校閲業はどのくらいリモート化できるか?

【注:この記事は、アメブロへ2022年8月13日に投稿した記事を、筆者本人が内容を変えずに移植したものです。】

皆様こんばんは。



土曜勤務が終わり、家で北海道産のタコ(ボイルされたものを冷やして切った、刺身のようなもの)を食べています。私は海産物の中でタコが一番好きかもしれません。イクラやウニ、トロ、サーモンより何より。回転寿司でもタコばかり食べます。生ダコよりも、安いボイルダコの方がさらに好きです。小さい頃から慣れ親しんでいるのもありますが、タコって旨味がとても強いんですよね。


高タンパク低カロリーで、時代に合った食材でもあります。だから好きってわけではないのですが。

さて、タイトルが大仰で、これだけで相当長い考察になってしまいそうですが、今回は細部ははしょって概要だけ書いていきたいと思います。(また、じっくり時間をかけて書いてるわけではないので、内容に深みは求めないでください笑)



まず、高画質なスキャンやPDFデータのやり取り、紙ベースでなくタブレットの画面ベースでの校閲環境、などによって、校閲業の大部分はリモート化が可能な状態になっています。特に、校了を伴わない校正、つまり編集者もしくは出版社の校閲部員が校了はするが、中身を一字一句読むのは外部のフリーランス、というパターンの校正なら、リモートは各社、既にかなり進んでいるでしょう。

逆にいうと、とくに書籍の場合ですが、校了まで校正者が付き合うパターンの進行の場合は、最後はやはり実物の紙を確認して校了しなければ大事故が起こってしまう可能性があります。

ここで紙と言っても、自宅でプリントアウトしたものではダメで、正規ルートで出力された、印刷所データが100%再現されているものでなければならないのです。図版が多いものや、カラーページがあるもの、さらにオールカラーの本などはなおさらです。新書や文庫の文字だけの単純なものならまだ分業してリモート校了も可能かもしれませんが、書籍というのは意外と仕様が多岐にわたっており、フルリモートではなく結局社内のだれかが二重に確認しなければならない場面が出てくるでしょう。だからこそ社外の方が校了する場合は、何かあったときにある程度すぐ出社できるような距離に住んでいないとならないという物理的制約(不文律)があったりするのです。

上記は書籍の話です。雑誌やウェブメディアならば、リモート校閲もじゅうぶんに可能な場面が多いでしょう。ただしこれも図版やカラーが複雑でないものに限られますし、とくに雑誌の場合は結局、社内なり常駐なりで、だれかが「リモートでは確認が難しいところ」をチェックしなければならないので、フルリモートの人員というと繁忙期のヘルプ的な立場になりがちで、待遇や勤務日数的にもなかなか優遇されにくいところはあるかもしれません。(あくまで印象の話です。違う!という方は教えてください)

ウェブメディアの場合は逆に「どこで校閲してもあまり変わらない」ので、リモートがしやすそうですが、よく言われるように単価が低くなりがちではないでしょうか。

だからこそ本丸は「書籍をフルリモートで校閲できれば最高」で、「校閲」自体は上記に書いた通り可能だしすでにそうなりつつあります。しかし、「校了」についてはそうはいかない場面がでてくるので、これも結局は待遇に差が出てしまうところなのです。これは「校閲者はゲラを読んで編集に渡せば、編集が校了してくれる」というタイプの出版社でも一緒だと思います。一般的にはどこの会社でも、校了まで「責任」をともなうかどうかで、単価は変わってくるはずです。(校了までやってるのに普通の校閲と単価がそう変わらない

なら、それははっきり言って校閲者としては良くない環境だと言えます。)

ここまでの話は、できあがりの製品が紙で流通するわけですから、当たり前といえば当たり前なのですが。どうしてもリモートでは難しい(というか、会社に来てくれる人が見たほうが早いし確実)というケースが現場では頻出しちゃうんですよね。個々の編集者のITリテラシーにも大きく左右されるところでもありますし。対面が基本の編集者の場合は、リモート校閲は校閲者側になかなかの労力がかかりますよ。


ただし「校了」までやる書籍校閲の作業でも、8.9割は結局は「どこでやっても同じ」作業だったりします。国会図書館に足繁く通わないとならないオーダーとかなら別ですけども、いわゆる「普通の本」ならほぼ、校閲作業じたいはリモートで完結可能です。ただし、ちょっとしたことで出版社内の窓口の方の負担が増えていくのは確実だったりするので、そのへんは結局人間関係しだいだったりするのでしょうか。

書籍校閲の作業の1割ほど、いや1割にも満たない「校了作業」や「会社に行った方が早い類の仕事」、そして「リモートでなく直接話した方が良い類の打ち合わせ」などで出版社に直接出向かないとならないとしても、それは1か月に2〜3日くらいかな、というのが私の会社での事例です。

逆に言うと1か月に2〜3回、東京に出向きさえすれば、リモートで校閲業を請け負うことは充分可能です。ただし完全なフリーランスですから収入には波が出てしまいますし、まあまあ実力主義の世界なので、淘汰は充分あり得ます。年俸制の契約にしても終身雇用が約束されているわけではありません。

そうすると結局、「出版社の社員」というのは守られた、恵まれた立場でもあるということがよくわかってきます。そこから脱してフリーないし年俸契約になるなら、なる理由のようなものがハッキリなければならないでしょう。あと大事な視点としては、リモート校閲は校閲者の新人教育には不向きということです。日常的に他の校閲者から薫陶を受ける環境が望ましいのが事実。

ぶっちゃけて言うと、私なら、年収1000万円を向こう30年間約束してくれるなら、明日にでも年俸制のリモート勤務にしますが、まあ、そんなの絶対に有り得ませんよね笑。1年間の有期契約を更新していくのが普通でしょう。まあほんとはそんなこと考えてないので安心してください(何を)。


まとめると、「どのような雇用形態」もしくは「どのような仕事のペース」を求めているかによって、校閲者の働き方はガラッと変わってくるということです。フルリモートは不可能ではないですが、言い方悪いですが「うまく使われてしまう」可能性もあるということは念頭に置いておかなければなりません。結局は会社の近くに住んでた方が有利になってしまう場面が出てきてしまうのです。


このトピックはまとめるのが難しく、まだまだ書けることがありますが、今日はこの辺で。

また、私は業界のすべてを知っているわけではもちろんないので、書いた中でここは違うと思う、という点があれば是非教えてください。

ではまた!


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