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佐藤一斎「重職心得箇条」を読んで

背景

先週、社内の新任役職者研修に参加した。

研修内のグループ討議では、組織の規模や機能、構成員の多様性、市場の製品サイクルなど、異なる特徴を持つ組織のリーダー達と討議した。それぞれ特有の課題もあったが、同時にいくつか共通項もあるように感じた。それが何なのか、そんな思いで研修を終えた。

そんな中、ある歴史のPodcastで江戸末期の儒学者、佐藤一斎の「重職心得箇条」の話聞き、「これ、今読むタイミングだ!」と思い、さっそくAmazonで注文し、今しがた読み終えた。

江戸時代から令和まで引き継がれた本には、本質的で普遍的な内容がちりばめられており、目に見えるところに置いておかねばという気持ちで、noteに書き記します。


内容のまとめ

リーダーに必要なことの要点としては、以下の4点。

①大局的な視点を持ち、寛容さと大きな度量を兼ね備え、どっしりと構える。

②仕事ができなくとも、気に入らなくとも、部下を信用し、仕事を任せ、同僚間でバランスを取り、褒めるべきは褒め、指導すべきは指導し、気持ちよく能力が発揮できる環境を整える。

③課題の重要度と緊急度をよくわきまえ、自分の意見を持ちつつ、先例と比較したり、メンバーと情報共有をよく行い、人の意見によく耳を傾けながら、公平に判断をする。

④時代の流れに逆らわず、守るべきところは守る信念と、変えるべきところは変えてく柔軟さを持ち合わせる。


17箇条の私訳

1.どっしりと構える。

2.よく聞き、公平に判断する。どんな人もよく用いるべし。

3.守るべきものと変えるべきものを明確に。

4.自分の案を持ち、先例と比較し、判断をする。

5.チャンスを機敏に察知し、それに従う。

6.活眼で全体を見渡し、公平に。

7.よく人を観察する。

8.忙しいと口に出さない。部下を信用し、任せる。

9.刑賞与奪の権は、組織のものであり、リーダーは厳格に扱うべきである。

10.課題の重要度と緊急度を見誤ってはいけない。

11.寛大な心となんでも受け止める度量の大きさを持つ。

12.信念を持ち、時には柔軟に変容させる。

13.仕事の緩急を使い分け、上司・部下・同僚間のバランスを取る。

14. 極力仕事を簡素に保ち、手数を省くことが大切。

15.風儀は上から伝わる。手本となるような行動を心がける。

16.物事を隠す風儀は良くない。知られても問題ない情報は積極的に共有する。

17.新任の重職は組織にとって春という季節のようなもの。部下の心を一新し、前向きに楽しく仕事ができる環境や雰囲気を作らねばならない。

最後に

第一条の「重職たるもの、重を失い、軽々しくあるな」から、さっそく響きました。自分がどっしり構えることで、組織に安定感を生み出していく必要性を思いました。

(やや長文の)第二条から、どんなメンバーも信頼し、よく用いること。些細なことは口出しせず自主性を尊重すること。頭ではわかっても、なかなか難しい点だなと思いました。

まとめの①~④をよく読み返し、理想のリーダーに近づけるよう精進したいとです(特に①と②が難しくそして自身の課題だなと感じます)。

組織のリーダーの方、リーダーをこれから目指す方にお勧めしたい一冊です。

17箇条原文抜粋

佐藤一斎 重職心得箇条(17)

1.重職と申しは、家國の大事を取計べき職にして、此重の字を取失ひ、軽々しきはあしく候。
2.大臣の心得は、先づ諸有司の了簡を尽くさしめて、是を公平に裁決する所其職なるべし。又些少の過失に目つきて、人を容れ用る事ならねば、取るべき人は一人も無之様になるべし。平生嫌いな人を能く用ると云う事こそ手際なり、此工夫あるべし。
3.家々に祖先の方あり、取失ふべからず。又仕来仕癖の習あり、是は時に従て変易あるべし。
4.先格古例に二つあり、家法の例格あり、仕癖の例格あり、先づ今此事を処するに、斯様斯様あるべしと自案を付、時宜を考へて然る後例格を検し、今日に引合すべし。
5.応機と云う事あり肝要也。物事何によらず後の機は前に見ゆるもの也。其機の動きを察して、是に従うべし。
6.公平を失うては、善き事も行なわれず。
7.衆人の厭服する所を心掛べし、無利押付の事あるべからず。
8.重職たるもの、勤向繁多と云う口上は恥べき事なり。
9.刑賞与奪の権は、人主のものにして、大臣是を預るべきなり、倒に有司に授くべからず、斯の如き大事に至ては、厳敷透間あるべからず。
10.政事は大小軽重の弁を失うべからず。緩急先後の序を誤るべからず。
11.胸中を豁大寛広にすべし。僅少の事を大造に心得て、狭迫なる振舞あるべからず。
12.大臣たるもの胸中に定見ありて、見込みたる事を貫き通すべき元より也。
13.政事に抑揚の勢を取る事あり。有司上下に釣合を持事あり。能々弁うべし。
14.政事と云えば、拵え事繕い事をする様にのみなるなり。手数を省く事肝要なり。
15.風儀は上より起こるもの也。
16.物事を隠す風儀甚あしし。機事は密なるべけれども、打出して能き事迄もつつみ隠す時は却て、衆人に探る心を持たせる様になるもの也。
17.人君の初政は、年に春のある如きものなり。先人心を一新して、発揚歓欣の所を持たしむべし。刑賞に至ても明白なるべし。






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