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アメリカアクセラレーター調査レポ①:Hustle Fund

初めまして!Partners Fundの中村です。最近は海外のアクセラレーターデモデイを基軸に海外の動向調査をしているので、内容をいくつか皆さんと共有できたらと思いレポートを書いてみました。初回を飾るのは米国のHustle Fundです。

Hustle Fund とは

2018年に設立されたPre-seed特化のアクセラレーター型VCファンド。500 Startupsでパートナーを務めたElizabeth Yin氏とEric Bahn氏が立ち上げたこのファンドの特徴は以下の2点:

特徴1.他VCが注目しない起業家層に重点的に投資:スタンフォードやIvy League卒のようなピカピカの背景を持つ起業家層は避けて投資をする
特徴2.初回とアクセラレーション後の2回に分けた投資:先ず$25Kを投資した後、4~6週間のアクセラレーションプログラムに参加してもらい、プログラム後に一部スタートアップに追加投資を実行

特徴に表れる彼らの投資仮説は、投資すべき起業家はアクセラレーションプログラムを通じて見極められる、ということだと思います。プログラムを通して起業家が育つのか、そもそも起業家が持っているポテンシャルがプログラムを通してあらわになるのか、この2つには起業家側からすれば差はございますが、投資側からすればほぼ同義でしょう。
 主なVCが見落としがちな起業家層に優先的にアクセスして、低いバリュエーションでの少額投資を用いて関係を構築し、アクセラレーションを通して追加投資すべき案件か否かの情報を独占的に保有する。従来のアクセラレーターのモデルに少々捻りを加えることによって、VCとしての差別化を図っています。
 そんなHustle Fundの直近のアクセラレーションプログラムDemo Dayが9月13日に開催されたので、登壇されていた計6社のスタートアップを紹介させていただきます。

Alariss Global

米国での事業展開を目指す海外企業向けに、米国セールス・BD人材の採用を支援する人材マーケットプレイス+米国税法に準じた給与支払いを円滑化するSaaSを提供。
 彼らが着目する市場の変化は、リモートワーク文化の浸透によって起こっている米国労働者の労働習慣。より具体的には、多くの労働者が柔軟にリモートワークできる環境を求めているということ。米国進出を目指す海外企業は優秀な米国セールス・BD人材を見つけることに今まで苦労してきたが、一部の優秀人材は柔軟な労働環境があれば海外企業の下でも働きたいと考え始めているとの仮説を立てている。Alariss Globalは給与支払いのプラットフォームも提供することにより、スムーズに海外企業が米国進出の要となる人材を雇用できるようにサポートしている。
 尚、各国税法に従った海外人材へのの給与支払いをサポートするSaaSとしてはSequoia Capital投資先のRemote社が既にユニコーンとなっている。

Badaboom

コンシューマーブランドに向けて、プロダクト・デザインと当該プロダクトの生産・物流プランを提供するプラットフォーム。
 ShopifyやFlexportのおかげで生まれている多くの新ブランド達が新商品開発にかかる長期間と多額の資金に苦しんでいることにBadaboomは着目。Badaboomは最新のコンシューマートレンドを取り入れたデザインの商品をコレクションとして用意し、クライアント企業のブランドコンセプトに合わせてキュレーション及び生産・物流の提案までを行っている。彼らが最初の商品群として手掛けているのは「眼鏡」である。
 急増するECブランドがそれぞれどうやって新しい商品を世に出すかという課題に対してはマーケットプレイスという方法もある。例えば、リテールと世界各国のメーカーの商品をマッチングするB2Bマーケットプレイスである米国FaireやフランスAnkorstoreは既にユニコーンになっている。Badaboomは、各ブランドに対してよりパーソナラズされた商品を提案する手法をとっている。

Ramped

求職者がオンラインコースを履修し、採用ポジションに応じたシミュレーションテストを受けることにより、スキル獲得度と当該ポジションへのコミットメントを示せる人材マーケットプレイスを開発。
 Rampedはコロナの影響と加熱する経済の下で多くの企業が人材不足に陥っている市場の状況と、業界経験が不足する人材を採用することの難しさに着目した。企業が異なる業界出身の人材を採用する場合、どうしてもスキル不足または新しい業界に入ることへのコミットメント度が問題となり、採用コストの増加の一因となる。Rampedはスキル研修コースとシミュレーションテストを無料で提供することにより、未経験業界にチャレンジすることに真剣な人材を集めて、企業とつながようとしている。
 日本でも多くのプログラミングスクールが成長を遂げているが、プログラミング以外の業界・領域でも類似ビジネスが成立するという仮説をRampedは試している。Rampedが今後どういった業界で成長を遂げていくのか注目したい。

Daily Blends

食品/ミール自動販売機向けのAIソフトウェアを開発。食品ブランドや自動販売機メーカーと組み、需要予測・自動販売機内の最適な商品配置・売れ筋商品のトレンド分析などを提供。
 日本に最近進出したYo-kaiラーメンは読者の皆様もご存じかもしれませんが、米国では近年ミールの自動販売機が増えています。これらの自動販売機のソフトウェア側を開発することにより、どこで、どういった味の商品が売れやすいかのデータを収集し、企業に対するレコメンデーション能力を高めていくことを目指していると思われるスタートアップです。
 日本でもまだまだ昭和から設置されている自動販売機が残っていますが、自動販売機のデータが全て適切に収集・解析できた場合に広がるビジネスチャンスは非常に面白いと思います。Daily Blendsには今後注目していきたいです。

Jetstream

アフリカ大陸内の国境間貿易を行う企業(貨物の運送業者)向けに、サプライチェーン可視化と金融のプラットフォームを開発しています。
 Jetstreamが着目したのは先進国では当たり前の貨物追跡システムがサハラ以南の国々では導入されておらず、サプライチェーンの可視化ができていない問題。また、滞りがちな物流と情報不足によって生まれるリスクから、金融機関から業者たちが融資を受けられないこと。
 Jetstreamは各国の状況に応じたシステムのカスタイマイズや丁寧なオンボーディングを通して徐々に物流の可視化を上げて、融資・保険サービスも展開しつつあります。

uPage

 途上国向けのSquarespace(Webサイトビルダー)+Hubspot(CRM)を開発している。詳細は不明だが、知識が不足している途上国の中小企業にとってSquarespaceやHubspotをDIYで駆使していくのは難易度が高すぎるため、より易しいサービスを提供することを目指しているとのこと。

最後に

以上、Hustle Fund Demo Dayで紹介された6社でした。最後の2社は地域が限られる課題に基づいたスタートアップでしたが、最初の4社は日本での応用も含めてフォローしがいのあるスタートアップだったのではないでしょうか?
今後もアクセラレーターデモデイのレポートを書いていきますので、フォローの程お願い致します!

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