青山ブックセンターでのイベントを終えて。(校閲者が表に出ることについての所感も含め)

【注:この記事は、アメブロへ2024年1月18日に投稿した記事を、筆者本人が内容を変えずに移植したものです。】

こんばんは。
1/15(月)に青山ブックセンターで開かれた『くらべて、けみして』の刊行記念イベントに登壇させていただきました。
漫画家のこいしゆうかさんと、司会の牟田都子さん、そして私の3人によるトークイベントです。
とてもたくさんの方にご来場いただき、サイン会では(私はサインする本はありませんが…)色々な方とお話しすることができ、本当に貴重な経験となりました。ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。そして牟田さん、こいしさん、本当にありがとうございました。
自分で言うのもなんですが、とても内容の濃いトークだったのではないかと思います。自分のことはおいといて、牟田さんとこいしさんの話は壇上にいてもグッと引き込まれました。
よくこういうの、「来ないと損するよ!!」とか常套句みたいに言いますが、実際、お世辞抜きで来ないと損するイベントだった気がします。
まあ、私一人でよければいつでも何でも話しますが。。。(需要に疑問符)

以下、いつものことですが校正と校閲は区別していません。(というか、校正、校閲という言葉って本当に私たちがやっている仕事を表す言葉として適切なのか、と疑問に思うこともあるのですが、この話はまた今度)

イベントを経て、自分の中に色々な考えが湧き上がって、3日経った今でも全く消化しきれていない感じなのですが、その中からひとつ。
当日の牟田さんの質問で一番ハッとしたのは、「校閲者が発信することの意義」についての話でした。
かいつまんで言うと、私自身「校閲者は表に出ないほうがいいのではないか」と考えていた時期もあり、そのことについての疑問をふとSNS上に投げかけてしまったこともあったのですが、牟田さんのご著作『文にあたる』を読んで、その疑問は一掃されました。(『くらべて、けみして』と『文にあたる』は全員絶対に読んでください)

とはいえ、裏方としての仕事の詳細(どんな作家さんとゲラ上でどんなやり取りをして、等)は勿論外には出せませんし、おそらく校正者の多くが内向的で、「表には出たくない」と考えていると思います。また、校正者以外の方が校正者を見るときに、「なぜ表に出てくるのか」という視点をもつ場合も未だに大いにありうるなぁ、とは思っています。
そのあたりでまだ結論が出ていない私に対して、牟田さんがズバッと斬り込んでくださったことで、自分自身も壇上で手に汗握るというか、自分で言うことではないですがスリリングな展開になった気がします(一言で言うと、シビレました)。
そのときの質問にうまく答えられたかは分かりませんが、イベントの中で私がもっとも力をこめて、頭をフル回転させて話した時間があそこだったと思います。
だいたい、以下のように答えたと思います。

「確かに以前は、校閲者が人前に出て仕事の話をすることについて疑問があった。例えばテレビの大道具、小道具の人が『いやぁ、あの日のミュージックステーションのセットはね…』などと人前で話したりはしないのと同じように。しかし今では、『文にあたる』を読んだり、色々なことを考えた結果、こう考えるようになった。校閲者の具体的な仕事内容ではなく、校閲者がふだん何を考えているか、どういう気持ちで仕事にのぞんでいるか、などを話すことは、世間的に言えば珍しい、マイナーなことなので、価値があることではないのか。また、ファクトチェックが重要になっている時代(地震に関するデマや大統領選挙デマなど)、校閲者が自分の経験をもとに社会に発信する意味は色々とあると思う」

自分で書いてても長いですが、あの日、あの場で結構3、4分くらい熱弁してしまったのかと思うと今でも冷や汗が出ます。

でも、自分の口からこういうふうに、自分が考えていたことの集大成みたいな言葉が出てきたのは、なんというか、イベントの魔力というか、牟田さんの質問の力、引き出す力そのものだなという気がしています(ちなみに、打ち合わせは最小限でしたし、本番前の控室で話が盛り上がりそうになってもグッと堪える感じでした。本番で盛り上がらないと、ということで)
あぁ、イベントで話す醍醐味みたいなものの一端に触れられた気がします。

このあたりは、本当に参考になったというか、今後もし同じようなイベントに出ることがあった時は、同じようにさせていただきたいな、と丸パクリしたくなるような技術でした。牟田さんのすごさを間近で感じさせていただきました。

また、イベントの最後あたりで、「今後は、甲谷さんはどういった活動をされていきますか?」というような(文言は違うかもですがそういったニュアンスの)質問を牟田さんが私に投げかけてくださったのですが、この質問も私にとってはものすごく効くツボを刺激されたというか、今までの人生で誰からも訊かれたことのなかった質問でした。
サラリーマンとして普段ぬるま湯で過ごしている身としては「えぇ、、、明日からまた校閲の仕事をがんばります、、、」くらいしか答えられなかったのですが、この質問が、何か仕事プラスアルファで、校正校閲について、社会貢献と言ったら大袈裟だけど、もっとできることが自分にもあるのではないかと改めて考えるきっかけになったことは事実です。

また、こいしさんが隣で本当に話しやすかったです。実際ほとんど深くお話ししたことはなかったのに、フレンドリーでありがたかったです。サイン会の最中、ブログを見ていると言ってくださる人が意外に多くてどぎまぎしている自分に、「がんばって続けてください、何事も続けることが大事ですよ!」とおっしゃっていただいたのは、一生忘れない言葉になりそうです。(いやブログを真剣に頑張るかどうかはわかりませんが。。。)

ちょっと長くなりましたが、とても長くて濃い一日になりました。
普段の仕事をがんばりつつ、もう一段階、なにかチャレンジできたらなと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。
ではまた!

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