインが分泌、局所的に過剰な免疫反応が起こってしまい、発熱や倦怠感などの症状が重くなるほか、血液凝固など異常が起こってしまい、心筋梗塞や脳梗塞、多臓器不全などの致死的な重い症状が起きてしまいます。

これがサイトカインストームです。

アナフィラキシーショックとの違い

こちらもよく聞くであろうアナフィラキシーショック。蜂に2回刺されると~という話はよく聞きますね。ほかに食物アレルギーでもこの症状は起こります。こちらも同じく免疫の過剰反応なのですが、アレルギー反応でありメカニズムは異なります。

アレルギーを起こす物質である、アレルゲン(抗原)が一度体内に入った際に、異物であると認識され、IgEという抗体の一種が産生されます。この抗体は、肥満細胞という化学伝達物質を蓄えた細胞と結合しやすい性質があります。

再度アレルゲンが体内に入ると、肥満細胞とくっついたIgEとアレルゲンが結合、活性化された肥満細胞は、ヒスタミンなどの化学物質を放出します。それにより、くしゃみなどのアレルギー反応が起こるのですが、重篤な場合、このヒスタミンなどの化学伝達物質が過剰に分泌され、気管収縮、血管拡張が起こります。

軽い場合はじんましんなど皮膚症状が主ですが、深刻な場合は呼吸困難、血圧低下などの症状が起こってしまいます。


第6回目の記事は以上となります。

引き続き東京では感染者の多い状況が続いておりますが、未知の感染症に対し闇雲に怖がるのではなく、このような基本知識を知ったうえで正しい対策を一人一人がとっていくことが大事ですし、もしその一助になれたのであれば幸いです。

~コロナウイルスに学ぶ生物学~のシリーズの大筋はこちらの記事で終了としたいと思いますが、何か追記や説明すべきことができれば、続きとして連載しますので、また楽しみにしていただけると嬉しいです!

また、他に扱ってほしいテーマや、質問事項がございましたらできる範囲でお答えいたしますので、こちらのコメントか、Twitterのリプライなどで頂ければ嬉しいです。

今後ともよろしくお願い致します。最後まで読んでいただきありがとうございました!

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