第22回 生徒の褒め方・叱り方

建前

指導のねらい

どのように褒め、どのように叱るかは、生徒指導上はもちろん、学習指導の効果を高める上でも大切なことである。事例を取り上げ、その具体を理解する。

指導内容

・上手な褒め方・叱り方
・いつ褒めるのか
・いつ叱るのか

本音

Goくん

 生徒を褒める、叱るどちらも意図をもつことが重要である。最初から上手くいくわけではない。褒めた後、叱った後に必ず自分自身で評価し、効果を確かめる。この実践と振り返りを繰り返すことで、将来的に自分の力になると考えられる。「数には勝てない。」とあったが、単純な量に加え、「考える」作業を丁寧にしていきたい。

 生徒への接し方は、日々の実践の中で一つひとつ学習し、他の先生方の様子を見て盗めるものは全て自分のものにしたい。先生方の特徴は、言葉や行動に表れる。それを見て、自分ならどうするかと常にイメージしておくことで身につく力もあると感じた。

Sinちゃん

 最近、生徒を叱ったので、私の叱り方は正しかったのか考えていたところである。今回の記録は、叱り方について絞ってまとめたいと思う。

 叱るときは意図的でなければならない。時には感情をぶつけることもある。叱るときにも「わかりやすく」叱ることも大切であり、「なぜ叱られるのか」生徒に理解させること、教育の一環として叱っていることを忘れてはならない。全体のルールを破った生徒に対しては全体で叱ることもあるが、案件によっては生徒を個別に呼び出して話をすることもある。言い分を聞きながら(逃げ場をつくりながら)、問題行動に対して迫っていくべきである。叱った後には期待を伝え、生徒の成長を促すと良いとのことだった。

 叱ったときにも「評価」が必要である。教育的理由付けを行い、叱った効果の測定をする。当たり前のようであるが、「叱ったことに対する評価」は私の感覚の中に抜けていたことであった。今回は「授業の邪魔」をすることに対して叱ったが、今後その生徒がどのように授業に参加するのか見守りたい。

 本音を言えば、叱りたくはない。叱る方法以外で、生徒の変化を促し、成長させることができればその方が良いと思っている。でも、叱らないといけない場面がある。本校の生徒は「善悪が分かっているのにそれに行動が伴わない」ことや、「自身を客観的に見て、周りにどのような影響を与えているのか分かっていない」ことが多い気がしている。今後、教科担当として、さらに来年度はSAとして生徒との適度な距離をとりながら、気づきを与えられるような存在になれるよう、本校の教員としての在り方について考えていきたい。

私から

 生徒のモチベーション・コントロールこそ、私たちが目標とすべきことを実現するための、手段の根幹を為すものと言えます。学習活動はもちろん、クラス活動や部活動、生徒会活動を含む委員会活動、それから立場が変われば全校集会等、教育活動のすべての場面の根幹です。そのモチベーション・コントロールの手立ての基本が、「褒めること」と「叱ること」であり、生徒指導の両輪だと考えています。

 「叱る」ことが軽んじられそうな風潮すら感じていますが、対象生徒の性質を見極め、TPOにも配慮した「叱る」という行為は、「褒める」以上のモチベーション・マネジメントに繋げられる可能性があります。例えば「叱咤激励」という言葉は、それを端的に表したものですよね。

 視点を変えましょう。

 「叱る」ほうが、その効果を評価することが容易であると言えます。そういう観点から言えば、実は「褒める」ほうが難しい。「褒める」という行為そのものは簡単なだけに、効果を評価しようという意識になりにくいからです。
 もう少し具体的に表現してみましょう。「叱る」ことを実践しなければならない場面は、「叱る」という行為そのものが難しく、失敗する可能性が高いからこそ、時間のある限り細心の注意を払ってその場面を想定し、反省も含めて事後におのずから検証せざるを得ませんよね。しかし「褒める」ことは安直に実践できてしまうので、事後にそれを検証しようとする姿勢を持とうとする教員は少ないのではないでしょうか。

 以上のことから、それらを技術と表現するなら、技術向上が伴いやすいのは「叱る」ほうなのかもしれませんね。

 「叱る」ことは「褒める」以上に効果的なモチベーション・マネジメントとなり、当然のことながら「褒める」以上にモチベーション・ブレイクにもなり得る諸刃の剣と言えます。「褒める」と「叱る」をセットで捉え、有機的に実践できるようになりたいものです。

 なお、本校においては自尊感情の低い生徒がほとんどなので、「褒める」割合が多くなるのは当然です。しかし理想を言えば、「叱る」という行為も活用して育む場面を作らなければ、卒業後、彼らがこの社会で生き抜くことは苦しくなるのではないでしょうか。入学年次から卒業年次までを見通したビジョンを持ち、生徒個々の発達段階を意識した教育活動を実践してみましょう。

 さらにおまけで経験則から。「褒める」だけの教員が生徒から本質的な信頼を勝ちえた例を思い返すのは難しいです。本気で「叱って褒めた」生徒ほど、卒業後も連絡をくれたり(酒席を共にしたり)、結婚式に呼んでくれたりします。「あのとき怒られたよねー」って笑顔で話していると、10年以上経って彼らから、「お前の教育活動は大きく外れてはいなかったよ」という答え合わせをしてもらっている気持ちになります。
 ちなみにそれは、私の重要なモチベーション・マネジメントのひとつでもあります。

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